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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第三章拓編・後半戦
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「調達」1

「調達」1



雨の香港。

拓たちの大作戦が始まる!

ディズニーランドのホテルに侵入する拓と時宗と姜。

だがここだけでは足りない。やはり園内に行くしかない!

しかし園内のALは1万ちかく! 全面戦争になれば勝ち目はないが?

***


 香港 ペニー湾。


 この日は早朝から香港全域に雨が降っていた。

 自然街は静かだった。

 ALの活動も鈍くなった。



 そして……拓たちの活動が始まった。




「案ずるより産むが易し……ってことだな」


 時宗は笑いながら地下倉庫の中を歩く。


 ここは園内にあるホテル・ハリウッドのホテル用の食料備蓄倉庫だ。米や小麦、乾麺、干物、缶詰などが山のように積まれている。


 拓は棚に積まれている食料を確認しながら歩いている。


「雨天様々だ。だけどここだけじゃあどうにもならない。まだ他所を見回らなきゃいけないし、90食分は必要だしな」


 9人分。一日2食で5日分。相当な量だ。米を主食として副食を一品だとしても缶詰90個だ。大鍋で雑炊や粥を炊くなら、もう少し量が少なくてもいい。


「米や乾麺はここで手に入る。缶詰は肉や魚や果物を持っていこう。野菜系は後回しだ。できるだけ調理不要で食べられるものを選ぼう」

「業務用の大きな缶詰ばかりだ。ここだけで2便は出せそうだ」

「ホテルの倉庫だったらもっとあってもよさそうだが」


 米の袋を台車に乗せながら姜が呟く。業務用の食糧倉庫だから備蓄してある食材も全て大きい。


「レストランが上に三つくらいある。そっちにいけばもっとありそうだけど、冷凍庫はダメだろう、肉も魚も野菜もとっくに腐っているし、セキュリティーがあって入れないかもしれない」


 拓も台車に魚の水煮の缶詰を乗せる。これだけでも2kgある。


「単純計算で……諸々300kgくらいは運びたいな」

「マジか」

「9人いるんだぞ? 足りないくらいだよ」

「そう……だな。うへぇ~、大変だぜ」

「ホテルのロビーに運んで、一先ず二往復してそこに貯める。外に出るのは危険だ。最後は優美も呼んでピストンで船に運ぼう。そのほうが無駄はないし危険も少ないし濡れない」

「外に出るのはリスクあるからな」


 今のところ順調だが、それでもALとの戦闘が全くなかったわけではない。


 拓たちの作戦は朝から始まったが、最初に動いた優美と篤志は激しい戦闘があった。もっとも二人はボートの海上からで、陽動のため正面入口周辺にいたALを襲撃した。ALはすぐに反応して大勢集まったが、海があり優美や篤志を攻撃はできない。それでも200から300は集まっていただろう。

 二人はそのうち140ちょっとほどを倒した。


 その隙に拓たちが正面入口の反対側にあるパークの境界である川から上陸し、一番近くにあったハリウッドホテルに入った。運良くすぐに無人の小屋と正面ロビーすぐに地下への道を見つけたので、優美は小屋で待機し、拓たちはロビーから地下に侵入した。


 地下にはいないと思ったが、どこから入ったのかALは地下通路にもいた。

 ただ数は多くなく、最初に掃討して安全を確保した。もっとも地下通路は細かく区分けされていて、どこに大量のALが潜んでいるか分からないから油断はできない。


 地上は雨のため、ALたちは大きなゼリー状の塊になっている。この状態からいつもの戦闘状態になるのには時間がかかる。ただ数が多いのには閉口した。この園内だけで2000から3000はいる。いや、もっといるかもしれない。これは眠れる獅子だ。けして目覚めさせてはいけない。


 最初の台車に米や業務用缶詰を積み込んだところで、拓がスマホを取り出した。電話ではなく無線機の機能を使う。他の安物のトランシーバーよりJOLJUカスタムの無線機のほうが遥かに高性能だ。



「優美。聞こえるか? そっちはどうだ?」

『拓? 私のほうは大丈夫かな。篤志君が今東のホテルの桟橋のほうでALを引き寄せてくれているからこっちは静かだわ。そっちは?』

「今ホテルの保管庫だ。米と麺と魚とトウモロコシの水煮缶詰は手に入れた。少なくとも米だけは日数分以上手に入った。一度ロビーに置きにいく。もし優美のほうで運べそうならちょっとずつでいいから運んで漁船に積み込んでくれ。台車二台分あるからな。でも無理はしなくていい。そこにALが集まっても困るし」

『OK。雨が今きつくなってきたから出来ると思う。どしゃぶりじゃないけど。私は今ホテルの庭にある小屋にいるから濡れてないわ』

「風邪に気をつけろよ」


 拓は無線通信を切り、スマホをポケットに戻した。


 ちなみにこの拓のスマホは、元々は市販品だが、JOLJUが少し改良したおかげか、完全防水で、無線機能もある。



「てことで、食料を上に運ぼう。台車は俺が押すから、時宗は米袋をもう一つ背負ってくれ。姜、アンタは先頭で先導とALの警戒を」


 すぐに行動に移る。

 台車を押す拓が真ん中で、姜と時宗が前後を挟む形だ。


「五日くらいならば米だけでもなんとかなるだろう? 食料は」

 と姜。米だけは合計60kg手に入れた。


「そりゃあ、米と漬物と味噌汁と醤油があれば五日くらいなんとかなるけど、江戸時代だぜ、それだと」と時宗。

「元々日本の食生活だって江戸時代みたいなもんだろ?」と拓。

「まともなモノが腹いっぱい食いてぇーな」

「危険を冒かすよりはいいだろう?」

「素人の航海だ。何が起こるか分からないし台湾で手に入らなかったら詰みだ。燃料があるなら、できれば一気に日本領土に行きたいんだ」


 故郷だからという理由ではない。

 日本国内だが沖縄県は日本臨時政府の管轄圏外だ。

 この<香港>のように生存者が無政府状態で牛耳っている可能性は十分考えられる。

 しかし日本であれば、少なくとも脅威となる凶悪な武装集団は考えられない。単純に武器がないからだ。



「それに杏菜ちゃんもいる。部屋で隔離しているとはいえ一緒の船にいる以上感染の危険はある。体力の低下が感染リスクに繋がる。食事は大事だよ。米だけだと脚気や壊血病の危険もあるし」


 拓たちも<新世界>を出てからほとんど野菜を食べていない。腹いっぱい食べられた日もほとんどない。その上この雨天の強行軍だ。風邪が怖い。予防には体力を保つしかない。


 それに食料を大量に手に入れられる機会はそうそうない。



「まだレストランエリアもホテルエリアもショップも残っている。無理はしないが、時間はまだある。やれるだけはやろう」


 今いる海側は大きなホテルが並んでいるホテルエリアだ。ホテルには食料が多いのだが、他二箇所のホテル周辺はALが多く諦めた。そしてホテルは防犯システムが強固で入れない箇所も多い。東側の桟橋は優美と篤志が陽動を行いALが集まっているから余計だ。


 結局、香港ディズニーランド内での調達となる。



「夢の国よ、我らに幸あれっ……てか」


 時宗も姜も異論はない。


「次はできるだけ副食系。後は菓子類や炭酸系ジュースだな。ポテトチップス一袋で最悪一食にできるし炭酸系ジュースなら飲める」

「腹いっぱい食うんじゃねーの? 菓子で腹膨れる?」

「菓子は腐らないからな。備蓄してあるだろう。地上に上がって土産屋にいけばキャンディーやスナック菓子は大量にあるはずだ」

「どっちにしても、明日は筋肉痛だな、こりゃ」


 米袋10kgの入ったリュックを背負い直しながら時宗は呟く。銃火器も入れれば20kg。姜は荷物を持たない代わりに銃を沢山持っている。


 簡単ではない。園内は広いのだ。


 そして地上には沢山のALが蠢いている。今度は戦闘は避けられない。





***





 篤志の操縦する漁船は、ホテル・オーケストラの沖100mの海上で停止していた。


 ホテル・オーケストラは香港ディズニーランドでもっとも大きいホテルで、すぐ近くに桟橋も設置してある。ALが多くなければ、この桟橋を利用し上陸するのが当初の目的だった。


 結局西側を上陸に選んだので、この東側は陽動拠点だ。



「多い……な」


 篤志はタオルで雨水を拭いながら、SKSライフルに弾を込める。

 この半自動ライフルはマガジン式ではなく本体に直接弾を込める旧式ライフルだ。不便だがソ連が開発した古いライフルなだけあって雨で濡れても作動不良は起きない。


 篤志は弾を装填し終えると、双眼鏡で園内を確認する。


 ALだらけだ。ざっと3000はいる。



「このあたりのALが集まってこの数……。なら……パーク全体だと……やっぱり5000以上」


 まともに戦っていてはとても勝ち目はない。戦闘力はあっても銃弾が尽きる。

 篤志の仕事は、できるだけこの東側にALを集める事だ。


 そのためには篤志が海上から射撃を続けるしかない。もしALが海上に移動してくる気配を見せたらすぐに沖に逃げる。幸い潮の流れの関係でALはすぐにこの漁船にはやってこられない。エンジンは切ってあるから浮遊ALの反応も今のところない。


 その時だ。篤志のトランシーバーが鳴った。


 出た。相手は優美だった。


 すでに最初の荷物を受け取った事。隙を見てモーターボートに移し漁船まで運ぶ事など聞いた。モーターボートは優美用に川側に置いてある。



「拓さんたちは?」

『三人はランドのほうに行ったわ。私も……可能ならもう少しハリウッド・ホテルの中を見にいきたいけどALがチョロチョロしているのよね。一応ここが脱出ルートだからALを集めたくないし』

「そうですね。でも、やっぱり多いですよ。AL」


 もしかしたら1万以上いるかもしれない。




 ……1万以上のAL相手に動じないのは、あの人くらいだし……。



 ふと、篤志は9ヶ月前に別れた長髪の日本人ドクターのことを思い出した。


 だが心配はいらないかもしれない。



 拓も時宗も、あの祐次の仲間だ。


「調達」1でした。


香港ディズニーランド編突入です!


そのうち地図載せます。

ホテルは海側に面していて、海から行くのならば一番近い場所です。ちなみにホテルは大きなホテルが三つです。

このホテルエリアから300mほといけばディズニーランドの遊園地部になります。

税金分も入れればざっと100食確保しないといけないので、大変です。

いうなればゾンビ世界で一度にこれだけ見つけるようなものなので、大イベントです。


さて、結局園内に向かった拓たちの運命は!?


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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