第4話 少女の部屋での日常
お読みいただきありがとうございます!
今回はスライムくんの日常ほのぼの回です。
少女は依然として「ちょっと音がいいスライム」くらいの認識で、
スライムくんが“生き物”だとは露ほども思っていません。
一方スライムくんは、魔王軍ゆずりの勘違いと過剰反応で大忙し。
どうぞ気楽にお楽しみください!
ASMR収録の後、少女はふぅっと息を吐き、我を机に置いた。
「今日のスライム、ほんと音よかったなぁ……。
なんか、ぷるぷる動く気もしたけど……気のせいか」
気のせいではない。
我は魔王様の眷属であるからだ。
高い魔力を持つからだ。
謎の指技でぷにゅぷにゅされて震えただけであり――
「……まぁ、スライムに動かれたら困るよね」
少女は笑いながら言った。
「いや、普通に動いておるわ!!」
声は少女には届かない。
悲しい。
◆
「さて、スライムくん。このお皿に出しとくね」
少女は我を容器から“お皿”へ移した。
小皿。
魔王城にあった供物皿に似ている。
「供物か!? 我は魔王様に捧げられるのか!?」
ぷるぷる震える我を、少女は首をかしげて眺める。
「今日いっぱい触ったから、ちょっと柔らかくなっただけかな……?
品質は問題なさそう……よしよし」
少女は我の頭(?)を軽くつついた。
「つつくな! 我は偉大なスライム様だぞ!」
「……この弾力ほんとすごいなぁ〜。特価298円とは思えないね」
「値段を言うな!!」
少女は天然なのか、我の尊厳をピンポイントに刺してくる。
◆
部屋の隅にある巨大な黒いクマのぬいぐるみが目に入った。
丸い目。赤いリボン。
不気味な存在感。
「……む。あれは……魔王様の監視役……?」
ぬいぐるみは微動だにしない。
だが、我の中では魔王軍の密偵にしか見えなかった。
「この部屋……完全に包囲されている……!」
我が震えていると、少女はまた首をかしげる。
「スライムくん、なんか揺れてるように見える……けど……
スライムだし、そういうものだよね。うん」
そう言って納得するな。
我は命の危険を感じておるのだぞ。
◆
夕暮れの光が差し込む中、少女は机に戻りパソコンを開いた。
「今日の音……編集してみよっと。
スライムくん、めっちゃいい素材になりそう」
「素材とは何だ!?」
少女は我の抗議に気づくはずもなく、
優しい声で続けた。
「ね、スライムくん。これからも一緒に頑張ろうね」
その言葉は、魔王様の号令よりも――
少しだけあたたかく感じた。
「……ふ、ふん。我は別に、嬉しくなど……」
少女が我を見てにっこり微笑んだ瞬間、
我は思わず軽くぷるんと跳ねてしまった。
「……あれ? やっぱり動いてる……?
いや、気のせいだよね……スライムだもんね」
少女は再び自分を納得させ、編集作業に戻った。
「……危なかった……! 気づかれるところであった……!」
なぜ少女に正体を隠さねばならぬのか、
自分でも理解していない我であった。
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