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デイブレイクサーガ  作者: 鬼容章(きもりあきら)
閑話 日本消滅後 埼玉スラムの旅
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第20話-2 刀工のクモミネ翁、曰く

 ややあって。

 じいさんは視線を逸らさずに、そのまま俺に話しかける。

 叱るわけなく、諭すわけでもない。

 かなり淡々と話していたので、一瞬、俺には他人事に聞こえた。


「光の者、この六紋村正の扱いにさぞかし難儀しただろう」

「え、あ、はい」

「この六紋村正は、子供のころの友人のように使い手へ語りかける。ただし、無邪気とは時に人へ害をなすことがある」

「哲学的で、少し難しいですね」

「そうかい。もう少し柔らかく。君の150%の能力を日本刀が引き出していた。それが刀の無邪気さだ。君は気づかなかったようだね。あのまま、能力を使い続けると、君はどうなっていただろうか?」


 少しの間、じいさんは視線を逸らす。ここで俺に考える時間をくれるようだ。

 刀から見た景色、それは俺の覚醒能力のことだろう。

 明らかに、人間が許容できる能力を超えていたと俺も思う。そして、六紋村正が能力を増幅させてくれていたことに、俺は気づかなかった。

 悪戯に、刀と能力に頼り、まるで自分を消耗品のように俺は扱った。

 しまいには、自分だけ選ばれた能力があると過信した。

 ところが、カシマノゾミとの約束を果たした後、刀は折れた。

 俺は複雑な胸中を語る。強い目線を残したまま、じいさんは深く頷いた。


「とある約束を果たした後で、刀は折れました。それから、俺は能力を失ったままなんです」

「なるほど。刀が君を生かしたと思ったが、ずっと遊び続けたい質の村正がそんな気が利くことをするはずがない。あの折れ口、誰か別の者の波動を感じる。その者が君を生かしたんだろう」

「……ノゾミが俺の死を止めたんですか」

「理屈ではそうなる。それじゃあ、君は納得いかないだろう。どうして自分の能力が正しい結果にならなかったのか。どうして倒そうとした者に命を救われたのか。どうして、どうして」


 黒い瞳のじいさんは覚醒者ではない。ナガトのように覚醒能力に頼った見方ではない。

 刀から見た景色を再生させて、それを参考にじいさんが話しているようだった。

 それか、職人としての目が俺の本心を見抜いていたのかもしれない。

 たぶん、これが彼の経験則なんだろう。

 どうして、という俺の心の叫びが何も言わずとも、彼には刀の折れ方を見て伝わっていた。

 俺は謝った。

 だけども、人生の深い意味を知っている彼は、穏やかに笑いかけてきた。


「その通りです。何も言い訳ができません」

「謝ることではない。刀、環境、その者、君の能力を出せる状況が整っていなかったようだな」

「状況の問題なんでしょうか」

「そうだ。君の中に絶対的な能力が存在するなんて幻想だ。外の要因の振れ幅に、君の能力は影響を受けて、たまたま発揮できていただけだ。内的要因……自分の素質だけで世の中を渡る者は、人間の中じゃ誰1人としておらん」


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