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第17話 何でも屋に来たセイラン

 セイランが今日からお店の手伝いをしてくれるようになった。体力があるから石垣の補修工事もできる。下水道の掃除も嫌がらずにしてくれた。今まで人手が足りず、後回しになっていた依頼を片付けていく。


「ありがとう、セイラン。明日は軍と共同で魔獣の討伐をするの。期待しているわよ」


「ああ、任せておけ。祖国でも魔獣退治は得意だったからな」


「ユイト。あんたも頑張りなさいよ」


「うん。ボクも強くなったところを見せるよ」


「そういえば、セイランの防具って変わっているわね。鬼人族の防具なの」


「鬼人族全てという訳ではないが、拙者のは動き易さを優先している鎧だな。大将はもっと防御力の高い兜と鎧を着ている」


 確かにフルプレートに比べると隙間が多いけど、軽鎧という訳でもない。肩当ての部分を見せてもらったけど、一枚の鉄板を加工しているんじゃなくて、細い鉄板を紐で縫って組み合わせているのね。この紐にも火に対する耐性があって、少々の魔法攻撃でも燃えないそうだ。


「凝った造りの鎧ね。この肩当ても少し大きいけど動き易そうだし、確か腰のあたりの鎧も膝上までしか無くて、ミニスカートのようだったわね」


「切れ込みが入っていて、走りやすくなっているぞ。脇の部分も開いておるから、刀なども振りやすいしな」


 そういえば横から見たら、胸の部分の肌が見えていた気がするわね。動き易いとはいえあれでいいのかしら。でもそれが鬼人族の戦闘衣装だという。


「セイランは前衛なんだから、注意して怪我しないように戦ってね」


「承知した」


 ユイトもセイランも住み込みで働いてもらっているから、夕食などで仕事の打ち合わせができる。

こういうのもいいわね。チームというか、気心知れた仲間と一緒に仕事できるなんて理想の職場だわ。


 翌日、予定通り軍と共同で魔獣討伐をする。こういう場合、大概一区画を割り当てられ、その森にいる魔獣を私達の何でも屋だけで倒していく事になる。一緒に訓練していない軍の人達とは連携が取れないから仕方ないんだけど。


「じゃあ、セイランとユイトが前衛でお願いね」


「任せておけ」


「分かったよ。じゃあ行こうか」


 魔の森の前に来て、監視しているとフェンリルウルフの群れを見つけた。大型のオオカミの魔獣で水魔法を操ってくる。

魔法で平原に誘導して、ばらけた個体を集中して順次倒していくのがセオリーだ。


 私が森に向かって魔法を撃ったとたん、セイランがガチャガチャと鎧を鳴らしながら、すごい勢いで走り出した。


「セイラン! 前に出すぎよ。ユイト、サポートして」


 ユイトにももっと前に出てもらう。私も前進してセイランを助けないと。

森の近くまで行ったセイランは、フェンリルウルフに囲まれて細長い剣で戦っている。


「ユイト。私たちは右側を倒すわよ」


 ユイトは魔弾銃で、私は魔法でセイランから少し離れた魔獣を倒しにかかる。セイランは魔獣と乱戦になっているから、ここから攻撃すると同士討ちになってしまう。


 だけどセイランは5匹の魔獣を相手に、一歩も引かずに剣だけで魔獣を倒していく。すごい動きだわ。走り回りながら牙を躱し剣で魔法を切り裂いている。


「何なの、あの子は……」


 こちらもフェンリルウルフを後ろに回り込ませないように、魔法で牽制しながら、単独になった魔獣に集中して攻撃する。ユイトも盾で魔法を防ぎながら、私の魔法に合わせて攻撃している。


 結局セイランが5匹、私達が3匹を倒して群れを全滅させた。


「セイラン! なんで魔獣の群れに向かって突っ込んでいくのよ」


「あれが、拙者達の戦い方だ。何か不都合はあるのか」


「一人で戦っちゃダメでしょう。ほらこんなに怪我してるじゃない」


「この程度は、怪我のうちに入らないぞ。お陰で全ての魔獣を倒せたではないか」


 セイランは笑顔で答えているけど、こちらは肝が縮み上がったわよ。


「確かに倒せたけど。もう、あんな無茶はしないでちょうだい」


 ユイトに魔獣の後始末を頼んでおいて、セイランの怪我の手当をする。

腕や足、顔にまで怪我をして血が出ている。


「あなたも、女の子なんだから、顔にまで傷をつけちゃだめでしょ」


「そうなのか。相済まなかった」


 危険な仕事ではあるけど、怪我をしていい訳じゃない。鬼人族とやり方は違うかもしれないけど、怪我をしない方法で戦って欲しい。


 その後は森から出てきた大イノシシなどの獣を倒して今日の討伐は終了となった。


「それにしてもセイランの動きはすごかったよね。あんな細い剣で折れもしないで5匹も魔獣を倒すなんて」


「ユイト殿。これは刀と言って、刀鍛冶が丹精込めて鍛え上げてくれた逸品だ。拙者の相棒だな」


「そんなすごい剣なんだね。だから魔獣の切り口もあんなに綺麗な切り口だったんだ」


「セイラン。よく切れる剣を持っていても、あんな無茶はもうダメよ。今度からはユイトと同じように魔弾銃を使った戦い方をしてもらうわ」


「今日ユイト殿が使っていた物だな。国元で使っている物と形が違うようであったが、拙者にも使えるのか」


 ユイトも最近やっと魔弾銃の扱いに慣れてきて戦えるようになってきた。セイランでもすぐ使えるわ。


「魔弾銃の扱いや戦い方は、お店に帰ってから教えるわね」


「すまぬな、メアリィ殿。よろしく頼む」


 まあ、こういう所は素直で助かるわ。とにかく怪我をしない様な戦い方を教えないとね。


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