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吸血姫Nullが人間に堕ちるまで 〜第二部制作中〜  作者: 早乙女姫織


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ミデン編 第四話   初めての試験

王都騎士団の試験会場は、朝からざわめいていた。

石造りの広間に並べられた机。

志願者たちが一斉に座り、筆記試験の紙を前にしていた。

ミデンは、短剣を腰に差したまま、机に座っていた。

剣を振るうことなら慣れている。

だが、紙に向かうのは、慣れていなかった。


問題は、魔物の生態、王都の歴史、戦術の基礎。

文字が並び、彼の目を圧迫した。


「……こんなに、知らないことがあるのか」


彼は必死に書き込んだ。

だが、時間は過ぎていく。

周囲の志願者たちは、迷いなく筆を走らせていた。

彼の紙には、空白が目立った。

試験が終わり、結果が告げられた。


「……筆記不合格。実技試験には進めません」


その言葉は、刃のように胸に突き刺さった。

彼は、机の上で拳を握りしめた。


「……剣を振るうことしか、してこなかったから」


周囲の志願者たちは、次の試験へ進んでいった。

剣を構え、魔力を纏い、実技試験の場へ。

彼は、その門の前に立ち尽くしていた。

門は閉ざされ、彼の足は止まった。


夕暮れ。

宿の裏庭に戻ったミデンは、短剣を抜いた。

「……筆記で落ちた。実技までいけなかった」

斬撃。

刃が空を裂く。

魔力が震える。

彼は、何度も振った。

「でも、剣を振るうことなら、僕はできる」

汗が滴り、呼吸が荒くなっても、止めなかった。

ヌルの声が、記憶の中で響いた。


『呼吸に合わせろ』

『怖さを忘れるな』


その声に支えられながら、彼は刃を振り続けた。


夜。

蝋燭の灯りが揺れる部屋で、ミデンは机に向かっていた。

紙に、誓いを書き留める。


『筆記で落ちても、剣を振るう。

誰にも頼らず、強くなる。』


その言葉を、何度も書き直した。

文字が滲み、紙が擦り切れても、止めなかった。


「……強くなれば、また会える」

その言葉を胸に刻み、彼は短剣を収めた。


翌朝。

王都の街を歩くと、試験に合格した者たちの声が耳に入った。

「実技は厳しかったけど、なんとか通った」

「次は討伐任務だ」


彼らの声は、誇りに満ちていた。

ミデンは、拳を握った。

「……僕は、まだそこに立てない」


だが、その悔しさが、彼を支えていた。

「誰にも頼らず、強くなる」


昼。

裏庭に立つ。

短剣を構え、斬撃を繰り返す。

呼吸に合わせ、腰を沈め、魔力を刃に通す。

その動作は、昨日よりも少しだけ滑らかになっていた。


「……これが、僕の道だ」

彼は、刃を振り続けた。

汗が滴り、呼吸が荒くなっても、止めなかった。

夕暮れ。

ミデンは、石畳に座り込んでいた。

呼吸は荒く、腕は痺れていた。

だが、短剣を握る手は離さなかった。


「……誰にも頼らぬ誓い」

その言葉は、孤独の中で生まれた誓いだった。

ヌルの背中を追うために。

彼女が残した足音を、自分の剣に刻むために。


夜。

星が瞬いていた。

ミデンは、窓の外を見つめていた。

「……ヌルさんに誇れる自分になる」


王都の騎士団試験に落ちた翌日。

ミデンは、宿の机に向かっていた。

短剣ではなく、紙と筆を前にして。

剣を振るうことなら慣れている。だが、文字を追うことは、彼にとって未知の戦いだった。

「……これが、僕の弱さだ」

紙には、魔物の生態や王都の歴史、戦術の基礎が書かれていた。


昨日の試験で、彼はほとんど答えられなかった。

剣を振るうだけでは、騎士団には入れない。

知識もまた、力の一部だった。

彼は、魔物の図を描き始めた。

牙の形、爪の長さ、目の色。

それらを紙に写し取り、特徴を書き込む。

「灰色の毛皮、赤い目。跳躍力が高い。……昨日、森で戦った魔物だ」

記憶を呼び起こし、紙に刻む。


それは、剣を振るうのとは違う感覚だった。

だが、確かに自分の中にある経験を形にする作業だった。


次に、王都の地図を広げた。

街の区画、城壁の位置、門の名前。

「北門、南門、西門……。試験で問われたのは、王都の防衛線」

彼は、地図に線を引きながら覚えた。

剣を振るうときのように、繰り返すことで体に刻み込む。

「……知識も、稽古と同じだ。繰り返せば、刻まれる」


夜。

蝋燭の灯りが揺れる中、彼は紙に向かっていた。

文字を追い、声に出して読んだ。

「魔物は群れを作ることがある。……討伐には連携が必要」

その言葉は、彼の胸に響いた。

ヌルと共に戦った記憶が蘇る。

彼女の背中を追いながら、剣を振った日々。

「……一人では届かない。けれど、知識があれば、少しは近づける」


朝。

裏庭に立ったミデンは、短剣を構えた。

剣を振るう前に、紙を思い出す。

魔物の特徴、王都の防衛線、戦術の基礎。

それらを頭に描きながら、斬撃を繰り返した。

「……知識と剣、両方が必要だ」

刃が空を裂く。

魔力が震える。

彼は、何度も振った。

汗が滴り、呼吸が荒くなっても、止めなかった。


昼。

宿の部屋で、再び紙に向かう。

「……筆記で落ちても、諦めない」

彼は、文字を追い続けた。

剣を振るうように、繰り返し、繰り返し。

その動作は、昨日よりも少しだけ滑らかになっていた。


夜。

星が瞬いていた。

ミデンは、窓の外を見つめていた。

「……知識も、強さの一部だ」

その言葉を胸に刻み、彼は紙を閉じた。

そして、短剣を収めた。

☆、ブクマよろしくお願いします。読んでくださりありがとうございました。

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