これは小説でもなんでもない。
イチ
遡って遡ってたどり着いた最も古い記憶。
2歳の頃でした。
共働きの両親は治安が悪く安い保育園に私を閉じ込めた。別に恨んでなどいません。
そのときの私は、天然パーマで不細工で最年少で途中入園でしたから周りの子には不審者のように映っていたのでしょう。私とお話ししてくれる人はいませんでした、ある少女を除いて。
その少女は実に中性的で、美しかったことを覚えています。
すらりと長身で、直毛の短髪で、目鼻立ちは整っていました。
入園したての私にじわりじわりと寄ってきてにやりと笑ました。
私は「この人は私と仲良くしてくれる」
なんて思いました。
その通り、翌日から少女は私を構いました。
しかし、日が経つにつれ、少女は私を殴ったり蹴ったりして遊びました。
私は痛かったけれど、他の子に無視されるより随分とマシでした。先生に告発するとこの子は私を構わないんじゃないかと思って黙っていました。
それでも人間の身体は脆いもので、ある日、殴られた拍子に滑り、足から血が出ました。
園児を放ったらからしにしていた先生もそれには気付き、何があったか瞬時に把握しました。
この先生は怠惰でありますが、頭は冴えているのです。
そして私が恐れていたことになりました。
少女には厳しいお叱りを、私には可愛い絆創膏を与えたのです。
私は、泣いている少女を見て、もう居場所はないのだろうかと不安になりましたが、それは杞憂で、次の日からは先生の見えない園庭で強く暴行を受けました。
でも今までの私とは違って、私は目立つ傷ができるまで殴らせ、先生に自分から告白しました。
そうです。私は社会的に勝つことに酔いしれました。先生が怒鳴るたび溢れる少女の涙を眺めるのが好きでした。
先生に初めて絆創膏をもらった日から数日、家に帰ると母は申し訳なさそうに「明日からは違うお友達と遊ぼうね」と言いました。
私は透かして見られている心地でした。
だって、一度も謝罪の言葉は出てこなかったから。