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デイブレイクサーガ  作者: 鬼容章(きもりあきら)
第2章 関西海峡 沈む大阪
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第8話-2 不穏な大阪帰り

 だけど最悪なことに、この日本も、この世界も、徐々に壊れて行っていることに気づいてしまった。

 今、大阪行き。今、崩壊世界。両者を掛け合わせてみると、とても嫌な予感がする。

 この世に強い光があれば闇はひどく深い。

 その考えに至った俺は、青い顔になっているだろう。


 十字架さんのバイオロイド・ミズキが言った通り、すぐに黒サングラスのナガトと黄色い瞳のホウセンが車内へ戻ってきた。

 無論、俺は青い顔を隠しきれなかった。

 ホウセンが怒った黄瞳で、黒サングラスの青年軍人を見る。そのナガトは両手を合わせて謝る。


「せやから、うち言うたやろ」

「あららー? ごめん!」


 ナガトは緊急通行許可証を俺に見せた。

 俺は首を横に振り、大阪へ向けて車を出すように強く言った。


「イツキの調子が戻るまで待ちましょうか。一般と同じタイミングで行けばいいかしら」

「ナガト、気にするな。ただ思い出しただけさ」

「あら、そう。じゃあ、遠慮しないわよ」

「いいぜ。男に二言はない!」


 先輩イケメンや、とホウセンが喜んでくれた。

 まぁ、彼女が少し元気を出したならいいかと、俺は自身を納得させた。

 事前に問題が分かっているなら、あれこれと改めて俺が考える必要はない。後は、俺の行動で何とかできる。

 言葉を発したことで、腹が据わった俺は冷静になったようだ。


 関ケ原インター前、自衛軍の検問所では、緊急車両と確認された。軍の検問で立っていた兵士が合図し、俺たちの軍用車両を通した。

 検問所を抜けて、琵琶湖を通り過ぎ、大津、京都、そして大阪だ。


 7月18日、ジメジメした日本の夏らしい昼を迎えていた。

 平日にもかかわらず、名神高速道路は、ひどく渋滞していた。俺たちは未だに大津にすら入っていなかった。

 この高い湿度の中、すでに誰の文句もない。下着まで汗で水浸しになっていた。

 俺とホウセンは、車の天井を見て、溶けた顔をしている。

 油の量を気にしたナガトは渋々、車の冷房を切っていた。


 殺気立った彼の足踏み頻度がまた多い。

 また無線機で、どこかと連絡をしている。何度か取り次いで、この大渋滞の意味がわかったようだ。

 彼は平坦なトーンで、暑さでグロッキーな俺に言う。

 大阪帰りは悪い方向へ行くという、俺の予感が一部だけ当たったらしい。


「この先、草津に自衛軍検問所。さらに瀬田、大津にも軍の検問所。私たちをもう、どんだけ~大阪に返したくないようね~」

「大阪が本気の受け入れ拒否をするとこうなるのかな」

「まっさか~。一介の府知事にそんな権限ないでしょうに。こんなことするのは、もっとお偉いさんよ~」

「大阪に帰れるかな。俺、安心できる場所がどんどん無くなっていく」


 膝を抱えて椅子に座る。つい、俺は弱音を吐いた。

 そもそも論を語り、黒サングラスのナガトは豪快に笑った。ちょっとだけ笑い方が大げさで、彼の親父さん、クモミネ大将に似ている。


「ちょっと拒否されたくらいで凹むのね。そもそもよ、今の日本列島は非常事態宣言下なの。国が倒れる寸前で、私たちが家に帰られる保証はないの。だから、今いる場所で安心しなさい」

「厳しい意見だ。流石、俺より階級上のクモミネ曹長どの」

「いいえ、私も不安なの。イツキ、ホウセン、あなた達の気持ちを受け止め切れていない。上官失格だけど、せめて私がいるところでは泣き言くらい許すわ」

「温泉入りてぇな。いや、琵琶湖にダイブしたい。今、夏だぜ、夏!」


 ナガトが泣き言を許したせいだ。

 俺の精神は閾値に達して、ダムが決壊したようだ。

 流石に、俺の冗談で、ナガトの口はただ苦笑するだけだった。

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