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デイブレイクサーガ  作者: 鬼容章
第3章 灼熱の大地 燃える福岡
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第13話-3 北九州市、八幡製鉄所

 すぐに、ホウライさんは不快な顔に戻り、冗談っぽく話し出す。ただし、俺の冗談には乗ってくれなかった。


「あーもー、優しすぎる馬鹿に付き合うと疲れるぅ。本当、馬鹿らしくて決めるのも面倒くさい。判断保留にするわ」

「また殴り合おうか?」

「冗談でしょ。あなたが本気になったら、私は木っ端みじんだった。……ちょっと見直した」


 お互いに感情が揺れているのか。

 ツンツンとした態度のホウライさんは、たまに俺を褒める。

 空気の読めない俺は、返事に困っていると正直に話す。

 当然、彼女は怒った。


「……それは、ありがとうと答えていいのかな」

「知らない!」


 謝りつつ、俺は別の質問をした。

 それでホウライさんは、自分の目的を思い出したようだ。


「ごめん。でも、なんで君は1人こんなところにいるの?」

「アメリカは日本で起きていることを全て無視する。私は指示で、被害状況の観測を続けていただけ。あなたとの遊びは次いで!」


 捨て台詞を吐いて、よろよろと彼女は歩いて行った。

 どうやって、ここからアメリカ軍基地まで帰るんだろうか。

 灰色の雲が流れて行くのを俺は眺めていた。


 ややあって、俺は身体が動けるまで回復した。

 バイクのエンジン音が近づいてくる。まさか、ホウライさんが俺を跳ね飛ばすとか、ないよね。

 身体をひねり、俺は両腕で膝をかかえた。そーと、顔を動かして、様子をうかがう。

 俺の手前で、サイドカー付きのバイクが停まる。

 ヘルメットから覗く黒髪ツインテール、黒服に身を包んだ少女だ。それでいて、赤い瞳の覚醒者って、間違いなく俺の妹ユウナだ。

 立ち眩みながらも、なんとか俺は立ち上がって、ユウナのところへ行く。

 相変わらず、俺を探し出すのが上手だ。ちょっと地雷系の娘っぽいけど、それでも可愛いやつだ。


「はーい、お兄ちゃん発見! なんで八幡、しかも、ただの空なんか見上げているの?」

「訳あり。俺はこれから……」

「はい、サイドカーに乗ってー。お兄ちゃん、私と福岡に行こう!」

「塞翁が馬だな」

「え、何の話? 服ボロボロじゃん! お兄ちゃん、怪我しているの?」

「いや、何でもないかな」


 塞翁が馬。俺の現状のことだ。

 一方的にホウライさんに殴られてから、ユウナに助けられる。単純に俺、運が良かった。

 妹のユウナは女の勘だろうか、何となく事件があったことを察したようだ。

 でも、ホウライさんに殴られたなんて言うと、ユウナは彼女を追って殺すと言いかねない。見える地雷は踏まないことだ。

 それよりも、俺は任務に戻りたい。先に行ったはずのナガトとホウセンが心配だ。

 俺の真剣な銀瞳を見て、赤い瞳のユウナは頷く。


「ユウナ、俺は軍の任務中なんだ」

「なるほど、合点。叔父さんに頼まれたの。お兄ちゃんのためなら~って引き受けたんだからね」

「へぇ、ユウナらしいね」


 どうやらユウナは逃げ遅れて、福岡の研究所で叔父さんに捕まった。

 解放の条件として、俺を探し出して福岡市内へ案内するという役目になったらしい。

 ユウナの道案内って、すごーーーーくデジャブだ。

 うーん。

 あの東京の悪路より、快適な旅になるといいなぁ。

 まさか、前の世界の親父みたいなことを、この世界では叔父さんがするとはね。

 高速道路の上、放置車両はあってもクリーチャーはおらず、福岡市内まで俺はサイドカーで運ばれるだけだった。


 ふと、思い出す。

 関門海峡を渡った後、教会の鐘の音がした。

 ホウライさんが『もうすぐ時間』と言った後、そこでも鐘の音があり、クリーチャーどもは消えた。

 あの音とクリーチャーの発生から消滅には関係がある。教会の鐘ってことは、おそらく時間周期があるのかもしれない。

 玉手箱を破壊する任務なのに、なんだか俺の背筋に寒気がするんだ。

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