閑話 石像たちのお留守番
ヌルの城の中庭。
朝の光が差し込むと、石像の動物たちが目を覚ます。
ぴよちゃんは、噴水の縁にちょこんと立ち、羽をふるわせた。
にゃん太郎は、石畳の上で背伸びをしながらあくびをひとつ。
ラビちゃんは、花壇の隅で耳をぴくりと動かした。
「今日も、主は帰ってこないぴよ」
ぴよちゃんが、空を見上げながら言った。
「まあ、そういう日が続いてるにゃ」
にゃん太郎は、しっぽをゆらしながら答える。
「でも、帰ってきたときに、ちゃんと“いつもの場所”があるようにしておきたいよね」
ラビちゃんは、花の間を跳ねながら言った。
ぴよちゃんは、塔のてっぺんまで飛んでいって、風の匂いを確かめる。
「魔力の揺れは、まだ遠いぴよ。主は、まだ旅の途中ぴよ」
にゃん太郎は、書斎の窓辺で本の埃を払う。
「主が読んでた魔具の設計図、ちょっとだけ開いてみたにゃ。……わからんにゃ」
ラビちゃんは、中庭の水路を掃除する。
「苔が増えてるけど、主が帰ってきたらきっと“よくやった”って言ってくれると思う」
彼らは、誰に命じられたわけでもなく、ただ“ヌルの居場所”を守るために動いていた。
日が傾き、空が茜色に染まるころ。
三体は、噴水のまわりに集まっていた。
「主は、剣を鍛えるのが楽しかったって言ってたぴよ」
ぴよちゃんが、ぽつりと呟く。
「それって、誰かと一緒だったからじゃないかにゃ」
にゃん太郎が、しっぽを丸めながら言う。
「うん。きっと、誰かと剣を交わして、心が少しだけ揺れたんだと思う」
ラビちゃんは、耳を伏せながら言った。
「次は、海に行くって言ってたぴよ」
「海って、広いのかにゃ?」
「きっと、風がいっぱい吹いてて、主の魔力がよく響く場所なんだと思う」
夜が訪れると、石像たちはそれぞれの場所に戻っていく。
ぴよちゃんは塔の上。
にゃん太郎は書斎の窓辺。
ラビちゃんは中庭の花壇。
「主が帰ってきたら、きっと“ただいま”って言うぴよ」
「そのときは、何も言わずに、隣に座るにゃ」
「そして、また一緒にお留守番しようね」
風が、静かに吹き抜ける。
それは、遠くの魔力の気配を運んでくるようだった。
第二部製作中です。第二部の投稿は未定です。ブックマークして更新されるのを待っていただけたら幸いです。




