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(3)悪魔のお別れ


『我々は銀河連合との戦いに敗北した。もう、お前たちの力にはなれぬ』


 突然、脳裏に悪魔の声が降りてきたとき、ハナ・ロスチャイルドは思わず天をあおいだ。


もちろん、空には宇宙人もいなければ悪魔もいないし、ましてや先ほど息を引き取った父親の亡霊もなかった。そのままハナは目を閉じた。

 

ここしばらく音沙汰のなかった声である。

ハナが宇宙悪魔と呼んでいる存在だった。

闇の支配者たちは、それを宇宙人だと信じているようだが、ハナは、悪魔だと考えていた。


悪魔崇拝儀式のときに降臨する存在であり、この悪魔の指示通りに動けば巨万の富を得ることができた。

その悪魔が『さよなら』を言ってきたのだ。


どういうことだろうか? 


なにか、嫌な予感がハナの胸にジワリジワリと浸透していくようだった。


『これまではお前が最高指導者だった。我々がお前を選んだのだ。しかし、今後はそうもいくまい。他の組織が、世界支配を目指して首領の座を狙ってくる。そして互いに争うだろう。我々は地球を去るが、お前たちは、自分の頭で考え、自分の力で戦わなければならない』


そんなバカな! とハナは思った。


『おまけに、銀河連合が支えるホワイトハット軍が、お前たちを殲滅する。それが私から、最後の助言だ』

 ハナは恐怖に全身が震えたあと、怒りに似たものが込み上げてきて力がみなぎりいつのまにか拳を握りしめていた。


「おばあちゃん、どうしたの?」

孫娘が心配そうにハナのドレスをつかんだ。


孫娘に氣づいたハナは、やさしい目をむけ孫娘の頬を両手で包んだ。

「可愛い、可愛い。食べてしまいたいよ」


「え? 私を食べちゃうの?」


「ホッペなんか、おいしそうだね」


「私は食べられないよ」


「そうかい? 試してみるかい?」

ハナはおどけて言い、孫娘の胸に指をはわせてくすぐった。


「きゃっ! きゃっ!」

 と孫娘が笑う。


そのとき、ロンドン・ロスチャイルド家の当主となった長男ナサニエル(ナット)がバルコニーへやってきて「姉さん」と声をかけた。


「あら、ナット、どうしたの?」

 ハナは孫娘から手を離して振り向いた。


「葬儀のこととか、今後のこととか、相談したいんだけど」

ドラッグでボロボロになった体を左右に揺らしながらナットが言った。


「いいわよ。今後はあなたを私が支えてあげる。一族のために、この世界を動かしましょう」


「ありがとう。助かるよ」


 ナットは骨と皮だけになった細い腕をあげて頭をかいた。


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