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(4)宇宙人との戦略会議

闇の帝王が亡くなったあと、その娘が世界覇権へ意欲を燃やしていた。

一方で、アメリカでは、やっかいな問題が急浮上していた。

トランプは地下軍事基地で指揮をとっていた。


※4話から視点が、トランプの娘イヴァンカになります。



コロラド州シャイア山の地下軍事基地。

約1600メートルもの地下に建設された巨大施設であり、スポーツ場や娯楽施設、病院、レストランなども完備していて、千人近い人々が暮らす、まるで地底都市のような場所だった。


「アメリカ本土が核攻撃にさらされる危険性がありますから、ぜひ、こちらに避難してください」

とマイケル・フリン将軍に説得され、トランプは渋々承諾したのである。


トランプの娘イヴァンカは、そうした事情をすべて教えてもらっていた。

パパは自分を後継者に育てようと考えているようだった。

最初は抵抗していたのだが、あの事件以来、使命に生きる人生こそが幸せの道だと考えるようになった。あの事件とは・・・。


「アメリカの悪魔崇拝組織はどうなった?」

 シチュエーションルームに集まった幹部たちを睨め回したあと、フリン将軍に向かってトランプが言った。


「潰しても、潰しても、奴らは新しい拠点を作ってしまいます。かくなるうえは、戒厳令を敷いて、アメリカ全土に兵隊を配備するしかないと思います」

 フリン将軍は以前から、アメリカ国内での軍事作戦を主張していた。


「それはダメです。武力でおさえつけても、世界は平和になりません」

平和を愛するプレアデス星人がすぐに反対表明して、手をあげた。金髪で鼻すじの通ったハンサムな宇宙人である。


「キミはどう思うかね?」

沈痛な面持ちでさっきからずっと黙っていたシリウス星人にトランプは意見を求めた。額の広いハゲあがった顔立ちだった。


「たしかに悪を潰すことも大事です。部屋のゴミを放置していたらゴミ屋敷になってしまいますからね。いくらゴミ掃除をしても、部屋はまた汚れてしまいます。

だから、定期的な掃除は必要でしょう。

しかし、もっとも大事なのは、掃除をする人を増やすことです。

善人を育てることを忘れてはいけません。

そのためにも、例の科学技術を公開して、世界中の科学者に開発競争をさせるべきです」

 シリウス星人は科学者らしい思慮深い表情で静かに言った。

 

戒厳令を発して軍隊をアメリカ全土に配備してしまったら力で国民を抑えつける独裁国家になってしまう。


かといって、このまま悪魔崇拝者らの拠点を1つずつ潰していくやり方だと子どもたちの犠牲は増えるばかりだった。

パパはいったい、どんな決断をするのだろうか?

イヴァンカは、トランプの横顔を眺めながら、冷めたカフェラテのカップに赤い唇をつけた。


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