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デイブレイクサーガ  作者: 鬼容章(きもりあきら)
閑話 日本消滅後 埼玉スラムの旅
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第19話-2 狭山湖の奥地

 違う。俺の推理は外れた。

 いったん『私』に戻り、落ち着いたアヤセは難しい顔をした。


「母さんを助けたときに、アヤセは前世の記憶を取り戻したのか?」

「いいえ。私がお母さんを助けたときに記憶が戻ったんじゃない。えぇと、頭痛があってから、あの記憶が戻った。だから、富士山が爆発した直後かな。過激な災害情報ばかり見ていたから、私の頭が狂ったと思ったわー」

「それ、俺がこの世界とつながった6月30日かもー」

「こっちの世界に来たときに、お前から連絡よこせよ! その直後に叔父さんと再会して、『また会ったな』って言われてゾッとしたんだぞ!」

「ちょっと余裕がなくて……ごめん」

「許す」


 今、話し方の癖が似ていると思った。

 双子である以上に、そもそも同じだから仕方ないことだ。

 とにかく、アヤセの怒りは俺にも分かる。

 俺だってアヤセの立場になったら、弟だと思う奴の記憶が乗っかってきた瞬間、パニックになってしまう。

『私』としてのアイデンティティが木っ端みじんになったに違いない。

 だから、俺は双子の姉に平謝りした。ふてくされた顔で姉に許される。


 俺たちの叔父さんとは、ナガトの父親である雲峰竜哉(クモミネリュウヤ)陸上自衛軍大将のことだ。

 目の前にいるナガトは彼の息子だ。

 今、俺たちの話を聞いて、従兄のナガトが思考停止している。疑問が重なって溶けた顔にして、俺たちは申し訳なく思った。

 さて、どこから説明が必要だろう。

 ナガトだけでなく、カズサやもう1人の男性も興味深そうに話を聞いてくれた。


 前の世界から今の世界へ主要な世界線が切り替わった。

 その時点で、白い世界で何者かと契約したために、前の世界の俺は、この世界では双子の姉弟に分裂した。

 1人は姉のアヤセ、もう1人はそのままイツキ、と前の世界の終わりまでの記憶を引き継いだ2つの存在にそれぞれ分かれた。

 それぞれ記憶に、前世のものが戻った。ただし、この世界に入った後は別個体なので、記憶の共有が出来ない。

 基本は同じ世界ベースで、やり直し転生だ。


 長耳の2人は、俺の説明で納得してくれた。

 深く事情を話せるわけでないが、と長耳の男性が前置きをして話す。

 一瞬、カズサは俺たちに悲しそうな目を向けた。彼女の転生は複雑らしい。


「深くは話せません。ですが、私たちもその白い世界を見ています。つまり、私も転生者です。そして、彼女もそうです」

「それは事実だが……すまない。今、私は何も言えない。私が素直に話せば、お前たちは余計に混乱するだろうから」


 俯くカズサは、1人でどこかへ歩いて行った。お手洗いだろうか。

 俺の話に、長耳さんたちの意見も加わった。

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