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デイブレイクサーガ  作者: 鬼容章(きもりあきら)
第3章 灼熱の大地 燃える福岡
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第16話-1 竜宮城の玉手箱、破壊

 アクセサリー同士が共鳴して、青い光を放った直後らしい。

 モノクロの景色が消えて、天神の教会内に俺の意識は戻っていた。

 悪夢。

 灰色の瞳に戻った俺は、膝立ちのまま、両手を広げて眺めた。

 当然、女子中学生のように、か細く長い指ではない。男らしく無骨で大きな手だ。

 俺が茫然としていると、怒り狂った金瞳のノゾミが、目の前に立っていた。俺の首にぶら下がった十字架に視線が向いている。

 どうやら彼女の怒りの矛先はミズキだ。


「その十字架、ぶっ壊してやるッ!」

「うるせぇ、お前が死ねよッ!」


 彼女の手が紐を掴んだことで、俺の首が締まった。

 反射的に、立ち上がった俺は、怒りの罵声を彼女に吐く。

 今の俺は、かつての私だ。

 過去の彼女の記憶と同調しすぎて、少しずつ俺の灰瞳から金瞳になっていた。今まさに、俺は正気を失っていた。

 柔道で言うところの組み手だ。俺も彼女も、それぞれ首にかかるアクセサリーの紐を掴んでいた。

 お互いの首が締まり、赤い顔で金瞳同士が睨み合う。

 先に紐が切れたのは、彼女の方だった。半分に欠けた勾玉のアクセサリーは、教会の床に転がった。

 首を押さえながら彼女はバックステップして、俺と距離を取った。

 教会の床に唾を吐き捨てて、彼女は叫んだ。同調が止まらない俺は、彼女の本心を叫び返す。


「面白いよ。イツキは、同情を通り越して、私に同調しているんだ。今さら、私の気持ちになったところで、お前ごときに何が出来る!」

「居場所が出来ても、私の心の闇が消えることはなかった! 最初からこうなるって、白い世界のあいつは分かっていたんだ!」

「私のように話す真似はやめろ! それじゃあ、私は今、何のために存在している! 結局、何も得られていないじゃないか!」

「あいつの言う通り、鹿島(カシマ)家に復讐した! 何百万人の命を奪った! もう契約は十分に果たした!」

「じゃあ……今から私はどうすんだよ……」


 元々、その心に子供っぽさが残るノゾミは、情緒の安定がない。

 そんな彼女だったけど、軍事訓練の成果、少しは大人の考えで世界を考えることができる。

 世界を騙る者に騙されたと、もう彼女は知っていた。この後は、彼女自身の命を持って罪を償うしかない、とも気づいていた。

 その本心を俺という鏡にさらけ出された。彼女は立ったまま、泣き出してしまった。


 混乱。

 とりあえず、ユウナとナガトは立ったまま傍観していた。

 今、何が起こっているのかと状況が理解できずに、それぞれの刀と拳銃を構えるこ ともなく、ただ床に向けている。

 実の弟、鹿島慧太(カシマケイタ)は、彼自身に自己暗示でかけた時間停止を解除させた。

 金瞳の姉たちが苦しみ嘆きあっている状態で、彼自身にも罪があると知ってしまったからだ。

 ケイタという存在がいるだけで、姉は苦しむ。だから、彼が奪った居場所を姉に返すべきだと分かった。

 それが一般的ではないとしても、鹿島(カシマ)家の人間らしい判断だ。

 床に落ちていた半分の勾玉を拾い、彼は自身の持つ半分と合わせた。そして、離れた場所にいる姉へ向けて、そのアクセサリーを差し出す。

 だけど、かつて姉だった彼女は、弟の前には行かなかった。向こう側に立つ弟へ、彼女は穏やかにほほ笑みかける。


「お姉ちゃん、僕の場所を返すから、家に戻って」

「ケイタ、ずっと4歳じゃないんだね。もう12歳なんだね」

「ねぇ、もう苦しまないで」

「それは、今からあなたのもの。大事にしなさい」

「え?」

「私、罪滅ぼしの仕方がわかった。ここで永遠に眠り続けることだ。『私』なら私の気持ちに応えてくれるよねッ!」


 きっかけは、彼女の存在を蔑ろにした鹿島(カシマ)家への復讐だった。結果として、想像以上に無関係な他人の命を奪い過ぎた。

 だから、今さら家に戻る資格はない。それより彼女は、この罪を償うことを選んだ。

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