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デイブレイクサーガ  作者: 鬼容章(きもりあきら)
第3章 灼熱の大地 燃える福岡
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第16話-2 竜宮城の玉手箱、破壊

 ノゾミとの同調が続いていた俺は、彼女の気持ちに応えた。

 俺の意志で冷静な判断ができない。人として最悪だった。

 それでも、俺の手は彼女を始末するために、腰に下がった日本刀を抜いた。

 立っていた彼女に向けて、日本刀『六紋村正』を投げつけた。串刺しになった彼女は、教壇に叩きつけられた。

 俺に微笑みを浮かべて、彼女は永遠の眠りに落ちた。その瞳は暴走した金色から、もはや何も映さない黒になった。

 勢いがあったわけではないけど、彼女の身体に刺さった刀が折れた。その折れた日本刀、柄の方が床に転がる。


 何故か、俺の手がノゾミを殺していた。

 意味が分からず、罪深い両手のひらを見る。強い幻覚で、黒い血に手が染まっているように見えた。

 ノゾミの生存反応がなくなり、俺の同調が解けかけている。灰色の瞳に戻りつつあった俺は、立ったまま震えていた。


「あ、あ、あ」


 直後、ケイタは怒りの声を出す。それは、少しノゾミに似ていた。

 それにかぶせるように、俺の心を読んだナガトが叫ぶ。さらに、俺の頬に渾身の張り手をナガトはくれた。


「お前ッ!」

「イツキ、あなたはカシマノゾミじゃない! いい加減、正気に戻りなさい!」


 一種の覚醒能力の暴走が、強制的に止まった。カシマノゾミから完全に同調が抜ける。

 深い灰色の瞳になった俺は、腰から床に崩れ落ちた。今、俺の痛む頬を片手で押さえる男が何者か分からなくなっていた。

 ふと、最後の鐘の音が鳴った。教会の外にいたクリーチャーどもが一斉に消滅した。

 同時に、教会の扉が開く。

 ユウナが空間の異変に気付いた。

 天が崩れたように青い破片が福岡市内へ降り注いでくる。


「ナガトさん、この空間壊れている! ここから脱出しないと!」

「妹ちゃん、そうね! 港へ逃げましょう!」


 欠けた日本刀を掴んだケイタが、俺を殺そうと迫り寄る。だが、彼の身体をナガトが手で掴み上げた

 ユウナは肩を貸し、動きそうにない俺と無理やり二人三脚した。

 暴れるケイタ少年を車にぶち込み、青い顔のナガトは急発進させる。

 人形みたいに無表情な俺をサイドカーに押し込めると、厳しい顔のユウナはバイクを出す。

 青い破片が滝のように空から降り注ぎ、九州北部にあった謎空間が壊れていく。

 その中、妹はバイクで車を先導して、福岡の港へ向かった。

 港では海上自衛軍の船が、バイクと車を出迎えた。

 焦った顔の叔父さんが肩に、精神廃人状態の俺を担ぎ上げると、ナガトたちに指示を出した。

 役目を終えているので、正直にユウナが叫んだ。


「車両は廃棄だ。みんな乗船しろ」

「叔父さん、私もいいのッ!」

「緊急避難に敵味方なしッ! 総員退避だッ!」

「はいッ!」


 叔父さん、俺、ユウナ、ナガト、ケイタが船へ乗り込んだ。

 担がれた俺だけ視線が海でなかった。

 彼女が残した、美しい世界の崩壊を見ていた。

 あの教会があった福岡市内へ、青い破片が降り注いでいる。

 徐々に空間が、青から赤い景色へ変わる。しまいには、灼熱の赤い塊が福岡市内へ降り注いでいた。

 炎の巻き添えの寸前で、船が港を出航し、俺たちは赤く染まる雲の下に脱出した。

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