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デイブレイクサーガ  作者: 鬼容章(きもりあきら)
第2章 関西海峡 沈む大阪
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第8話-1 不穏な大阪帰り

 あれから考え事を続けていた俺は、めっきりと口数が減っていた。

 意味が分からない現象に、俺の頭がついて行っていなかったからだ。

 叔父さん、世の中の流れを知り過ぎている。ホウセンに毒されたわけじゃないけど。

 どうして豊川駐屯地に俺がいるって分かったんだろう。

 それに、どうやって交通の便が悪い中、俺の前に現れたんだろうか。

 そして、この日本刀はなぜか懐かしい感覚がする。

 運命を引き寄せた結果だとしたら、俺は何か大事なことを忘れている。


 愛知県内を俺たちの車は移動していた。俺の考え事の間も、当然、時間は進む。

 じれったそうに、ナガトが足踏みをしている。

 渋滞。

 前方で被災民の車の列が止まっている。

 無線機でナガトはどこかと連絡していた。その通信が終わってから、俺は彼に尋ねた。


「どうかした?」

「えぇと、関ケ原インターで軍の検問よ。まぁ、一般感覚では移動制限ね」

「何だか、デジャブする光景だ」

「ふふ。悪夢の再現かしら。イツキは最近、寝てばかりだもの」


 この先、関ケ原インターに自衛軍の検問所が出来ているようだ。それで、どうやら俺たちの車両も足止めになったらしい。

 ナガトは車外に降りるようだ。顔色の悪いホウセンへ声をかけた。


「関所の軍人さんがこっちに来るらしいわ。この先の道をしつこーーーーーく確認してみるわね。ホウセンも外の空気吸いに行きましょう」

「なんやねん。ほな、先輩も行こ?」


 車外へ出る用事に追加した言葉は、オネエ軍人さんであるナガトなりの気配りだろう。

 確かに、ホウセンの思いつめた顔は、すごく気持ち悪そうだ。俺より思いつめて困った顔をしている。

 でも、独りで考え事をしたい俺にも、妹分のホウセンは声をかけた。

 ナガトじゃ役不足かな。流石にちょっと……、俺の心も揺らぐ。

 元々、気が強いフリをする娘だから、素が出ている彼女の状態を見ると、俺も心配になったんだ。

 その直後、なぜかナガトに、俺の気持ちは見透かされた。

 俺は深く考えないで、留守番を受け入れた。一瞬の違和感より、長年の信頼が勝ったからだ。


「さすがに誰かが車に残っていないといけないわ。イツキ、お願いできるかしら」

「あぁ、構わないよ」


 発煙筒を持ったナガト、その後にホウセンが続く。2人が道路上に出て行って、俺は車内に1人きりになった。

 なのに、知らない女性の声が、俺の近くで聞こえた。俺はスマートフォンを取り出したが、全く充電していないので黒い画面だ。


『やぁ、シノノメイツキ君』

「電話……じゃない……か」

『そういうボケはいいから。私の話を聞いてくれ。君は覚醒者であることを忘れていないか』

「覚醒者……って、なんだっけ。で、貴女はどこから話しているんだ?」

『あぁ、申し遅れたね。私はバイオロイドのミズキ。君の十字架さ』

「この十字架、スピーカーでもついているのか?」

『あぁ、もうまたボケた。関西の空気で君は変わったのかい。あぁ、面倒くさい! 強制は好きじゃないけど、同期開始!』


 ミズキと名乗り出した十字架が喚いた。同時に青い光を出す。

 鈍器で殴られた頭痛が俺を襲った。

 痛ッ! 

 俺は両手で頭を押さえた。

 軽い情報から重たい情報まで、一気に頭へ流れてくる。

 違う世界線で、東京を走っていた俺の記憶を、今の俺はランダムに思い出した。


 近未来から現れた青年軍人のキール。

 同じ日に囚われた女性研究員のホウライナツキさん。

 覚醒者、クリーチャーウイルスに適合して超能力を得た者。

 バイオロイド、未来の人工知能。

 俺の親父は研究に溺れて、クリーチャーウイルスを作ったテロリスト。

 そして、叔父さんは瞬間移動できる覚醒者だったのか。

 妹のユウナも、俺も、異能使いで、覚醒者なのかよ。


 今ここにいる俺は、時間の門(ポータル)を超えて、こっちの世界に来た。


『はい、同期解除。前の世界を思い出してくれた? これから私も厄介になるよ。じゃあ、彼らが戻ってきたようだから、私はしばらく黙るね』

「あぁ、また俺は光を見失うところだった……」


 一方的に、俺の記憶を書き換えて、ミズキは物言わぬ十字架に戻った。

 先ほどあった俺の疑問は晴れた。

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