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新連載!『異世界スライムくん、現代で“おもちゃ”として売られる』  作者: 深森あい


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3/6

第2話 量販店の棚にて

 箱の中で幾度も揺られ、やがて振動が止んだ。

 光が差し込み、段ボールは切り裂かれる。

 人間の手によって取り出された我は、次々と並べられていった。


 そこは、魔王城の牢獄でも、血に濡れた戦場でもない。

 ――眩しすぎるほどに明るい広間。

 壁には色鮮やかな紙や看板が貼られ、棚には人間の子どもたちのための玩具がずらりと並んでいた。


「よし、スライム新商品、並べておいて」

「値札シールも忘れるなよ。特価298円、在庫多めだから目立つように」


 店員らしき人間がそう告げる。

 我は、透明な器に閉じ込められたまま、棚の一角へと置かれた。


 左右を見やれば、色とりどりのスライムが我を取り囲んでいる。

 緑、赤、青、金色、ラメ入り……。

 だが、そのどれもからは生命の気配がない。

 ただ化学的な匂いを放ち、粘りを見せるだけの“偽物”ども。


「……我だけが、本物……か」


 胸の奥に妙な誇りと、どうしようもない孤独が芽生える。

 そしてすぐさま、子どもたちの甲高い声が耳に飛び込んできた。


「わぁー! スライムだ! 新しいの出てる!」

「こっちのキラキラのがいいー!」

「えー、298円だって! ママ、買ってー!」


 小さな手が次々と我らを掴み、振り回し、籠へと放り込んでいく。

 笑い声。駆け足の音。

 その光景を、我はただ見ているしかなかった。


「……これが、人間界の姿か」


 戦場で剣を振るうでもなく、恐怖に怯えるでもなく。

 彼らはただ笑い、遊び、消費する。

 魔王様が望まれた“滅ぼすべき存在”としての人間は、今や我の前で無邪気に声を上げていた。


 そして、その中に――我を手に取る者が現れる。


「これ、音がいいかも」


 落ち着いた声の少女。

 彼の目は他の子供のように輝いてはいなかった。

 代わりに、妙に冷静な光と、機材の入ったバッグを背負うその姿。


 我は知らぬ。

 だが、この人間こそが、我を“おもちゃ”以上の存在へと導く者――。

 ASMR配信者であった。



---

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

スライムくんは無事(?)に量販店で売られました。

第3話もぜひ続けてお楽しみください!

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