(20)見てはいけないものを見てしまった!
リンダは、夜道をバイクで走っていた。
憂さ晴らしにバーで酒でも飲んで、若い男をつかまえてワンナイトラブを楽しもうかと思ったが、そんな氣にもなれなかった。
砂漠の風を感じながら夜道を突っ走るのが氣持ちよかった。
アメリカでのバイク販売台数は圧倒的にハーレーが人気で、次がホンダだが、リンダはカワサキのバイクが好きだった。
ニンジャという名前のとおり、闇夜に颯爽と走り抜けていく感覚がたまらなく好きだった。250CCクラスが華奢なリンダにはちょうどよかった。
ふと前方に見慣れた車が信号で停車していた。
濃紺のBMWが左のウィンカーを点滅させていた。イケすかない上官の車だと思った。
人かげは運転席にしかない。葉巻をくわえた影が、音楽に合わせて上下に動いていた。ご機嫌な様子だった。これから、女でも買いにいくのだろうか?
リンダはつけてみようと思った。
少し距離をおいて、上官の車を追跡した。上官の車は、ノロノロとした遅い走りで町境に立つ標識の前を走り抜けていった。
遥か遠くまで広がる砂漠と岩山が月明かりに照らされて白く見えた。
上官の車は廃業したドライブインの駐車場に入って行った。
駐車場には、他にも10台ほど車があり、上官の車はドライブインから1番遠いスペースにバックで入った。
道路にそびえ立つネオン看板はハゲ落ちて、黒いコードがユラユラと揺れていた。
入り口ドアは、ベニア板が打ち付けられていて、卑猥な言葉の落書きがあった。
リンダは、バイクを茂みに停めて上官のあとを追いかけた。
上官は慣れた手つきでベニア板をずらして中へ入って行った。
なかで、何が行われているのだろうか?
賭博カジノでもやっているのだろうか?
それとも、秘密のファイトクラブか?
上官のことだから、どうせ、いやらしい性欲処理でもしているのだろう?
リンダは、恐る恐るなかへ入って行った。
真っ暗闇のなかにひとすじの光が伸びていた。
地下に降りる階段から光が漏れていた。
階段を降りていくと、地下部分だけ新しく増築されたらしく、廊下や壁が真新しくて地上とは違う匂いがした。
しばらく行くと絨毯が敷いてあるスペースが広がった。
映画館のようなドアが3つあり、リンダは左端のドアをそっと小さく開けた。
そこは、広いホールになっていた。
地下3階分を吹き抜けた高い天井に享楽の声がこだましていた。
ジャグジーに肥満体の裸の男が両手を広げて寝そべっていた。幼い少女が男の乳首を口に含んでいた。
プールサイドでは、ビーチチェアに寝転がった男が、裸の少女にいちもつをしゃぶらせていた。
ハゲた男が、幼い男の子を後ろ手に縛り、ムチで叩いていた。
なんだ、ここは?
男たちは、基地で働く幹部連中ではないか!
リンダは背筋が寒くなり、鳥肌がたつのを感じた。
そのとき、背後で声がした。
「お前、ここで、何をしている!」
イケすかない上官だった。上官はリンダを羽交い締めにした。
「やめて! はなして!」
リンダは抵抗したが、上官の力にはかなわなかった。
「お前は、見てはいけないものを見てしまったようだな」
上官はニヤニヤ笑いながら、リンダの臀部に指を伸ばした。