突然家に押し掛けてきた推しのVtuberが、勝手に居候して配信を始めたんだが、はっきり言って迷惑です!
「ちょ、ちょっと待て! いや、待ってください!」
狭いリビングルームに、俺――長沢 拓海の素っ頓狂な声が木霊した。
俺の視線の先には、一人の少女がいる。
見た感じ、歳は俺より二、三歳若く高校生辺りだろう。
腰まで伸びた長い黒髪と、切れ長の瞳が特徴的な美女だ。
彼女を一言で言い表せばスケバンといったところか。
大股を開き、デリカシーガン無視で座っている姿は、まさしく不良。
履いている花柄のスカートの丈は短く、もう少し足を広げたら、パンツが見えてしまいそうだ。
「うっさいわね。何よ」
面倒くさそうに、美女は顔を上げて聞いてくる。
顔は不機嫌そうで怖いけど、あまり怖くない。
その矛盾は、彼女の声にある。
「どういうことですか!? ここに住むって! ちゃんと説明してください」
「なんで一々オタク君に説明しなきゃいけないわけ? 今をときめく著名Vtuber、“このたん”様が、アンタの家に住んであげるって言ってんの。ウチの前で跪いて、涙を流して喜びなさい?」
「はぁ!?」
こっっっの高飛車女が!
頭に血が上る。
彼女の正体は、今本人が述べたとおりVtuberだ。
キャラクターネームが、蓮見 コノハであるから、“このたん”とニックネームで呼ばれている。
Vtuberというのは、ネットの世界で可愛い声や喋り方を武器に、世のオタク達の魂をかっ攫っていく者達のこと。
彼女はそのVtuberの中でも、有名な部類に入る。
生まれたての子猫が甘えて頬ずりするかのような萌え声に、ハートを射貫かれる男が跡を絶たないのだ。
そして、なぜこんな皮肉めいた説明をしたかというと――俺もその被害者だからである。
つまるところ、今この場にいる“このたん”のファンというわけ。
今考えると、こんなヤツのファンになってしまった自分が愚かすぎて辛い。
「ていうか、自分で自分のこと著名って言うの、ちょー痛いですよ」
「アンタよりは著名だと思うけど? どうせ友達もいなくて、家でずっとゲームしてるんでしょ?」
「……う」
図星で言い返す言葉が見つからない。
そんな俺を見て、このたんは勝ち誇ったようにケラケラと笑った。
「まあとにかく、ウチ今日からオタク君の家に住むから、よろしく☆」
右目の間を挟むように、指でピースサインを作る。
それから彼女は、話はこれで終わりだと言わんばかりに、カーペットの上に寝転がってスマホを弄り始めた。
「あ、ちょっ……と」
反射的に彼女の方へ手を伸ばすが、反論もろともすぐに引っ込めてしまった。
どうせ陰キャのオタク君(失笑)の言葉なんて、聞いてくれないだろう。
ホントに、どうしてこんなことになったんだ……
すっかりSNSに夢中になっている彼女を、ちらりと盗み見る。
スマホの画面には、コメント欄らしきものが表示されていた。
たぶん、さっきの配信中に貰ったコメントだろう。
それを見ながら、にへらにへらと笑っている。
ほんと、顔と声だけは可愛いのになぁ……
マジで、世の中可愛い子がいたら九割くらい性格が破綻している気がする。
スペックを顔面に振りすぎなのだ。
もちろん、これは根も葉もない偏見ではあるが。
そんなことを思いながら、俺はつい数時間前の出来事に思いを馳せた。
2
「あー! 今日も楽しい一日が始まろうとしている!」
ゲーム機を片手に、俺は大きな声で叫んだ。
俺の名は、長沢 拓海。
去年の春、大学進学と同時に上京して一人暮らししている、しがない大学二年生だ。
サブカル好きな父の影響で、幼い頃からアニメや漫画にどっぷりであり、大学生の今でもそれは変わらない。
というか、加速している。
果たして社会人になるまでに、まともな大人になれるか心配だが……まあ、はっきり言って無理だろう。
それに、俺という存在からオタクという個性を取り除くと、何も残らない。
俺にとってオタクというのは、俺という人間を構成する必要最小限の絶対条件なのである。
とにもかくにも、オタク真っ盛りの俺は、隣の部屋に迷惑がかからないくらいの声の大きさで、はしゃぎ回っていた。
窓の外は、俺の気持ちに呼応するかのように、澄み渡った青――ではなく、真っ黒である。
当然だ。
だって、今は金曜日の夜十一時を回った所なんだから。
金曜の夜――つまり、ダルい授業が終わり、休みの日に入る前のテンションは、最高潮に達している。
誰もが、それぞれ浮かれているものだ。
俺の場合、布団に潜り込んで朝までテレビゲームをするというのが、最高のシチュエーションである。
だから今日も、いつものようにテレビの電源をつけ、コントローラーを握りしめて布団の中にダイブする。
コントローラーのスイッチを押して、ゲームを起動する。
テレビのモニターにでかでかと映し出されたタイトルは、ガリオ・カート。
栄養失調なんじゃないかと心配になるくらいガリガリのおじさんが乗るゴーカートを操作して、他のプレイヤーと戦うという、大人気カーアクション対戦ゲームだ。
操作するゴーカートのタイヤやカラーをぽちぽちと変える。
と、そのとき。
ピンポーン。
突然、玄関のインターホンが鳴った。
「はぁ? 誰だよ、こんな時間に」
まず俺の頭に浮かんだのは「?」マークである。
そりゃそうだ。
こんな夜中に、尋ねてくる人間なんているはずがない。
宅配便がこんな時間まで残業してるわけないし、そもそもネット通販で何か頼んだ記憶も無い。
とすると、質の悪い悪戯か。
それとも、今いるアパートの全部屋をピンポンして回る、新手のピンポンダッシュか?
どちらにせよ、非常に迷惑であることに変わりはない。
それに、もし何か悪意ある者の仕業だとしたら、面倒だ。
ここは、ガン無視するのが吉だろう。
俺は、ゲーム機のスティックをカチャカチャと動かし、再びレーシングマシーンの選択に戻る。
ピンポーン。
またインターホンが鳴った。
無視無視。
ピンポーン。
「……。」
ピンポーン。
「…………。」
ピピピピピンポーン。
「だぁああああああああああもうッ!!」
俺は発狂して、ゲーム機をベッドにたたき付けた。
「なんだよさっきから! うっせぇなぁ!?」
真夜中にインターホン連打は、はっきり言って何がしたいのかわからない。
マジで何がしたいんだ。
俺は半ば疑問に思いつつ、もう半分は頭にきつつ、玄関まで歩いて行った。
取っ手に手をかけ、乱暴に扉を開ける。
「誰です? こんな夜中に。迷惑なんですけど」
「やっと出た。遅すぎ」
目の前には、見知らぬ美少女が立っていた。
長い黒髪とややキツい目元が特徴的な、美少女だ。
背丈は、身長が一七〇ある俺の胸元あたりに目線があるから、大体一五五センチくらいだろう。
大人びた見た目の割に、随分と(ずいぶん)小柄だ。
そんな少女が、夏らしく涼しげな格好をして、大きなリュックを背負って立っていたのだ。
「遅すぎって……その前に、どちら様です?」
かなり失礼な人だなと重いながら、問いかける。
しかし、それには答えず、少女は一方的に質問をぶつけてきた。
「アンタさ、蓮見 コノハって知ってる?」
「え? そりゃ知ってますけど……」
「ウチ、その蓮見 コノハだから」
「……は?」
いきなりとんでもないカミングアウトをされ、脳内で理解が追いつかない。
目の前にいる美少女が、あの蓮見 コノハって、マジ?
確かに、声は似てる気がするんだけど……性格がまるで違うような。
そんな俺の疑問を置き去りに、コノハ――通称“このたん”は、更に話を続けた。
「ウチを知ってるってことは、アンタ、オタクくんだね? 丁度良かった。ウチ、これからオタクくんの家に住むから」
「……え? ちょ、……え?」
いきなり一週間先までの夕食の献立を一気に提示されたような衝撃で、状況が一切のみ込めなかった。
このたんが、よくわからない理由で俺の家に居候しようとしている。
その事実に気付いた時には、このたんは既に俺の前から姿を消していて――
ずかずかと無遠慮に、俺の家に侵入していた。
「え……? ちょ、え……? 待ってください!」
「待たない」
勝手にリビングへ上がったコノハは、液晶テレビを見ると、「ふ~ん」と鼻を鳴らした。
「流石オタクくん。いいテレビ持ってんじゃん?」
「は、はぁ……」
しょうもない返事しかできない俺を差し置いて、このたんはリュックを下ろして中を開いた。
パソコンやマイク、3Dに起こした自分の分身――アバターを表示するソフトウェアなど、ありとあらゆる機材を取り出し、ちゃぶ台の上に並べていく。
なるほど。
彼女の正体が蓮見 コノハというのは嘘じゃないらしい。
畳半畳分くらいの小さなちゃぶ台の上に、みっちり機材を並び終えると、このたんは俺の方を振り返った。
「ねぇ、コントローラー貸して?」
「はい?」
「ゲーム機だよゲーム機。ガリオ・カートやってる途中だったんでしょ? さっさと寄越しなよ」
なんだこいつ。
調子乗りやがって。
イライラしつつ、ベッドの上に転がっていたコントローラーを投げ渡した。
「ぅおっと。せんきゅー」
このたんはゲーム機をキャッチすると、手慣れた手つきでキーを操作する。
あっという間に、レーシングカーのカスタムを終えると、スマホを取り出して弄りだした。
カチカチと。
奇抜な色のネイルで彩られた長い爪が、画面を弾く音が響く。
「……あと一分。ギリギリセーフ」
何やら独り言を呟くと、このたんは俺の方を振り返った。
「あー、オタクくんオタクくん。今からウチ、配信するから~」
「静かにしてろってことっすよね? もう勝手にしてください」
俺は、半ばヤケクソになって、そう返した。
聞きたいことやツッコミは山ほどあるが、この人のしたいことが済んでからでいい。
正直――もう、相手すんの疲れた。
そう思っていたから、不意打ちだった。
「はぁ? 何言ってんの? オタクくんも配信に参加するの」
「……は?」
あまりに予想外の返答すぎて、開いた口が塞がらない。
「え? なに? もう一度言って」
「だ~か~ら~、アンタもゲストとして配信に参加すんの。配信中、彼女いたか~とかテキトーに質問するから、ちゃんと答えてよ」
「な、何ですかその公開処刑ッ!?」
「いいでしょそれくらい。答えてよケチ」
ふざけんじゃねぇよ!
そう言おうと思ったが、無駄だった。
「本番まであと五秒だから黙っててね」
いや、人の家に勝手に上がっといて黙れとか、どの口が言ってんだゴラァ!
そして、脳内でキレている内に、とうとう始まってしまった。
△▼△▼△▼
『こんばんこのたん! みんな~元気にしてた?』
幾ばくかトーンを上げた、萌え声が響き渡る。
画面越しにいつも聞いている声だが、生で聞くと流石にテンションが上がる。
こんな、理不尽を寸同鍋で煮詰めたような状況なのに、そんなことを考える辺り――我ながら、V沼にどっぷり浸かってんなぁと思ってしまう。
感慨を抱きながら、このたんのパソコンの画面をちらりと見ると、金髪の女の子のアバターが映った。
くりっとした瞳の色は紅。
髪の毛に紅葉のアクセサリを付け、口元から八重歯が覗く、可愛らしい。
――中の人の中身も、これくらい可愛ければ良かったんだけど。
そんなことを考えつつ、視線を少し横へずらす。
画面の右端には、高速で文字が下から上へ流れていた。
いわゆる、視聴者の“チャット”である。
流石は、Yo!tubeの登録者十万人を抱える大物だ。
目を細めてチャットを覗く。
〈こんばんこのたん!〉
〈ばんわ!〉
〈今日の配信、なんのゲーム?〉
〈お疲れこのたん!〉
〈配信間に合って良かったわー〉
お気楽な文章が、大量に流れていく。
まあ、いつもの光景だ。
俺だって、同じ流れで「こんばんこのたん!」と打っていたのだから。
「今日の配信は、ガリオ・カートぉ~。ぱちぱちぱち~」
〈888888〉
〈8888888888〉
〈おぉ~〉
〈古くね?〉
〈このたんランクどれくらいだっけ?〉
〈一位とるまでやめれまテン?〉
「えぇ~どうしよっかな~、このたん下手だしぃ、一位とれない~」
駄々をこねるかのように、甘い声を出す。
俺ももちろん、このたんのガリオ・カート実況はみたことがある。
上手いか下手かと言われると、たぶん下手だ。
ブーストしすぎてカーブを曲がりきれず、そのままコースアウトしていくことも多い。
〈大丈夫大丈夫、行ける行ける〉
〈俺が付いてる! (^^)/〉
〈きしょいw〉
〈あんなもんノリよ〉
凄まじ勢いで流れていくコメントを見送りながら、このたんはコントローラーのスイッチをガチャガチャと乱暴に動かした。
うわ~、性格出てるよ。出ちゃってるよ。
理想のこのたん像というか、いろいろと今まで浮き足立っていたわけだが。
まさに、それもこの一夜にして崩壊した。
悪夢だった。
――。
その後も、このたんは明け方まで配信を続けた。
配信を視聴していた人数は、大体三〇〇人前後。
もちろん入れ替わりで寝落ちしたり新たに入ってくる人がいたりしたけど、真夜中にぶっ通しで配信して、開始直後からリスナーが殆ど減っていないのは流石と言えよう。
「ふぁ~、なんか眠くなってきちゃった。今日はもうしゅ~りょ~」
明け方の四時を回ったころ、このたんは欠伸を噛み殺しながら言った。
配信コメントには〈え~、まだ続けよ?〉とか、〈あと一試合!〉とか、まだまだ養分が足りていない男達の言葉で賑わっている。
勘弁してくれ、マジで。
俺はベッドの上で俯せになり、このたんを遠巻きに凝視しながら思った。
元々このくらいの時間までは起きているつもりだったけど、家に配信者が凸ってきて、あれよあれよと配信し始めるなどという状況、耐えきれるはずもない。
「えぇ~、いやだ。だってもう、このたん眠いもん♡」
語尾を上げ、あからさまに媚びを売る。
なんというか……うん。
可愛いんだ。
でも、あの性格を見た後だと、イメージが完全に崩れて――
このたんのあざと可愛さに盛り上がっているコメント欄を尻目に、こちらは冷や汗をかくしかない。
と、精神力を削られまくった俺に追い打ちをかけるように、このたんはとんでもないことを言った。
「あ~そうだ。今ね、実はリスナーの家で配信してるの」
は!?
ちょ、ちょっと待て! なんでその話をするんだ!
まさか、俺に頼まれて家に来たなんて、俺をキモ豚に貶めるようなこと言う気じゃ――
「実は~、この前やたらしつこく「会いたいです」ってDMが来てぇ~、それで会いに行ってやったの」
うぉおおおおおおおい!
完全に変な理由ねつ造してるよ!
ほ、他のリスナーの反応は?
恐る恐る配信コメントを見る。
〈は? マジ?〉
〈何それふつーに迷惑行為じゃん。信じられないんだけど〉
〈誰そのキモい奴〉
〈今側にいんの?〉
〈警察に通報案件じゃん〉
〈社会的死亡乙w〉
うわー、完全に白い目で見られてる。
これ、逆にこのたんを名誉毀損罪で訴えられるよね。
そんなことを考えていると、不意にこのたんが目だけこちらを振り返り、にんまりと笑った。
「ちなみに、今ここにそのオタクくんがいるから、呼ぶね」
「……は?」
もう何度目かわからない言葉を発する俺の腕を引っ張り、無理矢理マイクを押しつけた。
「みんな~ちゅ~も~く。今からオタクくんが面白い話しま~す」
は? は?は?はぁっ?
「え、なにその無茶ぶり! 聞いてないんだけど!?」
「わざわざ来てあげたのに、このたんの頼み事も聞いてくれないの……?」
このたんが鼻を啜る音は、たぶんマイクががっつり拾っているだろう。
もちろん演技だ。
なんともまあ、したたかなものである。
俺は呆れつつ、配信画面の方を向いて。
「げっ!?」
思わず声を上げてしまった。
〈うわ、泣かせるとかないわ〉
〈こいつ声なんかおっさんみたいじゃね?〉
〈わかる。使い古したベルトポーチ付けてそう〉
〈自分でこのたん呼んだのに、恥をさらす覚悟もないとかクズに極みw〉
うわぁ、めっちゃ嫌われてる。
てか叩かれてる。
それはそれとして、声おっさんとか言った奴誰だ。特定してやろうか。
「あのー、何か勘違いしてますけど。俺、このたん……さんを家に呼んでないですよ? 勝手に家に来て配信し始めただけで」
俺は、努めて真面目に言った。
そう、俺は何一つ悪くない。悪いのは、このたんの方だ。
だが――
〈この期に及んで言い訳とかありえんわ〉
〈いきなり知らん奴の家に潜り込んで配信するキ◯ガイなんて、いるわけないやん。嘘つくにしても、もっとマシな嘘つけよw〉
〈ねぇ、今どんな気持ち?www〉
〈大人しく警察に連行されろ〉
――ダメだ。
俺は思わず肩を落とす。
反論したいが、とてもできない。
そもそも、本当のことを言ったって信用されるはずがないし、向こうから見れば俺の方が悪者に見える。
なんの前科もないのに狼少年にされるとは思わなかった。
「まぁ~落ち着いてみんな」
不意にこのたんはマイクをひったくり、画面の向こうにいる視聴者に話しかける。
「この社会常識を知らないキモオタくんは、そのうち警察に突き出すから。じゃあ、今日の配信はここまで。ばいちゃ~」
少し無理矢理にも思える挨拶をしたあと、このたんは配信停止ボタンを押した。
その瞬間。
ぷっ。
このたんは口元を押さえ、船を逆さにしたような目つきで俺の方を見ると、愉快そうに言った。
「ざーこざーこ。誰にも信じてもらえてないでやんの」
「その古典的なメスガキ式煽りやめろ」
「あれ~? オタクくん、さっきまで敬語だったのにどうしたの? もしかしてもう打ち解けたつもり?」
「んなわけあるか」
敬語で話すような相手じゃない、絶対。
それこそ敬語に対する冒涜だ。
「それより、配信が済んだんならとっとと帰ってよ。俺もう寝たいし」
「え~?」
すると、このたんは先回りして俺のベッドに潜り込んだ。
「……は?」
「ウチも眠いから、もう寝るね?」
「いや、なんで。ここは俺の――」
「さっき言ったでしょ? これからしばらく泊めて貰うって。ウチさ、昨日親に勘当されて追い出されたから、住むところないんだよね」
あーそれなら仕方ない。……ってなるわけないだろうが!
「さっさと親に土下座して入れて貰いなよ」
「嫌だ」
「子どもか!」
なんとも常識外れな人間で、頭が痛くなってくる。
思わず頭を押さえる俺をちらっと一瞥したこのたんは、笑いを含みつつ言った。
「ま、とにかくそーゆーわけだから。よろしく頼むよ、オ タ ク くん?」
憎たらしげにウインクまでして、そそくさと逃げるように掛け布団を被る。
かくして――この人気Vtuber様は、俺の家で勝手に暮らすこととなったのである。
読んでいただき、ありがとうございました。
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