ミデン編 第二十七話 ミデンの涙
リュカの肩から血が止まらず、意識は遠のいていた。
「……リュカ!」
ミデンは短剣を収め、彼の体を支えた。
「ヌルさん……ヌルさん……どうか、助けてください!」
その声は、夜に響いた。
ミデンは何度も呼び続けた。
「ヌルさん! ヌルさん! 僕は守るために振るうと誓った。でも、今は守れない……!」
エルドは涙を流し、剣を握りしめた。
「……血が止まらない!」
リシアは魔術書を抱え、必死に詠唱を繰り返した。
「炎よ、癒しの光となれ……!」
だが、光は弱く、傷を塞ぐことはできなかった。
カイルは布を押さえ続け、声を張り上げた。
「……立ち続けろ、リュカ!」
セリアは涙を流し、祈るように言った。
「……お願い、戻ってきて!」
その時――。
空気が揺れ、光が集まった。
森の影が消え、柔らかな輝きが広がった。
「……これは?」
エルドが息を呑んだ。
光の中から、小さな影が現れた。
白い毛並み、丸い瞳、ふわふわの耳。
それは、ラビちゃんだった。
「……ウサギ?」
ミデンは息を呑んだ。
ラビちゃんはふわりと跳ね、リュカの傍に寄った。
その瞳は優しく輝き、口から柔らかな声が響いた。
「……守るために振るう。それが、あなたたちの誓いですね。主の名前を呼び続けられたせいで出てきちゃいました。ならば、癒しの光を」
ラビちゃんの体から、柔らかな光が広がった。
その光は温かく、優しく、森を包み込んだ。
リュカの肩に触れると、血が止まり、傷が塞がっていった。
「……光が……!」
リシアの声は震えていた。
「……傷が……塞がっていく!」
カイルは息を呑んだ。
セリアは涙を流し、祈るように言った。
「……ありがとう!」
リュカの呼吸は次第に整い、瞳が開いた。
「……ここは……?」
彼の声は弱々しかったが、確かに響いた。
「……リュカ!」
ミデンは涙を流し、彼の手を握った。
「……よかった……!」
エルドは剣を握りしめ、胸に誓いを刻んだ。
「……僕は、弱い。でも、仲間と共に立ち続けることで強さを示せる」
リシアは魔術書を抱え、静かに言った。
「……炎は仲間を守るためにある。でも、癒しの光は奇跡をもたらす」
カイルは槍を背負い、力強く言った。
「……槍は仲間を支えるためにある。そして、奇跡は仲間を救う」
セリアは弓を背に、静かに頷いた。
「……矢は仲間を支えるためにある。そして、光は仲間を癒す」
ラビちゃんはふわりと跳ね、柔らかな声を響かせた。
「……守るために振るう。それが、あなたたちの誇りですね。ならば、忘れないでください。仲間と共に立ち続けることが、真の強さです」
その言葉は、とともにラビちゃんは消えた。
ミデンは短剣を握りしめ、胸に誓いを刻んだ。
「……守るために振るう。それが、僕たちの誇りだ。そして、仲間の絆でもある」
リュカは肩を押さえながらも立ち上がった。
「……俺は、一人で強くなると誓った。でも、仲間と共に立ち続けることで強さを示せる」
夜風が吹き、月明かりが揺れた。
六人は森を後にし、石畳を踏みしめながら空を見上げた。
「……守るために振るう。それが、僕たちの剣だ。そして、仲間の誇りでもある」
胸の奥に、誓いが宿った。
ラビちゃんの癒しの光は、柔らかかった。




