(13)なぜトランプは大統領になったのか?
「Qについては、私が説明しよう」
そう言ってJFKジュニアは、コーヒーカップをテーブルに置いた。
「QとQアノンはどう違うの?」
すかさずバロンが質問する。
「Qは世界中の通信網を傍受している組織で、ディープステートの連中を監視している。ただ、最近は奴らもセキュリティを強化していて、なかなか情報が入ってこないのが現状だ。
そして、Qには、もう1つ重要な使命がある。
それは、世界中の人々を目覚めさせることだ。マスコミを信じ切っている人々に、マスコミはフェイクであること、政府も嘘をつくことに気づいてもらいたいんだ。
奴らの目的は国家を破壊することだ。
宗教や民族など、人々が1つにまとまることを妨害して分裂させようとしている。
そうやって、世界統一政府を完成させようとしているんだ。世界がまとまることはいいことだが、奴らがそれを支配するのはマズい。
Qはそれを阻止するために活動している。QアノンはQの情報やメッセージを拡散する人々のことだ」
ジュニアは、そう語り、バロンにやさしい視線を向けた。
「いま、どのくらいの人々が目覚めてるの?」
「そうだね。約10%ってところだろうね」
「まだ10%しかいないの? もっと目覚める人が増えないと世界がダメになっちゃうよ」
バロンは両手をひろげて肩をすぼめた。
「そうだね。私たちが、もっとがんばんなきゃいけないね。
キミのお父さんが矢おもてに立って頑張ってくれている。
でも、もう、高齢だ。大統領に返り咲いて4年働くのが限界だろうね」
とジュニアはさみしそうな表情をして言った。
そこで、メラニア夫人が口をはさんだ。
「なぜお父さまが大統領になったのか? それは、このジュニアさんがお父さまに『どうしても』と、懇願されたからよ」
「え? どういうこと?」
バロンは振り返ってジュニアに目で答えを求めた。
「2015年の大統領選挙のときヒラリーが立候補した。
彼女が大統領になったら、この国は完全に終わる。
アメリカだけでなく、世界中が戦火に見舞われることになる。
これは、何がなんでも阻止しなければならなかった。
それで、私がキミのパパに大統領になってほしいとお願いしたんだ。
キミのパパは清廉潔白で高貴な理想を持っている、まぎれもなく愛国者だ。
しかも、潤沢な資金も持っている。
知名度も高い。そして、私の親友だ。
申し分ない候補者だった。私たちは全力でバックアップした。
キミのパパは最初断ったんだ。
『たしかに、いまのアメリカはおかしなことになっている。なんとかしなければならないと思っている。だから、私以外に適任者がいたら、私はその人を支援するよ』と言ってくれた。
『適任者はあなたしかいません!』と何度も依頼していたとき、メラニア夫人が『あなたがやるべきよ』と言ってくれた。
そして、キミのパパは第45代アメリカ大統領になった」
ジュニアはそう言って、メラニア夫人にむかって、ウンウンっとうなずいた。