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デイブレイクサーガ  作者: 鬼容章(きもりあきら)
第3章 灼熱の大地 燃える福岡
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第15話-3 彼女の懺悔

「あっそう。ところであなたは誰?」

東雲一稀(シノノメイツキ)。僕の父さんが受賞したから、ご飯食べにきたんだ」

「は、なにそれ。私は鹿島希望(カシマノゾミ)。ご飯が美味しくないから、外の空気を吸いに来たの」

「あの場、疲れるよね。姉や妹はチヤホヤで済むのに、男の僕だけ大人からの期待値が高いんだよね。正直、味のするカップラーメンが恋しいな」


 すごく馬鹿な奴だなぁ、と私は卑屈に笑った。正直そうな彼も、私の顔を見て笑い返す。

 あの頃の彼でさえ、実際は馬鹿どころかその辺の小学生より遥かに能力が高い人間だったと、次の世界で知ることになる。

 昔の私は、無知で恥知らず、絶望するだけを毎日続けていたので、まだ今よりマシな生き方をしていた。

 寂しそうな私に話を合わせてくれるのは、彼が初めての人だったのは事実だった。

 そんなどうしようもないことに、淡い恋心に似たような希望を抱けるのは、昔の私の良いところだ。

 無常。すぐに愚か者は現実を知る。

 彼と私が愉しそうに話す場面を、彼の妹は不快に思ったらしい。私の弟と同じで年下の連中は、すべての愛を独占しようとする。


「お兄ちゃんは私のもの。お前、気やすく話しかけんなよ!」

「ユウナ、そんな酷いことを言うなよ! あ、カシマさん、待って!」


 話しかけるなも、カシマさん呼びも、どちらも私を侮辱する言葉だ。

 刺激に敏感すぎた私の心が裂けて、まるで血が噴き出しているようだった。

 さっき会場にいたとき、公演するシノノメ博士の目が私には獰猛な狼に見えた。

 ならば、シノノメさんたちは狼の子だ。こいつら兄妹、狼なんだ。

 弱い羊だった私は恐怖を感じて立ち上がると、後ろを振り返らずに走って逃げた。

 何度、私が絶望しても、涙の味だけは同じく塩辛い。どんな料理よりの味も、あの頃の私として覚えている味だ。

 どうやって逃げたかなんて覚えていない。泣き止んだ私が気づくと、どこかの教会の中に逃げ込んでいた。

 椅子、教壇、十字架、ステンドグラスが辛うじて見えるだけ。

 ここは、ただ暗いだけの場所だ。

 だから、光が降りてきて、哀れな私を天国に迎えてくれる神様なんていなかった。

 次の瞬間、人生の終わりを感じた。

 私の心にあったメトロノームの針が強く振り切った衝動で、真っ二つに折れてしまったようだ。

 椅子に腰をかけた私は、護身用で持っていたナイフで、自らの首筋を切っていた。

 想像以上に、温かい血が流れている。

 へぇ、これがヒトの死か。

 そこには、もう人間らしい感情がなかった。


 白い世界。

 意識だけになった私は、神のような悪魔のような、謎のものと対話した。


『次の世界、お前に居場所をくれてやる。代わりに、たくさんの人を殺さないといけない』

『は?』


 なるほど。これが転生前ってやつか。

 そいつは、私に居場所をくれるらしい。代わりに、時が来たら私にたくさんの人を殺せと要求した。

 義父になる予定の錦織(ニシオリ)博士、政務秘書官の父親、そして私を認知しなかった二番目の母親、ぬくぬくと両親の愛を受け続ける弟、家庭の異常を放置した祖父である政治家の鹿島元春(カシマモトハル)

 それどころか、巻き添えになって何百万人の人間たちが死ぬと、その声は計画を説明した。

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