タクシー
今日もまた同じことの繰り返し。
始まったと思ったら終わる、1日、1週間、1ヶ月、1年。
何度繰り返せば抜け出せるのか。抜け出したいと思っているのかも分からない。
覚えている限り、中、高、大と、同じようなことを思っていた。働き出しても結局同じだった。
今日、ただ1つ違うこと。いつも通りの日が終わろうとしている時、私はこの街を出ていく。
人気の少ない場所で拾ったタクシーの運転手は、ずっと無口だった。タクシーの窓からは星が見えた。それに気づいたのか、運転手は何も言わず窓を少し開けた。生ぬるい夏の風が入ってくる。
その瞬間、ただのタクシーが新しい街へ連れていってくれる魔法の絨毯のように思えた。誰でも乗れるわけではない絨毯に私はきっと選ばれたんだ。
夜に生きる人の人生が進んでいる時間、わたしは新しい街へと降り立った。
「またのご利用をお待ちしております。」
次このタクシーに出会うときは、この街を出るときだと感じた。
ここには昼を淘汰出来るほどの不思議な夜が溢れている。