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第30話 兵士の訓練依頼1

 王国軍から変な依頼が来た。


「兵士の訓練を私達にして欲しいですって」


「そうなんですよ、社長。明後日に魔獣討伐に関する訓練をしてくれと」


 1小隊、8人をこっちに任せるから、魔の森へ行って実地訓練をして欲しいらしい。日は違うけどマルギルさんの何でも屋にも同じ依頼が来ているそうだ。


「ちょっとマルギルさんのとこに行ってくるわ」


 軍の訓練なんて、自分の所の訓練場でするものでしょう。わざわざ私の何でも屋に依頼してくるなんておかしな話だわ。


「マルギルさん、いますか。ちょっと相談したいことがあるんですけど」


「よう、嬢ちゃんじゃないか。どうしたんだ」


「軍から兵士の訓練をしてくれって依頼がきて……」


「その事か。確かに変な依頼なんで、俺のとこでも事情を調べている。まあ、上がりな」


 マルギルさんに言われて、奥の応接室に入って話を聞いた。


「新しく連隊長さんになったのが、どこかの貴族のボンボンらしい。その指示で俺達何でも屋のやり方で訓練しようとしているんだとさ」


「でも、私達と軍のやり方って全然違いますよね。軍の人って大人数で一斉に動いたりしてますし」


「そうなんだよな。軍と一緒に討伐してる俺達を見て興味を持ったのか、ただの気まぐれか。就任したばかりだし、新しい事がしたいと言うだけかもしれん」


 何でも屋はどこも規模が小さいから、大勢で魔獣狩りはしないし馬に乗ったりもしない。私達でどうやって兵士の訓練をすればいいのか分からないわ。


「兵隊さん8人を自由に使っていいらしいぞ。実際に魔獣討伐し、もし怪我してもこちらの責任にはならないと言ってきている」


 倒した魔獣は軍に納めるけど、討伐数に関係なく私達には訓練費用が支払われる。講師二人分という事だけど報酬はすごくいい。


 偉いさんの気まぐれなら今回限りかもしれないし、依頼を受けてみてもいいだろう。


「でも、マルギルさん。8人って多くないですか。私達なら4人で十分ですよね」


「そうだな。軍の最小単位が8人なんだろう。俺も半分に分けて訓練しようと思っている。その方が俺達のやり方に近いからな」


 なるほど、自由にしていいんならその方が良さそうね。


「ありがとうございました。マルギルさん。参考になりました」


「おう、嬢ちゃんとこも頑張んな」



 訓練の当日、軍の馬車がお店まで迎えに来てくれた。私とセイランが乗り込み南門を潜り、魔の森へと向かう。


「メアリィさん。今日はよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしく」


 若い兵士が多いみたいね。鎧を着た兵士と騎士見習い、魔術師と弓使いもいる。


「私は軍のやり方は分からないの。私達のやり方で訓練させてもらうわね。4人1組で2つの班を作ってくれるかしら」


「2班に分けるのですか? 指揮する者は小隊長一人しかいないのですが」


「魔獣を見つけて知らせるのは、後衛の人にしてもらうわ。それを聞いて各自で判断して行動して。前衛が二人なら、横と声をかけあって行動してくれるかしら」


 魔獣と戦うためのパターンは、みんなちゃんと理解しているようだわ。後は自分の役割をしっかりとこなしてもらえれば大丈夫ね。


 現地に到着して、第1班だけで魔獣討伐してもらう。この班は小隊長を含め前衛3人と大型の弓使いが一人だ。


「じゃあ。小隊長さんが後方に位置して指示をお願いするわ」


 小隊長さんは自分の遠見の魔道具で森を見て、魔獣を発見したようだわ。


「右前方、エアウルフ6匹。前衛前へ」


 掛け声とともに兵士が二人、前に出る。後方から小隊長が魔弾銃で攻撃し誘い出している。弓使いが近づく魔獣に矢を放つ。こんな大型弓だと、あんな遠くても届くのね。魔弾と矢で2匹を倒せたみたい。


「ネイトは右を狙え」


 小隊長が弓使いに指示して、少し前方に出て中間位置から魔法攻撃をする。前衛が抑えている間に倒そうとしてるけど、1匹の魔獣が左から後ろに回り込もうと走り出した。


 小隊長が魔弾を撃ったけど外れてしまった。


「なにしてるのよ!」


 私が叫ぶ前にセイランが前に走り、前衛のカバーに回ろうとする。私が水魔法で迂回しようとした魔獣に魔法攻撃をする。セイランの働きもあり全ての魔獣を倒せたようだ。


「すまなかった。メアリィさん」


 小隊長が謝ってきた。


「あなたじゃ、ないわよ。そこの弓使い! なんで魔獣が横に走った時に攻撃しなかったのよ」


「じ、自分は右の魔獣を攻撃していて……」


「バッカじゃないの! 1匹が単独になったら、そいつに集中して攻撃するのがセオリーでしょう。ちゃんと反応しなさい。後ろを取られたら前衛が怪我するのよ」


 私の剣幕に押されて、弓使いがタジタジになっているけど、次はちゃんとしなさいよね。


「次は、第2班よ。前に出て」


 この班は指揮する者がいないと言っていた。魔術師が二人いるから魔力が小さいひとりに遠見の魔道具を渡して監視させる。


「あなたが魔獣を見つけて、みんなに知らせるのよ」


 前衛2人はベテランのようだ。自分達の判断で戦闘をしてもらおう。


「左の奥の方にサラマンダーが3匹います」


 炎を吐く大トカゲ。こいつは平原に出さずに森ぎりぎりで戦うようね。いい判断だわ。全体が前進して魔獣と対峙する。監視をしていた魔術師が牽制の魔法を放ち前衛の位置に誘導する。


「左に2。右に1」


 二手に分かれたようね。サラマンダーが強烈な炎を前衛の兵士に放ってるけど、さすがベテランね。木の陰に隠れたり、盾で魔法を防ぎながら接近しているわ。

このサラマンダーは炎を吐いている間は動きが止まる。魔術師が氷の槍を2匹のサラマンダーに打ち込む。


「なかなかやるわね」


 2匹を倒して、あとは1匹だけね。すると監視をしていた魔術師が叫ぶ。


「右から牛の魔獣が1匹走ってきます!」


 前衛の一人が抑えようと盾を構えて立ち塞がる。それを見た魔獣が進路を変えてその前衛に向かって走って来た。あの大きな牛の魔獣は2人でも抑えることはできないはず。


「あなた達が頼りよ。全力で牛の魔獣を倒しなさい」


 魔術師に声をかける。監視をしていた魔術師も攻撃に加わり、中級魔法を叩きつける。

狙いすました魔法が当たり、牛の魔獣はもんどりうって倒れ、前衛の兵士が止めを差す。


 前衛の一人が囮になって、牛魔獣を誘導してくれたのね。いい連携だわ。

残っていたもう1匹のサラマンダーも倒せたようね。


「もう魔獣は居ないようです。遠見の魔道具ありがとうございました。これ、すごく良く見えますね」


 これはユイトが持っている最高級品だからね。


 その後も、班別に訓練して今日の訓練を終えた。兵士達はクタクタに疲れているようだけど上々の成果じゃない。

牛の魔獣の肉を少し分けてもらうことができた。ユイト達にいいお土産ができたわ。


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