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吸血姫Nullが人間に堕ちるまで 〜第二部制作中〜  作者: 早乙女姫織


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ミデン編 第十四話 鐘の音

昼の訓練場は熱気に包まれていた。

新人騎士たちが剣を振り、声を張り上げていた。

だが、その輪の外で、ミデンとエルドは稽古を続けていた。


「呼吸に合わせろ。恐怖を忘れるな」


ミデンは短剣を構え、エルドに声を掛けた。

エルドは必死に剣を振り、何度も倒れ、何度も立ち上がった。


「……僕は、弱い。でも、立ち続ける!」


その声は、訓練場に響いた。

だが、周囲の視線は冷たかった。


「……見ろよ。あいつ、エルドを痛めつけてる」

「弱い奴を相手にして、楽しんでるんじゃないか?」

「剣に魔力を通す異端だ。何をしてもおかしくない」


囁きが広がり、距離が生まれた。

ミデンは、拳を握りしめた。


「……違う。僕は、守るために振るっている」


模擬戦が始まった。

教官の声が響いた。


「二人一組で戦え!」


ミデンとエルドは組になった。

短剣と剣がぶつかり、衝撃が走った。

エルドは必死に受け止め、呼吸に合わせて踏み込んだ。

だが、周囲の目には「弱い者を痛めつけている」ように映った。


「……やっぱり、いじめてるんだ」

「弱い奴を相手にして、力を誇ってる」


訓練が終わり、囁きは広がった。


「ミデンがエルドをいじめている」

「弱い者を痛めつける異端だ」


その言葉は、彼の胸に突き刺さった。

孤独の影が広がり、距離が深まった。


夕暮れ。

訓練場を後にしたミデンは、石畳を踏みしめながら空を見上げた。

茜色の空の向こうに、ヌルの背中を思い描いた。


「……守るために振るう。それが、僕の剣だ。いじめなんかじゃない」


胸の奥に、誓いが宿った。

だが、周囲の視線は冷たかった。


夜。

宿舎の部屋で、蝋燭の灯りが揺れていた。

エルドが訪ねてきた。


「……ミデン。みんなが、君が僕をいじめてるって言ってる」


その言葉に、ミデンは息を呑んだ。


「……僕は、稽古をつけていただけだ」


「分かってる。僕は、君に守られてる。稽古のおかげで立ち続けられるようになった」


その声は、静かに夜に響いた。

だが、周囲の誤解は消えなかった。


「……異端だ。危うい」


「弱い者を痛めつける奴だ」


囁きが広がり、距離が深まった。


ミデンは、拳を握りしめた。


「……守るために振るう。それが、僕の剣だ。誤解されても、立ち続ける」


星が瞬く夜空の下で、彼は短剣を構えた。

呼吸に合わせて刃を振り、恐怖を忘れずに立ち続けた。

孤独の中で、誓いを深めた。


「……ヌルさん。あなたの技を、僕が証明します」


その言葉は、静かに夜に響いた。

王都騎士団の朝は、いつも訓練場の声で始まる。


だが、その日、教官が告げた任務は特別だった。


「村の近郊に魔物が出没している。今回は一人での任務だ。エルド、お前に任せる」


その言葉に、訓練場はざわめいた。


「……エルドが一人で?」

「弱いと馬鹿にされていた奴が?」


囁きが広がった。だが、エルドは静かに頷いた。


「……やります」


その声は、かつての震えを失っていた。


村に着くと、空気が変わった。

家々は静まり返り、村人たちは怯えた目で彼を見ていた。


「夜になると家畜が襲われるんだ。頼む、守ってくれ」


村長の声は震えていた。

エルドは、剣を握りしめた。


「……守るために振るう。それが、僕の剣だ」


夜。

森から唸り声が響いた。

灰色の毛皮を持つ獣が姿を現した。赤い目、鋭い牙。

村人たちが悲鳴を上げた。

エルドは、深く息を吸った。


「呼吸に合わせろ。恐怖を忘れるな」


ミデンから学んだ言葉が胸に響いた。

剣を構え、踏み込んだ。

刃が空を裂き、魔物の牙を受け止めた。衝撃が走り、膝が沈んだ。


「……重い!」


だが、彼は倒れなかった。


呼吸に合わせて剣を振り、魔物を押し返した。

魔物が吠え、再び跳躍した。

エルドは、恐怖を忘れずに立ち続けた。


「……僕は、弱い。でも、立ち続ける!」


その声は、森に響いた。

剣が光を帯び、魔物の肩を裂いた。血が飛び散り、獣が後退する。


村人たちは息を呑んだ。


「……あのエルドが?」

「一人で、魔物を押し返している……」


戦いは続いた。

魔物の牙が迫り、衝撃が走る。


だが、エルドは呼吸に合わせて剣を振り、恐怖を忘れずに立ち続けた。

刃が光を散らし、魔物の首筋に届いた。

獣が崩れ、地面に倒れた。

静寂が戻った。


村人たちは歓声を上げた。


「ありがとう! 家畜を守ってくれて!」


その声に、エルドは顔を赤らめた。


「……僕は、弱い。でも、守るために立ち続けた」


翌日。

王都に戻ったエルドは、騎士団の広場に立っていた。

教官が声を張り上げた。


「村を一人で守り抜いた。魔物を討伐し、民を救った。エルド、よくやった!」


その言葉に、広場は静まり返った。

仲間たちは、目を見開いた。


「……あのエルドが?」


「弱いと馬鹿にされていたのに……」


だが、今は誰も笑わなかった。

彼の姿は、誇りを示していた。

表彰の場が設けられた。

騎士団長が歩み寄り、勲章を手渡した。


「弱さを知り、立ち続けた者こそ、真の騎士だ。エルド、お前はそれを証明した」


その言葉に、エルドの胸に熱が広がった。


「……ありがとうございます。僕は、弱い。でも、守るために振るいます」


仲間たちは、彼を見つめていた。

かつて馬鹿にしていた者も、今は尊敬の眼差しを向けていた。


夕暮れ。

広場を後にしたエルドは、石畳を踏みしめながら空を見上げた。

茜色の空の向こうに、ミデンの姿を思い描いた。


「……稽古のおかげで、立ち続けられた。ありがとう、ミデン」


胸の奥に、誓いが宿った。


「守るために振るう。それが、僕の剣だ。そして、仲間の誇りでもある」


星が瞬く夜空の下で、彼は剣を収めた。

その歩みは、弱さを超えた者の誇りを示していた。

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