(23)神さまに選ばれたのはどっちだ?
扉が開く音がして、暗闇に光があふれた。
リンダは、ふと歌うのをやめた。
あたりを見わたすと広い倉庫のような部屋が3段になっていて、ケージが無数にあり、そのなかで裸にされた子どもたちが恐怖で唇を震わせていた。
100人以上は監禁されているとリンダは思い、目をこらしてすみずみに視線を送った。
イケすかない上官がリンダのところへやってきた。
「なに、歌っていたんだ? バカめが。お前はここで、オレらにいたぶられたあと死ぬんだ。あははは」
上官は二重アゴを上下させて高笑いした。
うしろにいる2人の屈強な男がケージからリンダを連れ出し、後ろ手に手錠をかけた。
「歩け!」
上官が先に歩き出す。
屈強な男がリンダの背中を押す。
リンダは、しかたなしに上官のあとを追って歩いた。
裸で歩かされることに恥ずかしさを覚えて、ぎこちなく歩いた。歩きながら、周囲に視線を向け、逃げ出す経路を探った。
ここは、おそらく地下だ。地上へあがるエレベーターや階段があるはずだ。
しばらくして、
ジャグジーやプールのある広い空間に出た。
天井が高く太陽光のような照明のせいで、ここが地下であることを忘れてしまいそうなところだった。
まるで屋外のような明るさにリンダが目をシバシバさせた。
眩しくて頭がクラクラするほどだった。
裸の男たちと少年少女らが入り乱れていた。
湯気が立ち込めていて、ぼんやりとしているのだが、それらがリンダの目に飛び込んできて憂うつな気持ちになった。
プールサイドのビーチベッドでは裸の肥満体男がロープで縛られた裸の少年の下半身を指でイジっている。
隣では、裸の少女が肥満体男の陰茎を口にくわえていた。
ジャグジーに横たわった男を2人の少女がタオルで垢スリをしていた。
犬のように四つん這いになって歩く少年が首輪でつながれていて、それをペットリードを持って連れ歩いている男がいた。
どいつもこいつも、ゲスな男たちばかりだとリンダは思った。
屈強な男が2人がかりでリンダをロープで縛った。
男たちは手なれたもので、黙々とリンダの手や足を縛っていった。
天井からたれたワイヤーにロープをつないで、リンダを吊し上げた。
リンダの両脚が大きく開くようになっていて、その陰部を男たちは確認してうなずき合った。
リンダは裸のまま、足や腕、乳房などをロープで亀甲縛りにされ、身をよじることしかできなかった。
自分が変態どもの餌食になることが悔しくてたまらなかった。
うすら笑いを浮かべて近づいてくる上官をキッと睨んだ。
「ははは、お前とは、もっといい関係をむすべると思ったんだがなぁ。残念だよ。たっぷりとお前の体を堪能したあと、苦しまずに天国へ送ってやるからな。オレからのせめてもの餞別だよ」
上官が顔を近づけてきたときを狙って、リンダは唾を吐いた。
「ぺっ! 死ぬのはお前たちだよ。何の罪もない子どもをおもちゃにして、許されると思ってるの? 神さまの怒りをかって、必ず天罰が下るわ」
「おいおい、この後に及んで勇ましいことを言うじゃないか。ま、そういう氣の強い女は嫌いじゃないけどな」
ニヤニヤ笑いながら言ったあと、上官はキリっとした真顔になってこんなことを言った。
「いいか、よく聞け。神に選ばれたのは、お前らじゃなくて、オレらなんだよ。間違えるな。お前らは、いまの9割は削減されるんだよ。統治しやすい従順なシープルが1億くらいいれば十分なんだ。だから、お前たちに残された選択肢は、奴隷になるか、天国へ行くかだ」
「神さまに選ばれたのはどっちか? もうすぐわかるよ。お前たちに、この地球が統治できるわけがない。自堕落な生活をし、憎しみと怒りの染みついた体で快楽をむさぼるだけじゃないか。お前らの行き着く先は地獄だ。覚悟しな!」
「おいおい、なんということだ。頼もしいことを言ってくれるじゃないか」
と上官が高笑いをはじめた瞬間、一切の照明が消え、真っ暗闇になった。
何も見えない暗黒の世界だった。
どこかで銃声が聞こえた。