(7)子どもたち救出作戦が失敗に
「ワシントンに派遣していた特殊部隊と連絡がつながっています」
補佐官の女性が事務的な口調でトランプに告げた。
ワシントンと聞いてイヴァンカの背筋に緊張が走った。
アメリカ最大の悪魔崇拝儀式の拠点であり、可哀想なこどもたちが大量に監禁されている場所だと聞いていたからだ。
無事救出できたのだろうか?
イヴァンカは、祈るような気持ちでこう言った。
「早くつないでちょうだい。結果を聞きたいわ」
シチュエーションルームの大画面に特殊部隊の隊長が映し出された。
「突入したら、もぬけのカラでした。どういうことでしょうか? 敵も警戒するようになって、たしかな情報がなかなか入らなくなりました。これで、今月にはいって、もう、3回目です。ムダ足ばかりを踏んでいます」
胸のなかに怒りを隠しながら冷静に話す隊長が、急に顔色を変えて振り向いた。
そのとき、突然、強大な爆発音が炸裂した。
その轟音とともに、隊長との交信が途絶えた。
「どうした? 何があった?」
フリン将軍が大画面に向かって叫ぶのだが、隊長から返答はなかった。
「これは、どういうことだ?」
トランプが鎮痛な表情で静かに言った。
「わかりません」
フリン将軍がトランプにそう答え、そばにいる補佐官に「早く、状況を調べて報告しろ」と言った。
「はい!」
足ばやに補佐官が部屋を出て行った。
「詳細な情報は銀河連合でも掌握できていないってことでしょ? 情報がないんじゃ、動きようがありませんね。でも、何か、方法はあるはずよ。決して、決して、あきらめてはいけません」
とイヴァンカは、父親の口マネをして言った。
トランプが口癖のように言う言葉が「決して、決して、あきらめるな」だった。
「そうだ。決して、あきらめてはいけないのだ」
とトランプは言って、目を閉じた。
あきらめるなと言っても、どうしていいのか、うつ手が見つからない状況では、単なる気休めの言葉にしか聞こえないなと思って、イヴァンカは映像の消えた大モニターを睨んだ。