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(14)メラニア夫人の不思議な力

そのとき、中庭でチャッピーが激しく吠えた。


チャッピーはバロンが可愛がっているダックスフンドで、チャッピーが椎間板ヘルニアで苦しんでいたときバロンは痛みをやわらげるために一晩中チャッピーの背中をさすったことがある。


そのチャッピーが天に向かって吠えていた。


「どうした? チャッピー」

バロンが庭に駆け出していくのを、黒服にサングラスのセキュリティスタッフが片手でさえぎって制止した。


「お待ちください」

セキュリティスタッフは胸から銃を取り出した。


チャッピは空に飛翔しているドローンに向かって吠えていた。

ドローンはまるで生き物でもあるかのように、空中で止まってゆっくりと向きを変える。

モーターの音がほとんどしない。


偵察用のどろーんだろうか?

メラニアは危険な胸騒ぎを感じた。


ドローンの2つのカメラがまるで鳥の目のように輝いていて、その真ん中には鼻のような突起物があった。もちろん、それは鼻ではない。


銃口だった。


「危ない!」

セキュリティスタッフは、ドローンに向かって続けざまに「バンバンバンっ」と3発撃った。


「近くにドローンを操作している犯人がいるはずだ。至急、捜索してくれ」

腕時計型の超小型無線機でセキュリティスタッフは警備スタッフに司令を出した。


 悲劇はチャッピーの身の上に起きていた。

銃撃されたドローンがチャッピーの長い脊椎を直撃したのである。その後、ドローンはチャッピーの上で自爆した。


 チャッピーは激痛に耐えながら「クーン」と悲しい声で泣いた。


後ろ足がピクピクと痙攣していた。長い背中は大きくやけどをしていた。チャッピーの短い人生が終わろうとしていた。


「チャッピー」

バロンが駆け寄ってチャッピーを抱き上げた。


チャッピーは、悲しい表情をしてバロンを見つめる。チャッピーは自分の最期を知っているかのように、バロンに向かってゆっくりと目を閉じた。


「チャッピー! ダメだよ!」

バロンには周囲の喧騒など耳に入らないようだった。


警備スタッフが自爆したドローンの残骸を回収したり、犯人捜査の連絡を取り合ったり、せわしなく動き回っている姿もバロンの目には映らないようだった。

チャッピーの心臓が停止し、チャッピーの体がぐったりとなった。


そのとき、メラニア夫人がバロンの背中に手をあてる。


メラニア夫人はバロンに優しい視線を向け「大丈夫よ。チャッピーをこちらへ」と言って、チャッピーの肉体を受け取った。


そして、メラニア夫人はチャッピーを抱きしめて、呪文を唱えながら祈った。


「大丈夫、大丈夫。チャッピーは、まだまだ元気に長い生きする」


メラニア夫人は何度もそう言い、チャッピーの細長い顔をやさしく撫でた。


「え? どうしたの?」

バロンが驚いて声を漏らした。


チャッピーが目をあけたのである。


そして、やけどの痕もきれいになくなっていた。しばらくすると、チャッピーは首を左右にふって「ワンっ」と吠えたのである。


「どういうこと? 何が起きたの? ママ!」

バロンはチャッピーと母親とを交互に見つめた。




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