72.勘違いされてる!
「プレアディスこうしゃくさま! くちからほのおをはけるってほんとですか!?」
「こっきょうのちかくで、おおあばれしてたドラゴンをやっつけたときのはなしをきかせてください!」
「どうしたら、こうしゃくさまみたいにつよくなれますか? おしえてください!」
茶会が始まってから、早数分。男児たちはお嬢様方そっちのけで、カトリーヌに質問責めしていた。
興奮で頬を赤らめ、瞳をキラキラと輝かせるその姿は、小学校に突然やって来た芸能人に大はしゃぎのキッズたちだ。弟子入りを懇願している子もいる。
「おかあさま、カトリヌおばちゃまってゴーってできるのっ?」
「うーん、どうかしら……」
娘に期待の眼差しを向けられ、私は答えをはぐらかすので精一杯だった。子供の夢を壊すなんて、私にはできないもの。カトリーヌには少し申し訳ないけど。
「ククク……今ここでブレスを放つこともできるが、加減を誤ればこの王宮を跡形もなく吹き飛ばしかねん。別の機会に見せてやろう」
この義姉、ノリノリである。えっ、まさか本当に吐けたりしないよね……?
「こうしゃくさまのゆうし、たのしみにしてます!」
「ちちうえとははうえもよんでいいですか!?」
人型ゴジラのファンサに、わんぱく坊やたちもテンション爆上がり。少し落ち着こうか。
しかしカトリーヌに夢中になっているのは、彼らだけではなかった。
「カトリーヌさま……もえさかるほのおのようなうつくしさですわ」
「ほおのきずあともすてき……」
「むねのたかなりがとまりませんわ。このきもちはいったい……」
ご令嬢たちもうっとりと頬を紅潮させ、カトリーヌに熱視線を送っている。
義姉の子供人気がすごい。特に女児たちは心の中に百合の花を咲かせようとしている。
マティス伯爵領の子供からも慕われてたものね。その弟であるシラーはクロード以外からめっちゃビビられてたけど。
格式高い合コンのはずが、カトリーヌの飛び入り参加によって完全に趣旨が変わってしまった状況に、母親たちは「こんなはずでは……」と言いたげにティーカップを傾けていた。
「ネージュ、マフィンはもう食べたか? 焼き立てでとっても美味しいぞ」
「わかりましたなの、でんか!」
ラヴォントに勧められて、ネージュが小さなお口でマフィンをぱくりと一口。私も食べてみると、中にベリーの甘露煮がたっぷり詰まっていた。こ、これは随分と手が込んだ一品だわ……!
あっという間に半分食べ終えたところで、母親たちがこちらをじっと凝視していることに気付いた。私食べ方汚かったですか……?
「ネ、ネージュ様は、ラヴォント殿下と随分と仲がよろしいようですわねぇ?」
あっ、違うわ。さっきのやり取りのせいで、何か勘違いされてる。
「うん。ネジュとでんか、とってもなかよしなの! でも、みんなともいっぱいおしゃべりしたいの!」
ネージュはにっこりと微笑んで答えた。前半の発言でその場の空気を凍り付かせてから、後半部分で温める。温度差が激しすぎて整っちゃうわよ……!
「ええ、その子の言う通りだわ。お茶会はみんなで楽しくお話をする場ですもの。どうぞ皆さん、肩の力を抜いて、いつも通りになさってね」
そして再びリラ王太子妃がブリザードを巻き起こす。艶やかな笑顔の下に、「私の茶会を婚活に利用してんじゃねぇぞ、コラ」という本音が隠れている気がしてならない。
少なくとも私たちは、そのつもりで来たわけじゃありませんわよ。
「お、お気遣いありがとうございます。ナイトレイ伯爵夫人には初めてお目にかかりますので、つい緊張してしまって……」
「ええ、私も! 以前からお近付きになりたいと思っていましたの!」
「噂には聞いていましたけど、青薔薇のように美しい方ですわねっ」
夫人たちは急に私と仲良くしたいアピールを始めてきた。打算ありまくりでちやほやされたって、全然嬉しくないんだが~!?




