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第79話 首都への道

「鬼人族の人よ。気をつけていきなされ」


「村長殿、かたじけのう御座る」


 翌朝。村を出て、さらに東へと向かう。


「あの村長さん親切だったわね。私達に念話のイヤリングもくれたし」


「左様で御座るな。寛容なお方であった」


 寛容。そうね余裕があったのでしょう。あんな小さな村であっても日々魔獣に怯える生活ではなかったように思う。だから人にも優しく親切にできるんだわ。このアンデシン国の人々の暮らしを羨ましく思った。


 次の村は、馬なら2日程で着ける山の麓にある村だそうだ。その村でも私達は歓迎された。最初の村でもらった念話のイヤリングをしていることで、同じ村人であるかのように接してくれた。



「これが山越えの道であるか」


 2つ目の村で聞いた山を越える洞窟の道。その入口は人工的に大きく広げられて、魔獣避けの扉が設けてあった。木のかんぬきの鍵がかけられていて、それを開けると、緩やかな下り階段で奥へと向かっている。


 真っ暗な洞窟内。ランプを灯して3頭の馬を引いて奥へと歩いて行く。今は冬至を過ぎた時期だけど、中は温かく歩いて行くうちに上着を脱ぐほどの気温だ。


「遠くに見えた山には雪が積もっていたわ。山頂を越える道だと相当苦労したわね」


「そうであろうな。暗く狭い道だが何人もの人が通っているのであろう、平らで歩きやすい」


 所々、穴が開いていて危険な個所もあるけど、柵が設置してあって安全に進むことができる。真っ暗な穴の中からは水が轟轟と流れる音がしている。地下水だろうけど流量が多いのだろう、もしこの穴に落ちれば助からないことは確実だわ。


 鐘1つも歩けば出口に出られると聞いたけど、その中間ぐらいに明るい場所があった。天井に大きな穴が開いていて青い空が見える。


「こんな場所もあるのね」


 垂直に立ち上がった岩肌の見える壁。テクタイの将軍様がいるお城よりも高そうだ。陽の光が差し込んでいるお陰か、地面には背の高い草や花などが生い茂っている。


「少し休憩しましょうよ」


 馬も草を食べたそうにしているし、私も喉が渇いたわ。近くの岩に腰をおろす。

セイランは辺りを歩いて穴が無いか確かめているようだ。穴があれば水の音がする。ここは静寂だ。地下へと落ち込む穴はないだろう。


「これは魔獣の頭蓋骨であるな」


 げっ! 地表を歩いている魔獣や獣が、上から落ちて命を落としたのね。ここに生えている草はその亡骸を栄養にしているんだわ。静寂で清々しい所だと思っていたけど、ここは魔獣たちの墓場だったのね。


 そこを過ぎ、なおも歩いていくと薄明るい場所に扉があった。やっと出口に到着したようね。かんぬきを外して扉を少しだけ開き、隙間から外の様子を覗う。


 扉を出たとたん魔獣に襲われては目も当てられない。扉のすぐ外は少し開けた平地のようだけど、その先は少し下っていて木が段々に連なっている。


「山の中腹のようね。魔獣はいないみたいよ」


 扉を開けて外に出る。外は明るく眩し過ぎるくらいだわ。


 眼下には広大な森が広がる。右手の方から水の音がすると思ったら遠くに大きな滝が見える。多分地下水が地表に流れ出て、あの滝を作っているのだろう。


「イズルナ。周りを警戒しておいてくれぬか」


 そう言って、セイランはリュックから地図と遠見の魔道具を取り出し遠くを眺めた。遠くの物が近くに見えると言う遠見の魔道具。大将クラスの人しか持っていなくて私も見たことはない。


「あの丘の辺り川沿いに村が見える。イズルナも見てみられよ」


 セイランに魔道具を貸してもらい覗いてみる。確かに遠くの物が近くに見えるわ。セイランが言う丘付近を見てみると、滝から流れ出た川とその横にかすかに村らしき場所が見えた。


「これはすごいわね。あんなに遠いのに確かに集落が見えたわ」


 目で見ると川らしきものは光って見えるが、森の中の村など判別がつかない。


「セイラン、これであの山の頂上も見えるかしら」


 私達が越えようとした山の頂上に魔道具を向けようとすると、セイランに注意された。


「イズルナ。これで太陽を絶対に見ないようにしてくだされ。少しでも太陽を見ると目が焼けて失明しますぞ」


 えっ! これってそんな危険な物だったの。魔道具には危険な物がある。魔弾銃も扱いを間違うと暴発してしまい死人が出る。


「え、ええ。気を付けるわ」


 でも遠見の魔道具で見た山頂の景色は素晴らしかった。雪が積もる尾根。山腹の木々の1本1本が良く見える。新大陸の技術は素晴らしいわね。


 そこから丘を目指して南東方向へと旅を続けて1日半。何とか村に到着できた。

ここでも私達を優しく迎い入れてくれた。ドリュアス族の方々には感謝しかない。


「首都メレシルへは、この川に沿って南へと行けば着ける。今いる川の左側を進みなされ。合流する川も小さく馬で越えられるだろう」


 川の右岸側は、私達が越えてきた山からの大きな川が合流していて、船が無いと渡れないと言っている。私の持ってきた記録にも筏を作って川を越えたと記録されていた。


「それにこちら側は、魔獣も少なく平原も多い。馬で駆ければ早く着けるだろう」


 まだここから4、5日かかりそうだけど魔獣が少ないのは助かるわ。

途中で狩った魔獣のお肉をお礼に渡して村を後にした。ここからの道は村人が言うように楽だった。魔獣の少ない平原も多く休憩できる川もある。馬を走らせ首都へと順調に向かう。


「イズルナ。あの辺りを遠見鏡で見てみよ」


 小さくではあるけど白いお城の塔のような物が見えた。目で見るとかすかに白い点にしか見えないけど、遠見の魔道具なら塔だと分かる。


「あれが首都……。やっと着けたのね」


「しばらくは馬を走らせねばならぬが、後1日と言ったところか。気を抜かぬよう心得てくれ」


 ここまでの旅で魔獣に食われて、馬1頭を失くしている。そうよね。まだ超えないといけない魔の森がある。今見た白い塔を直接この目で見るまでは死んでも死にきれないわね。


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