(12)JFKジュニアは生きていた
「ケネディ大統領を暗殺したのはCIA(アメリカ中央情報局)の工作員なのよ。CIAはいまもディープステートの手先となって働いている」
メラニア夫人は窓の外の緑の先の青い空に目を細めた。
「オズワルドの単独犯説は、どうみてもおかしいし、犯人とされたオズワルドもすぐに殺されたしね。ケネディ大統領の弟のロバート・ケネディも暗殺されたよね」
バロンはネットで知った知識を披露して、ドヤ顔をつくった。
「軍のなかの少人数の愛国者たちがアメリカを再び偉大な国にするために結成してできたのがホワイトハット軍なのよ。
そのなかからNSA(アメリカ国家安全保障局)の幹部に抜擢された人がいたの。
NSAは通信網を傍受して世界中の人々を監視するシステムを持っているのね。
NSAのなかにも仲間を作るようになり、その途中で、いろんな情報をつかむことができたの。
それはホワイトハットたちが驚愕するような内容だった」
「え? どうんな内容なの?」
メラニア夫人は悲しい目をしてやさしくバロンの顔を見つめたあと、静かに続けた。
「子どもたちを生け贄にする悪魔崇拝儀式と、性的虐待、さらには人身売買の実態よ」
「それで、ホワイトハット軍は子どもたちを救出する作戦に取り組んでいるんだね」
そのとき、1人の中年男性が入ってきて「やぁ、メラニア」とメラニアとハグして、こう言った。
「いよいよバロンくんが正式に私たちの仲間になるときが来たって聞いたんでね。
うれしくて、飛んでやってきたよ」
「ああ、うれしいわ。さあ、そこに座って?」
メラニアは中年男性に席をすすめ「飲み物はノンカフェインのコーヒーでよかったかしら?」と聞いた。
「ありがとう。ボクの好みを知っていてくれたんだね?」
「ええ」
メラニアは執事に飲み物を持ってくるように指示した。
「この人は?」
バロンが尋ねた。
「ケネディ大統領のジュニアよ」
「え?」
バロンは息をのんだ。
「1999年7月に私は飛行機事故で亡くなりました。
しかし、私はこうして生きています。
身の危険を察知した私は愛する家族と愛犬をつれて飛行機に乗ったことになっていますが、実は別の場所で保護されています。
その後、私は『Q』という地下組織をつくりその指揮をとっています」
ジュニアがバロンに説明した。
「翌年の2000年にニューヨークの上院議員選挙に立候補する噂があって、立候補すればジュニアは確実に当選すると言われていたんだよね。ジュニアは、人気者だったんでしょ?」
バロンはまたドヤ顔をつくった。
「そうよ。その選挙で当選した人の名前を知ってる?」
メラニアがいたずらっ子のような顔をして謎かけをする。
「え? 誰だろう?」
「ヒラリー・クリントンだよ」
ジュニアが横から言って、執事からコーヒーを受け取った。