表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなた方の元に戻るつもりはございません!【書籍化】  作者: 火野村志紀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/86

67.大事件その1

明日、5/10にツギクルブックス様より書籍版二巻目が発売します。

また34話から一部改稿しまして、話の進行と書籍版に合わせました。


「ふわぁぁ~……」


 マティス伯爵一家との戦いを終えた翌朝、私はいつもより早い時間に目を覚ました。ぐぐーっと背伸びをしてカーテンを開くと、雲一つない青空が広がっていた。目覚めスッキリ気分爽快!


「むにゃ……アップルパイおいしいの……」


 おっと部屋を眩しくしちゃうと、ネージュが起きちゃう。私は慌ててカーテンを閉めた。昨日はクロードとたくさん遊んで疲れてるだろうし、もう少し寝かせてあげなくちゃね。


「チュ……?」


 ネージュの枕元でスヤスヤ眠っていたララが、むくっと起き上がる。


「あ、ごめんなさいララ。起こしちゃったわね」

「チュウ!」


 ララは元気よく前脚を上げると、ものすごいスピードで私の肩によじ登った。寝起きだというのに、この俊敏さ。ハムスターの機動力すげぇ……!

 だけど、こんな朝早くに起きても特にやることがない。子供たちのお世話をすることもなくなって、再びニート生活に戻ってしまった。

 本当は、こんなぐうたらライフを送っている場合じゃないのよね。ララ以外にもシャルロッテの魔法でハムちゃんにされちゃった人たちがいる。彼らを元通りにする方法を探さなくちゃいけない。


「チュ? チュウチュウ」


 ララが私の頬をぺちぺちと叩き、ドアの方に顔を向ける。気のせいだろうか、何だか部屋の外が騒がしい気がする。訝しみながらドアを開けると、数人の文官たちが慌ただしく横切って行った。どこからか怒声も聞こえてくる。

 えっ、敵襲でも受けてる? ネージュを起こすべきか迷っていると、カツカツと鋭い靴音を立てながらカトリーヌがこちらに近付いてきた。


「おはようございます、カトリーヌ様。この騒ぎはいったい……」

「マティス伯爵夫妻が何者かによって暗殺された」

「あ、暗殺っ!?」


 爽やかな朝に似つかわしくないワードに、素っ頓狂な声が出た。私が口をあんぐり開けていると、カトリーヌは苦虫を噛み潰したような表情で語り始めた。


「彼らは本日も取り調べを受ける予定になっていた。だが迎えの兵が別荘を訪れると、口から血を流して倒れていたそうだ。既に呼吸も脈も止まっており、その場で死亡が確認された」

「ひぇぇ……」


 まさか昨日の今日で、こんなことになるとは。あまりに衝撃すぎて、言葉が出て来ない。ん? だけど、ちょっと待った。


「あのバカはどうなりましたの?」

「レイオン子息も自室で倒れているのが発見された。……が、奴は奇跡的に命を取り留めた」


 口調とは裏腹に、あまり嬉しそうじゃない。何だったら「あいつも死んでくれればよかったのによ」って顔だ。本心が隠し切れてませんよ、お義姉様。


「三人の傍には、食べかけのパンが落ちていた。鑑定結果はまだ出ていないが、それに毒物が混入されていたと見て間違いないだろう。だが問題は犯人だ」


 カトリーヌは煩わしそうに溜め息をついた。


「伯爵一家に対して恨みを持つ者は大勢いる。領民や騎士団の人間はもちろんのこと、あの家と懇意にしていたがために、社交界から爪弾きにされている貴族も少なくない。容疑者があまりにも多すぎる……」

「……一人いますわよ。有力な容疑者が」

「何?」


 ものすごく思い当たる節がある。私は人差し指を立てながら、声を潜めて言った。


「うちのバカ姉ですわ」

「……なるほど、そういうことか」


 カトリーヌは合点したように頷いた。

 昨夜伯爵一家の別荘には、一人も使用人がいなかったらしい。つまり外部の人間が三人に毒入りのパンを食べさせたことになる。

 いくら腹ペコだったとしても、伯爵夫妻だってそんなものには口を付けないと思う。レイオン? あのバカチンは、何の疑いもなく食べるだろうという熱い信頼があるので除外。

 だが変化魔法が使えるシャルロッテなら、夫妻が信頼している人間に成りすますことも可能だろう。


 そして動機もある。クロードによるとマティス伯爵たちは反乱が起きた時、燃え盛る屋敷の中にうちの姉を残してさっさと逃げたらしい。これには流石に同情するわ。よく生きていたな、姉よ。魔法で芋虫とかネズミに変えて踏み潰すとかじゃなくて、毒で苦しめて殺すところに強い恨みを感じる。


「だから私や尋問官は、王城で奴らの身柄を拘束するべきだと言ったんだ。それなのにあの文官どもが逃亡する恐れはないだろうと帰宅を許可したせいで、こんなことに……オコリーヌ……激オコリーヌ……」


 カトリーヌの背後に、メラメラと燃え盛る炎の幻覚が見える。そりゃこれから本格的に取り調べを始めようって矢先に、みすみす殺されちゃったんだものね。


「むにゃ……おかあしゃま、カトリヌおばちゃま……?」


 話し込んでいるうちに、いつの間にかネージュが起きてしまった。目を擦りながら、私へと近付いて来る。うん、暗い話はこれでおしまい。私はネージュを抱き上げた。


「おはよう、ネージュ」

「うん、おはようにゃの……」


 まだ眠いのか、ふにゃふにゃした声だ。今、にゃのって言った! めっちゃ可愛いんですけど!


「そういうことだ。何か新しい情報が入り次第また知らせに来る」

「ええ、お願いしますわ」


 確かにマティス伯爵家のせいで、たくさんの人が不幸になってしまったけれど、それでも死んでよかったとは思わない。早く犯人が見付かればいいな。

 颯爽と去って行くカトリーヌを見送り、部屋の中に戻る。すると誰かが椅子に座っていた。


「ふふふ、マティス伯爵とその妻が殺されたそうね。天罰が下ったのかしら」


 マジラブ最凶の女がティーカップ片手に、うっすらと目を細める。

 え? リラ王太子妃? 何か人の部屋で優雅に茶しばいてるんですけど……


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
続きお待ちしてます♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ