(16)世界支配体制トップ6人とは?
会場に続々と黒装束の人々が入ってくる。
顔は隠れていて2つの目だけが黒ずきんの奥で光っていた。体型や胸の膨らみなどで男女が判明できるが、それがいったい誰なのかはわからない。
三角形の黒ずきんがひときわ高く、コメカミ部分に金色のラインが3本入った人物がナットを含めて6名いて、それらが壇上へあがっていった。
世界支配のイルミナティのトップの連中だった。この世界を牛耳っていてる最高峰の6人だった。
それぞれ獣の名前がつけられていた。
ヒョウは石油利権で成り上がった一族、クマは植民地時代から続く発展途上国の搾取で財を成した一族、ヤマネコは世界中の政治家を手玉に取る一族、タカは兵器産業を牛耳る死の商人、ドラゴンはアジアの黄金を一手に管理する一族、そしてライオンが世界の金融機関をコントロールしている我がロスチャイルド家だった。
こいつらのうち、誰が首領の座を狙ってくるのか?
内部抗争が銃撃戦に発展することもあるだろう。
それを避けて、闇の支配体制を今一度引き締めるためにも、今日の悪魔崇拝儀式は重要なのだとハナは思った。
「さあ、あなたも行くのよ」
ハナはナットの背中を押した。
ナットはヨロヨロと前へ出て、ゆっくりと背筋を伸ばした。
「あなたが首領なのよ。闇の帝王なのよ! それを、高らかに宣言してきなさい」
「あ、ああ」
ナットは、不甲斐ない返事をする。
ハナは、そんな姿にイライラするのだった。
「もう! しっかりしなさい!」
「でも」
「でもじゃないでしょ。やるしかないのよ! 私がインカムで指示を出すから、安心して、あなたは、とにかく堂々としていればいいのよ」
ハナはナットの背中に向かって言った。「さあ、行きなさい!」
壇上には醜い裸の男を縛りつけた祭壇があり、その前に6人が横1列に並ぶ。
ナットが首領なので中央に立つのだが、どことなく貧弱に見えた。威厳がないのである。
もちろん、黒ずきんをしているので、顔は見えない。
「一歩、前へ出て、両手を広げるの。そして『さあ、はじめよう』って言うのよ。いい? くれぐれも、堂々とするのよ」
ハナはもう一度「堂々と」と繰り返した。
ナットは、「うん」と首を縦にふって前へ出た。
そして、ナットが両手を広げたとき「ちょっと、待て!」と野太い声がナットに命令した。
「ん?」
とナットは振り向いた。ヒョウだった。
「今日の生け贄はなんだ? なんで、こんな醜い中年オヤジが裸で祭壇によこたわっているんだ? え? 生け贄といえば、幼な子か、赤ん坊だろうが!」
ナットがハナに視線を向けインカムで「どうしよう」とヒソヒソと言った。