第19話 ゾンビ課長はドリー(羊)の夢を見るか
登場人物
課長 第二企画室開発部研究課 責任者 単身赴任中
沢渡 第二企画室開発部課長対策係課長代理
平 同研究員 補佐
折田 同研究員 主査 広報担当(営業部より転属)
市城 同研究員 主査 事務担当(経理部より転属)
1 沢渡「誘導?結果的にそうなったけど本意は違うよ。」
2 折田「寿司屋で室長に何言ったの。」
3 沢渡「今回の件に関わらせてくれって。」
4 市城「それだけ?」
5 平「何だかんだ言っても課長に責任感じたか?」
6 沢渡「責任てなんの?自分の身を案じたんだよ。」
7 平「どゆこと?」
8 沢渡「下請けとか海外に出向とかあり得るなって。」
9 折田「異動?どうして?」
10 沢渡「前にも言ったけど口封じだよ。」
「守秘義務契約で脅してポイ。」
11 平「考え過ぎじゃね?」
12 沢渡「かもな。
「だから異動願い出したかったら出していいよ。」
13 平「俺は今のままでいいや。面白いし。」
14 市城「僕もしばらくここでいいかな。」
15 沢渡「折田は営業戻りたかったら届け出してみ。」
「戻れるかどうか判らなけど。私は承認するよ。」
16 折田「そうだなー。この部署楽しいけど」
「仕事しているって感じじゃ無いからなー。」
17 平「なんだと?俺は滅茶苦茶仕事してる感あるぞ。」
18 市城「結局座ったのかな?」
19 沢渡「課長?どうかな。立ったままじゃない?」
20 折田「疲れたりしないのかな。」
21 平「俺らが見ている限りじゃ立ちっぱなしだよなー。」
22 沢渡「身体が疲労を訴えても脳が受け付けないとか。」
23 折田「自律神経が機能していないって事?」
24 沢渡「ちょっと違う。課長の自律神経は」
「全部じゃないかもだけど活動している。」
「気がする。」
25 折田「根拠は?」
26 沢渡「今回の場合で言うと、」
「立ちっぱなしでしばらくいると疲れるのは」
「細胞の酸素消費が増えると同時に」
「活性酸素が増えて細胞に負荷がかかる。」
「自律神経てのははそれに応じて」
「呼吸を調整したり」
「活性酸素の分解酵素を作るわけだ。」
「で、これ以上負荷をかけるな。て信号を脳に送って」
「それを疲労と感じる。」
27 折田「結構なプロセスだな。」
28 沢渡「だからこそおかしい。」
「本来脳と自律神経は同期している筈なんだ。」
29 平「面白そうな話になってきたな。」
30 沢渡「最初は一方通行だと思ったわけ。」
31 市城「脳から信号は行くけど体が受け付けない的な?」
32 沢渡「うん。でも食事を与えると食べるってのは」
「身体が空腹を訴えるからだよなって。」
33 平「ただの習慣じゃね?」
34 折田「条件反射的な。」
35 平「でもさー感じなくても疲れてはいるはずだろ?」
「そのうち足がぶっ壊れるんじゃね?」」
36 沢渡「私もそう思う。」
「ゾンビなんて締め出すか閉じ込めれば」
「とっととくたばる筈なんだよ。」
37 市城「活動限界早そうだよね。」
38 折田「座らない寝ない。で」
「疲れを感じるとか以前に壊れるのか。」
39 沢渡「でも目の前のコイツはずっとこんな感じ。」
40 平「日によってアレだけど結構ウロウロしてるよな。」
41 市城「不思議に思っていたけど、転ばないんだよね。」
42 折田「そういやそうだな。」
「壁にぶつかってはいるけど転ばないな。」
43 平「転んだら起き上がれるかな?」
44 沢渡「試したいよなー。」
45 平「試したーいっ課長代理っ室長に」
46 沢渡「さすがに怒られるわ。」
47 折田「アルツハイマー的な症状に似てない?」
48 平「俗に言うアルツハイマーは」
「脳の萎縮によっておきる認知機能障害だぞ。」
49 市城「詳しいの?」
50 平「ばあちゃんがそうだったからな。」
「俺はそれを治したくて医学の道を志した。」
51 沢渡「医者になれよ。」
52 平「そんなに優秀ではないっ。」
53 折田「開き直ったなー。それで?」
54 平「それでってそれだけだけど。」
55 折田「ロメロのゾンビ連中は確かに似てるけど」
「以降派生した連中は動き速いの多いよな。」
56 沢渡「凶暴性が増したのは」
「理性が吹っ飛んだからだって設定らしいよ。」
57 市城「それもおかしな話だよね。」
「人間が獣になったとしても凶暴とは限らないよね。」
58 平「獣になったらもっと臆病な生き物になりそう。」
59 沢渡「萎縮かどうかは判らないけど」
「脳に機能障害はあるだろう。」
60 平「アルツハイマーと言うより」
「パーキンソン病に近いかなとは思った。」
61 沢渡「それも考えられる。脳そのものじゃなくて」
「ドーパミンとかの伝達物質の異常とかな。」
62 平「な。症状的にも認知障害とか」
「睡眠障害も精神状態不安定もあるから。」
63 折田「ああそうか。」
64 平「どうした。」
65 折田「元々は遺体が蘇るのがゾンビなんだよな。」
66 沢渡「映画のゾンビはそうだな。」
「発祥はブードゥだ。それと映画のゾンビも」
「初期は人を襲わないし感染もしない。」
67 折田「そうなの?」
68 沢渡「それで蘇ったからなんだって?」
69 折田「俺の知っているダッシュゾンビって」
「元遺体じゃなくて感染物が多いんだなって。」
70 平「それで?」
71 折田「だからさ」
「課長はゾンビじゃ無くて感染者なんだなって。」
72 平「一度死んでたらどのみちゾンビじゃね?」
73 折田「ゾンビ的症状が出るウィルスの感染者扱い?」
74 平「ガラス張りにオムツ姿で晒し者の感染者。」
75 市城「椅子に座らせようとしているって事は」
「人が中に入っても襲わないのかな。」
76 沢渡「少なくともガラスのこっち側から姿見せても」
「興奮はしていないようだけど。」
77 平「どうかなー課長ムッツリさんかもなー。」
「もしくは沢渡に」
78 沢渡「あ?」
79 平「いや人を見ても食欲沸かないタイプなのかもな。」
80 折田「本来なら隔離病棟で個室で管理だよな。」
81 沢渡「そのあたりは前も言ったけど」
「会社として従業員に対する責任だろ。」
82 折田「責任って。何だったらか」
83 市城「折田君っ今夜飲みに行こうよ。」
84 沢渡「まああれだ。クソ野郎とは言えここの社員だから。」
85 平「だな。ムッツリエロ野郎だとしても課長は課長だ。」
86 折田「何だよ急に。あっ判った。行くよ。」
87 沢渡「それにだ。もし課長が」
「何かしらのウィルスに感染したのだとしても」
「課長の血液採取してワクチン作れるかもしれない。」
「他でこの症状が出ている人がいないなんて」
「言い切れないじゃないか。」
88 折田「怖いよ沢渡。」
89 市城「不吉な事言わないで。」
90 平「課長たくさんいるの?街に溢れているの?」




