146 ☆櫂斗視点☆
あれから1時間が経った頃・・・。
「愛野さんこっちです」とおじさんが言った。
あの人達が紗羅の本当の両親か・・・。
出来るなら、こんな形で会いたくはなかった・・・。
「渋谷さん・・・。紗羅の容態はどうなんですか?」
「今手術中で分かりません・・・」
「そうですか・・・」
「紗羅ちゃんどうして・・・こんなことになっちゃったの・・・」と泣きながら言う紗羅の実の母親。
「すいません・・・僕のせいです・・・」
「君は・・・紗羅とお付き合いしている子かね?」
「はい。岡田櫂斗と言います」
「あなたが紗羅ちゃんの彼氏なのね」と少し微笑みながら言う母親。
「すいません・・・僕が悪いんです。紗羅は僕を庇ったせいであんなことに・・・。本当にすみません・・・」と言い俺は頭を下げた。
「頭を上げてくれ。君が悪いんじゃない。紗羅はきっと君のことが大好きだったんだろう・・・そうじゃなかったら、ここまではしないだろうから」
「そうだわ。紗羅ちゃん櫂斗君の話してた時、すっごく良い顔してたもの。櫂斗君のせいではないわ」
「ありがとうございます・・・」
なんでこの人達は俺を責めないんだ?
なんでこんなに優しくしてくれる?
普通なら怒鳴られて当然なのに・・・。
「そのかわり・・・紗羅ちゃんが目覚めたらおかえりって言ってあげて。紗羅ちゃん喜ぶから。ねっ♪」
「はい・・・」
それから数時間が経った・・・。
手術室から紗羅が出て来た。
「先生紗羅は?」と紗羅の父親は先生に聞いた。
「一命は取り留めました。ですが・・・」
「なんですか?」
「頭を強く打っていて、植物状態になる可能性があります・・・」
「そうですか・・・。生きているだけでいいので、ありがとうございました」
「では失礼します」
今なんて言った?
紗羅が植物状態?
嘘だよな?
誰か嘘って言ってくれ!!!
「ご家族の方、娘さんは特別室に入る事になりました。ご案内しますのでどうぞ」と看護士が言った。
「はい。櫂斗君も一緒に来なさい」と父親が言う。
「いいんだよ。紗羅も君が近くにいた方が心強いだろう」
「ありがとうございます」
そして特別室に向かった。
「こちらがお部屋です」と看護士が言う。
ここが特別室か・・・。
さすが金持ちだな・・・。
そして部屋に入り紗羅の元へ行った。
痛々しい紗羅の姿がそこにあった・・・。
頭全体には包帯が巻かれていて、人工呼吸器が取り付けられていた・・・。
紗羅・・・こんな姿になって・・・ごめんな・・・痛かったよな?
俺のせいでごめん紗羅・・・。
そうだ・・・。七瀬にも連絡しないと・・・。