表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デイブレイクサーガ  作者: 鬼容章
第3章 灼熱の大地 燃える福岡
49/72

第14話-3 竜宮城へ突入

 福岡市内に入った。

 さまよう亡者であるクリーチャーの数が多い。

 俺は日本刀で、進路を塞ぐクリーチャーたちを斬り捨てる。

 以前の俺なら、元人間と考えてしまい、奴らを倒すことが出来なかっただろう。

 ハルヒコさんのように、さまよう亡者となっている奴らを楽にしてやる方法が、斬り倒すしか軍人の俺には選べなかった。

 走ってきたバイクのサイドカーに飛び乗る。

 会話のため、バイクが少し減速した。

 ユウナは、意外だと言う。その皮肉で、俺は暗い顔になる。


「へぇ、お兄ちゃんって、クリーチャーを斬り倒せるんだ」

「これが正解だとは思えないよ。出来るなら斬りたくない」

「うーん、言葉は優しいんだけど、感情的なのは優しくないね。死んだカシマさんのこと考えていたでしょ」

「そっか、今の気分でクリーチャーを殺しているように見えるか」

「ただの手向けだって思いなよ。目的を遂行するのが優先」


 半端な優しさは判断を鈍らせる。

 俺に迷いを断ち切らせようと、ユウナは話しかけたんだ。

 彼女はアクセルを踏み、バイクに橋を渡らせた。

 福岡市内は大小さまざまな川によって、砂州のような地形になっている。そこが平地で街になっていた。

 福岡県庁方面でなく、バイクは天神方面を目指しているようだ。

 妹よ、気分で目的地なしにツーリングしていないよな。

 さすがに違うようで、彼女に俺は笑われた。


「私の覚醒能力は、絶対空間認識能力なんだ。物体の持つ固有振動を読める」

「人間とクリーチャーは違うのか?」

「えぇ、たぶん。微弱な反応だけど、覚醒者が近くにいるみたいなの。お兄ちゃん、心当たりある?」

「覚醒者の微弱な反応……。まさかナガトか!」

「ナガトさんって、確か叔父さんの息子さん。あ、ここ!」


 ユウナ曰く、覚醒者、人間、クリーチャーで、それぞれの固有振動数が違うようだ。

 その固有振動からの波を彼女が読み、絶対空間認識能力を修正する。その座標に現れた凸凹の大きさで、空間にいる生物がなんなのか推測できるようだ。

 今のところ、クリーチャーウイルス感染者しか位置を特定できないらしい。

 鍛錬すれば人間なら誰でも位置を特定できるかも、といつか聞いたような妹の答えだった。

 前の世界でも、今回も、俺はその能力で助けられている。まさかナガトの捜索にも役立つとはね。


 福岡市天神の広い公園の中、ユウナはバイクを停めた。

 俺が辺りを見回すと、見覚えがある自衛軍車両が停まっていた。

 間違いなく、ナガトたちが近くにいる。

 ただし、俺とユウナの思惑は少し違っていた。ここ、と言ってバイクを停めた場所は、ずいぶん大きい教会の前だったのだ。

 人間の救出より、さっさと『玉手箱』を破壊したいってことだ。

 ユウナの絶対空間認識能力を使わないでも、覚醒者の俺は本能的に空間の歪みがここにはあると思った。

 教会から昇る、黒いオーラのようなものが見える。度を越した不気味な雰囲気に、俺は圧倒された。

 この教会が『竜宮城の玉手箱』だ。

 ためらわずにいつも進むユウナが、硬い表情になって立ち止まった。

 あらためて、妹に覚醒者が中にいるか、臆病になった俺は尋ねる。

 

「ははは、ウイルス源の時間の門(ポータル)反応にしては巨大すぎるや。さすがに、私でも怖い」

「なぁ、ユウナ。ナガトたちはこの中にいるのか?」

「うん、中に微弱な反応。間違いなく覚醒者だね」

「1人か?」

「ごめん。人数までは分からない。私の能力は不完全みたい」

「そうか。じゃあ……」


 唐突に、教会の扉が開いた。そして、鐘の音がなる。

 げ、倒したクリーチャーが復活してしまう。

 是非もなし。

 俺たちは決心しないまま、教会の中に逃げ込んだ。


 ふいに、パイプオルガンらしき荘厳な音がした。

 聞き覚えのある女の声が、俺たちを蔑む。


「はっはっは! すべては私が出す音の支配下、敗北者どもは懺悔しろ!」


 驚いたユウナは、反射的に刀を抜いて、扉に叩きつけた。

 ヘナヘナと、力ない一撃だ。

 うん、今回も脱出できないらしい。それはいいけど、この音はなんだ。

 妹は力なく、お尻から崩れ落ちた。

 得体の知れない重さが、俺の身体を襲った。思わず、両膝をつく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ