表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血姫Nullが人間に堕ちるまで 〜第二部制作中〜  作者: 早乙女姫織


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/42

ミデン編 第十五話  鋼の門、名を刻む者たち

少し長いです。

王都騎士団の広場は、朝からざわめいていた。

任務を終えた新人騎士たちが集められ、教官の声が響いた。


「今日、数々の任務で活躍した者たちを表彰する」


その言葉に、広場は静まり返った。

仲間たちは息を呑み、視線を交わした。


最初に呼ばれたのは、エルドだった。


「村を一人で守り抜き、魔物を討伐した。弱さを知り、立ち続けた者こそ真の騎士だ」


教官の声に、広場は歓声に包まれた。

かつて馬鹿にされていた彼が、今は誇りを示していた。


次に呼ばれたのは、魔術師の少女リシアだった。


「森での任務において、仲間を炎の壁で守り抜いた。詠唱の速さと冷静さは、隊を救った」


彼女は顔を赤らめながら勲章を受け取った。


王都から北へ半日の距離にある森は、古くから魔物の影が潜む場所として知られていた。

村人たちは夜ごとに怯え、家畜を失い、森へ近づくことを恐れていた。

騎士団は新人たちを派遣し、森の調査と討伐を命じた。

その隊に加わったのが、魔術師の少女リシアだった。

彼女は小柄で、魔術書を抱えながら歩いていた。仲間たちは剣や槍を構え、森の奥へと進んでいった。


「……リシア、大丈夫か?」


仲間の一人が声を掛けた。

彼女は小さく頷いた。


「詠唱は遅いかもしれない。でも、必ず守る」


森の奥は暗く、木々が影を落としていた。

風が枝を揺らすたびに、不気味な音が響いた。

やがて、茂みが揺れた。

灰色の毛皮を持つ獣が姿を現した。赤い目、鋭い牙。数は三匹。

仲間たちは剣を構えた。


「来るぞ!」


獣が唸り声を上げ、跳躍した。

仲間たちは必死に受け止めたが、数が多く、押し込まれていた。


その瞬間、リシアが前に出た。

魔術書を開き、詠唱を始めた。


「炎よ、我が声に応え、壁となれ!」


言葉が響き、空気が震えた。

炎が広がり、仲間の前に壁を作った。

獣が牙を剥き、炎に触れた瞬間、吠え声を上げて後退した。


「……炎の壁だ!」


仲間たちは息を呑んだ。

リシアは、呼吸を整えながら続けた。


「恐怖を忘れず、守るために振るう。それが、魔術だ」


獣が再び跳躍した。

だが、炎の壁が立ちはだかり、牙は届かなかった。

仲間たちは、その隙に剣を振り、獣を討った。

戦いは続いた。

炎の壁が揺れ、リシアの呼吸は荒くなった。

だが、彼女は止めなかった。


「……守るために振るう。それが、私の魔術だ」


最後の獣が吠え、炎に触れた瞬間、剣が届いた。

仲間たちが斬り伏せ、森に静寂が戻った。

村に戻ると、村人たちが歓声を上げた。


「ありがとう! 森から守ってくれて!」


その声に、リシアは顔を赤らめた。


「……私の魔術は、守るためにある」


その言葉に、広場は歓声に包まれた。

仲間たちは、彼女の勇気を称えた。

かつて「詠唱が遅い」と笑われていた少女が、今は誇りを示していた。


夕暮れ。

広場を後にしたリシアは、石畳を踏みしめながら空を見上げた。

茜色の空の向こうに、仲間の姿を思い描いた。


「……守るために振るう。それが、私の魔術だ。そして、仲間の誇りでもある」


胸の奥に、誓いが宿った。

炎の壁は、彼女の歩みを支える力となった。

仲間たちは、彼女の勇気を称えた。


槍を持つ青年カイルも呼ばれた。


「街道での護衛任務において、盗賊の襲撃を防ぎ、商人を守った。槍の一突きは、仲間を救った」


王都から南へ伸びる街道は、商人たちの命綱だった。

だが近頃、盗賊の襲撃が相次ぎ、荷車を狙う者たちが夜ごと現れていた。騎士団は新人たちに護衛任務を命じ、その隊にカイルが加わった。

槍を握る彼は、仲間の中でも力強さを誇っていた。だが、まだ若く、経験は浅い。


「……商人を守る。それが、僕の槍だ」


彼は胸に誓いを刻み、街道を進んだ。

昼の街道は穏やかだった。荷車の車輪が軋み、商人たちの声が響いた。


「王都まで無事に届けたいんだ。頼むぞ、騎士団」


その声に、カイルは頷いた。


「必ず守ります」


だが、夕暮れが近づくと、空気が変わった。

森の影が伸び、風が枝を揺らすたびに不気味な音が響いた。


「……来るぞ」


カイルは槍を構えた。

茂みが揺れ、盗賊たちが姿を現した。

剣や棍棒を構え、荷車を狙っていた。


「荷を置いていけ!」


その声に、商人たちは怯えた。

カイルは、深く息を吸った。


「……守るために振るう。それが、僕の槍だ」


盗賊が跳躍し、荷車へ迫った。

カイルは踏み込み、槍を突き出した。

刃が光を帯び、盗賊の剣を弾いた。

衝撃が走り、盗賊が後退する。


「……重い!」


だが、彼は倒れなかった。

呼吸に合わせて槍を振り、盗賊を押し返した。

仲間たちが剣を構え、盗賊と戦った。

だが、数は多く、押し込まれていた。

その瞬間、カイルが前に出た。

槍を振り、盗賊の刃を弾き、仲間を守った。


「……僕は、守るために振るう!」


その声は、街道に響いた。

戦いは続いた。

盗賊の棍棒が迫り、衝撃が走る。

だが、カイルは呼吸に合わせて槍を振り、恐怖を忘れずに立ち続けた。

刃が光を散らし、盗賊の肩を裂いた。

血が飛び散り、盗賊が後退する。

商人たちは息を呑んだ。


「……あの騎士が?」

「一人で、盗賊を押し返している……」


最後の盗賊が吠え、荷車へ迫った。

その瞬間、カイルは踏み込み、槍を突き出した。

刃が光を帯び、盗賊の胸に届いた。

男が崩れ、地面に倒れた。

静寂が戻った。


商人たちは歓声を上げた。


「ありがとう! 荷を守ってくれて!」


その声に、カイルは顔を赤らめた。


「……僕は、守るために振るっただけだ」


翌日。

王都に戻ったカイルは、騎士団の広場に立っていた。

教官が声を張り上げた。


「街道での護衛任務において、盗賊の襲撃を防ぎ、商人を守った。槍の一突きは、仲間を救った。カイル、よくやった!」


その言葉に、広場は歓声に包まれた。

仲間たちは、彼の力強さを認めた。

かつて「若いだけ」と笑われていた青年が、今は誇りを示していた。


夕暮れ。

広場を後にしたカイルは、石畳を踏みしめながら空を見上げた。

茜色の空の向こうに、仲間の姿を思い描いた。


「……守るために振るう。それが、僕の槍だ。そして、商人の誇りでもある」


胸の奥に、誓いが宿った。

街道の槍は、彼の歩みを支える力となった。

彼は誇らしげに槍を掲げた。

仲間たちは、彼の力強さを認めた。


さらに、弓を持つ少女セリアが呼ばれた。


「山岳での任務において、遠距離から魔物を射抜き、隊を支えた。冷静な狙いは、仲間を救った」


彼女は静かに頷き、弓を収めた。

王都から西へと続く山岳地帯は、険しい岩肌と深い谷が連なる場所だった。

近頃、その山道に魔物が現れ、旅人や商人を襲っているとの報告が相次いでいた。

騎士団は新人たちを派遣し、討伐任務を命じた。

その隊に加わったのが、弓を持つ少女セリアだった。

彼女は背に長弓を背負い、矢筒を抱えていた。仲間たちは剣や槍を構え、険しい山道を進んでいった。


「……セリア、矢は足りるか?」


仲間の一人が声を掛けた。

彼女は静かに頷いた。


「狙いを外さなければ、十分です」


山道は狭く、岩が影を落としていた。

風が谷を渡り、冷たい音を響かせた。

やがて、岩陰から魔物が姿を現した。

黒い毛皮、鋭い爪、赤い目。数は四匹。

仲間たちは剣を構えた。


「来るぞ!」


魔物が唸り声を上げ、跳躍した。

剣と槍が受け止めたが、数が多く、押し込まれていた。

その瞬間、セリアが弓を構えた。

呼吸を整え、狙いを定めた。


「……恐怖を忘れず、守るために放つ」


矢が放たれ、空を裂いた。

一本目は魔物の肩を貫き、動きを止めた。

仲間が剣を振り、獣を斬り伏せた。


二匹目が跳躍した。

セリアは、冷静に狙いを定めた。

矢が放たれ、獣の脚を貫いた。

衝撃が走り、獣が倒れた。

仲間が槍を突き、討ち取った。


三匹目が唸り声を上げ、仲間へ迫った。

セリアは、深く息を吸った。

矢が放たれ、獣の胸を貫いた。

血が飛び散り、獣が崩れた。

最後の一匹が吠え、谷へ逃げようとした。

セリアは、呼吸を整え、狙いを定めた。

矢が放たれ、獣の首筋に届いた。

獣が崩れ、地面に倒れた。


静寂が戻った。

仲間たちは息を呑んだ。


「……セリアの矢がなければ、押し込まれていた」

「冷静な狙いが、隊を救った」


彼女は弓を収め、静かに頷いた。


「……守るために放つ。それが、私の矢です」


村に戻ると、村人たちが歓声を上げた。


「ありがとう! 山道を守ってくれて!」


その声に、セリアは顔を赤らめた。


「……私の矢は、仲間と民を守るためにある」


翌日。

王都の広場で、教官が声を張り上げた。

「山岳での任務において、遠距離から魔物を射抜き、隊を支えた。冷静な狙いは、仲間を救った。セリア、よくやった!」

その言葉に、広場は歓声に包まれた。

仲間たちは、彼女の正確さを称えた。


かつて「弓は役に立たない」と笑われていた少女が、今は誇りを示していた。

仲間たちは、彼女の正確さを称えた。


最後に、ミデンの名が呼ばれた。


「討伐試験以来、剣に魔力を通す異端の技を示した。だが、その技は仲間を守り、民を救った。恐怖を忘れず、呼吸に合わせて立ち続けた」


その言葉に、広場はざわめいた。

異端視されていた彼が、今は認められていた。


王都から北へ続く森は、古くから魔物の巣窟として知られていた。


近頃、その森で魔物の群れが異常に増えているとの報告が相次いでいた。

騎士団は警戒を強めていたが、誰も「スタンピード」という言葉を口にすることはなかった。

大量の魔物が一斉に村や街へ押し寄せる災厄――それは想像するだけで恐ろしいものだった。


その夜、ミデンは一人で森へ向かっていた。

仲間から距離を置かれ、異端視される彼は、孤独の中で剣を振るうことを選んだ。


「……守るために振るう。それが、僕の剣だ」


短剣を握りしめ、森の奥へと進んだ。

森は静かだった。だが、その静けさは不気味だった。


茂みが揺れ、灰色の毛皮を持つ獣が姿を現した。

赤い目、鋭い牙。数は一匹ではなかった。

十匹、二十匹――群れを成していた。

ミデンは息を呑んだ。


「……このままでは、村へ押し寄せる」


それは、スタンピードの兆しだった。


彼は短剣を構え、呼吸を整えた。


「恐怖を忘れるな。呼吸に合わせろ」


ヌルの声が記憶の中で響いた。

獣が唸り声を上げ、跳躍した。

ミデンは踏み込み、刃を振った。

光が散り、獣の肩を裂いた。

衝撃が走り、獣が倒れた。


だが、群れは止まらなかった。

次々と獣が襲いかかり、牙が迫った。

ミデンは呼吸に合わせて刃を振り、恐怖を忘れずに立ち続けた。

汗が滴り、呼吸が荒くなっても、止めなかった。


「……守るために振るう。それが、僕の剣だ」


夜が更け、戦いは続いた。

獣の群れは次第に減り、森に静寂が戻り始めた。

ミデンは、膝を震わせながらも立ち続けた。


「……倒した。これで、村へ押し寄せることはない」


彼の孤独な戦いが、スタンピードを抑えたのだった。


翌朝。

村人たちは、森から魔物が押し寄せなかったことに驚いていた。


「……どうしてだ?」

「スタンピードが起きなかった……」


騎士団も調査に向かった。

森には、倒れた魔物の群れが残されていた。

その中心に、短剣の跡が刻まれていた。

教官は息を呑んだ。


「……一人で、これだけの魔物を討伐したのか?」


仲間たちは目を見開いた。


「……ミデンが?」

「異端だと思っていたのに……」


囁きが広がり、視線が変わった。

恐れと驚きが混じり、彼の存在を認め始めていた。

表彰が終わり、広場は歓声に包まれた。


仲間たちは互いに笑みを交わし、誇りを示していた。


弱さを知る者、魔術を操る者、槍を振るう者、弓を放つ者――それぞれが活躍し、認められた。


夕暮れ。

広場を後にしたミデンは、石畳を踏みしめながら空を見上げた。

茜色の空の向こうに、ヌルの背中を思い描いた。


「……守るために振るう。それが、僕の剣だ。そして、仲間の誇りでもある」


胸の奥に、誓いが宿った。

仲間たちの活躍と表彰は、彼の歩みを支える力となった。

☆、ブクマ励みになります。読んでくださりありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ