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氷結世界ノアラストル  作者: クオ村 往人
二章 ーー 自由を叫べよ
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7ー二度寝できねぇ

『今朝のニュースをお伝えします。昨日の深夜0:13頃、セントラル特別商業区第二区エリアBにて、爆破テロが発生しました。』


今は朝の7:30。テロがあったのは昨日の夜のことだ。というのは、テレビのニュース番組から言ってもらわなくても分かっている。何故なら、彼はその時現場にいたからだ。第二区の治安維持隊隊長として、テロを起こした反逆者の対処にあたっていたのだ。


「まぁでもしかし、2時間しか寝れて無いのは流石に勘弁だわ。」


ざらざらな髭を生やした中年の男性が、部屋着で大きな欠伸をした。巨大な窓から陽光が暖かく彼を迎え入れている。

しかし、朝なのだが、今日はガラス越しにもわかるほどのさんさん照りで、ランニングでもするのには絶好の天気なのだが、今朝の彼は、二度寝を固く決意している。


昨夜は頑張って働いたんだ。今日は昼まで働いてやるものか。その覚悟で、スッとベッドに潜り込んだ。が。


「へーい、邪魔するよー。バルキン。」


ガチャリと部屋のドアが開く音がする。嘘だ。鍵はかけたはず…。


いや待て。かけてない。昨日疲れて、着替えて、そのままBED DIVEして寝てたわ。


何ということだ。来訪者だ。


仮にも治安維持隊の隊長であるバルキン・バックスが部屋着で、ベッドに、おねむの赤ん坊の如く、横たわっているんだぞ。しかも出勤時間だってのに二度寝しようとしてんのバレるのは色々まずい。後で「バイタルチェックに引っかかったから、検診した」って言い訳が使えなくなる。それに、俺が愛用しているアヒル柄の寝巻きを見られるわけにはいかない。文にして並べると、威厳もへったくれも無いじゃないか。冗談じゃない。


「んー。あれ…いないのか?」


…ベッドに潜り込んでいるおかげか、来訪者はどうやら気づいていない。このまま帰れ。というか帰ってくれ。頼む。マジで。


「なーんてね。」

お布団が無慈悲にも勢いよく捲られ、宙を舞う。最悪だ。


「うわあああああああああああああやめらああああああああああああああああああああ」


「なんだよその叫び声。面白いな。まあいいから落ち着けって。」


言われた通り落ち着いて来訪者をよく見ると、気怠げなまぶた、ひん曲がった猫背、それに袖の片方の欠けた白衣のだらしのない身なりの男。


「…なんだよぉ……。アルフかぁ…。」


彼、アルフィディオ・エッガーの顔を見て安心した。彼はバルキンの古くからの親友であり、仕事への愚痴とか、青春時代の恋愛事情なんかを隔てなく話せる仲だ。


「お前が朝弱いの知ってるからな。こうだろうと思った。しかも昨夜は仕事だったそうじゃないか?」


「ああ。お陰様で2時間しか寝れてねぇ。」


「はは。そいつはお疲れさん。」

からかうように笑ってくるのも、親友だと分かった今じゃなんだか安心できた。


さて、アルフィディオは研究職だ。親友とはいえ、ただで治安維持隊隊長の元へ来るはずがない。


「で?何のようだ?」

バルキンは、床に突っ伏した布団を拾い上げてベッドに押し広げ、整えた。


「ああ。」

アルフは懐から出した二つ折りの紙を広げた。何かの資料か。


「お前から依頼されていたやつだ。昨夜のテロを起こした反乱分子達のコード、分かったぞ。」


「…どうだったんだ。」


その話題が出た瞬間、彼の目つきは寝起きのそれではなくなっていた。どうやら彼は今日、二度寝出来そうにないようだ。

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