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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第三章拓編
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「依頼」3

「依頼」3


突然話しかけてきたのは、異星人のレ・ギレタル。

彼女が語る、<ラマル・トエルム>の秘密とJOLJUの秘密。

宇宙で神と呼ばれる存在の話。

そして篤志の出会った不思議な女性。

<ラマル・トエルム>は、実在する……?

***



 解散しようとしたその時だ。

 レ・ギレタルが手を上げて拓を呼び止めた。


「一つだけ気になった事があるが聞いてもいいかな、地球人」

「何?」

「お前たちが探している救世主は、本当に<ラマル・トエルム>なのか?」


 思わぬ名前が出て、拓と時宗は顔を見合わせた。


 確かに、拓は旅の目的は北米にいる<ラマル・トエルム>を見つけること……という説明を篤志にした。レ・ギレタルもそこにいたから聞いている。



「何か知っているのか? 君は」

「知っているといえば知っている。知らないといえば知らない。JOLJUがいたのでその話はすでにしているのかと思ったが、どうやら違うようですね」

「どういうことだ?」


「まず君たちの知識の補完をしよう。<ラマル・トエルム>が私の知っている魔人の事だとすれば非常に興味深い」


「知っているのか?」


「知っている。そして地球人は知らないはずだ。<ラマル・トエルム>というのはパニエメル星系の伝説の魔人であり魔神のことだ。君たち地球の文明で近しい存在としては神話上の神の血を引く架空の英雄と思えば近い。伝説上の存在だ。有名で我々宇宙探検者は知っているが宇宙に行く科学力を持たない地球人が知るはずがない名前だ」

「……つまり……?」

「本物の<ラマル・トエルム>が、遥か遠いこの太陽系の地球にいるとは考えられない。徒名だろう。とすれば、名づけたのは異星人だ。我々ク・プリアンかゲ・エイルか。どちらの種族もパニエメル星系の伝説は知っている。しかし、地球人を<ラマル・トエルム>と呼ぶとすれば、その者は確かに英雄的存在であると思う。ここまでは理解できるか?」

「確かに<ラマル・トエルム>なんて英雄は、地球のどの神話にも存在しない名前だから、そうかもしれない」


 それに<BJ>も<ラマル・トエルム>とはク・プリやゲ・エイルたちが呼ぶ名と言っていた。


「そこから分かる点はいくつかある。まず、その者は我らク・プリアンやゲ・エイルと接触を持っている。我らの存在を理解している。しかし宇宙探検者には一つ厳粛にして根本というべきルールがあってね。科学力や文明力が未発達な種族に対して、その価値観を覆すような知識を与えてはいけない。例えば今の地球人にワープ航法を教えたり反重力装置についての知識は与えてはならない。今日の会話で確認したが、JOLJUもその点は留意しているようだ。それは科学と文明の侵略で禁止されている。法ではなく倫理といっていい。だから普通の地球人に転送機やフォーファードの詳細は教えないし操作もさせない。欧州で私と篤志を転送させたのはJOLJUで篤志にはそのシステムを説明はしていない」

「成程」



 アステカ文明やインディアンたちにスペイン人が鉄器や銃を持ち込んだことでその文明を滅ぼした。地球の歴史で例えるとそういう事か。そういう根幹的ルールが宇宙人たちにはあるということらしい。JOLJUが時々歯切れの悪い返答をするのはこのルールがあるからかもしれない。



「しかし、理解できたものに対してはその知識を共有することもある。例えば君たちはJOLJUの転送について受け入れている。悪用もしていない。だからJOLJUはその点に関して技術の提供はしないが利用はさせている」


「<ラマル・トエルム>はそれだけ宇宙文明に接しているという事か?」


「推測だがね。そして重要なのは次だ。<ラマル・トエルム>には<テアペリエア>という処女神が付き添っている。荒ぶる男神の魔人と彼を導き癒す妖精女神、この二人が一で<ラマル・トエルム>だ。つまり、女の英雄というべき存在もいるということになる」


「女?」



「それってもしかして……」


 篤志が会話に入ってきた。



「僕、会った事があるかもしれません」

「え?」

「ウィーンで……不思議な女性に会いました。僕はウィーンで暴徒に遭って瀕死の怪我を負ったんですが、その時不思議な女性が僕を治癒して助けてくれました。不思議な力で、僕の傷を数分で完全に治したんです。そして名も名乗らず去っていきました。もしかしたら彼女のことなのかも?」


「マジか?」


「地球人じゃない?」


「分かりません。とても不思議な雰囲気をもつ若い女性で服装も現代人っぽくなくて……不思議な武器のようなものを使っていました。でも、一番印象的だったのは……あの女の人の髪は、蒼かったんです」


「蒼い髪?」


 拓と時宗は顔を見合わせる。

 地球人に、蒼い髪など存在しない。



「なんていうか……<スター・ウォーズ>のジェダイのような……そんな雰囲気の女性でした。でも、彼女は喋った言葉は……日本語でした。数言でしたけど、確かに日本語でした。日本人には見えなかったけど人間でした。でも不思議な事に、顔が思いだせないんです。髪や声は記憶にしっかり残っているのに」


「蒼い髪の人間の女……」



 拓は呟いた後レ・ギレタルを見た。彼女なら知っているはずだ。


 レ・ギレタルは少し考えて……答えた。



「君たち地球人は、種族的には<パラレイト>と同類だ。その女は<パラリアン>である可能性は高い。君たちの言葉でいえば、別惑星系にいる人類だ。私が観察する限り、君たち地球人と<パラリアン>はほぼ同種族であると思う」


「宇宙にも別の人類がいるのか」


「しかし問題が三つある。まず<パラリアン>は公式記録では、地球時間で凡そ50年ほど前に絶滅し文明も消滅した。二つ目……<パラリアン>の母星は銀河系の反対側にあり、とてつもなく遠く、ク・プリの科学力でも行けなくはないが膨大な時間がかかる。ただ、それもそれほど大きな問題ではない。一番の問題は<パラリアン>を守護している第三階級に属する神のほうだ。どうやら君たちと面識があるらしい」


「まさか……」


「<BJ>だ」


「!?」


「<BJ>は<パラリアン>を守護してきた第三階級の神だ。ということは、少なくともその蒼い髪の人間は<BJ>と関わりがある者……推測するに絶滅を免れた<パラリアン>の生き残りの可能性が高い。彼女であれば或いは<テアペリエア>と呼べるかもしれない」



「…………」



「しかし公式には絶滅した種族だ。生き残りがいたとしても多くはない。生き残りが20人もいれば<BJ>ならば人類再興させることができたはずだ。<パラリアン>が移住可能で知的生命体の存在しない惑星は宇宙には沢山ある。だがそういう話は聞かない」



 拓はその衝撃的な情報に言葉を失った。


 いや、話が本当であれば<ラマル・トエルム>が現実に存在する証拠といえるかもしれない。

 だが事実だとすれば、必ずしも味方とはいえないかもしれない。



「一応聞くけどよ? 確かJOLJUも<神>だよな? あいつはどこの神様なんだ?」

「それは答えられない。しかしJOLJUのほうが宇宙世界では<BJ>より知名度はある。あれは第二階級の神で、神としてのランクは<BJ>より上です」

「マジか」


 そういうと、レ・ギレタルは苦笑した。


「階級が上なだけです。知識は豊富ですが偉いわけではない。神は五段階あり、第一段階は、我々通常生命体は知る事が出来ないし存在するといわれているが知らない。第五階級は割といて自欲や人格もあり文明にも干渉しますが、第三、第四階級は超絶した神で稀に世界に干渉する事がある。第二階級はさらに上で事実上進化の最高にある超生命体で、この連中は基本自由で自分勝手で無責任で特に決まった種族の守護者でもない。種族は存在せず皆超越した個人で、自分の都合のみで生きています。地球の感覚でいえば<神>というより、<神>を創造する事ができる超高次元生命体といえば近い。現実的に全宇宙で一番高位な超生命体であり最高の存在が第二階級だと思えばいいが、原則何もしてくれない」

「一番偉いのに役には立たないのかよ」

「行動には責任が伴います。JOLJUが本気で動けば全宇宙レベルの責任を取らなくてはいけない。それには他の神だって猛抗議するでしょう。第二階級の神は皆責任をとりたくないし、そういうしがらみなく自由勝手な連中です。当てにはできないでしょう」



 ご近所トラブルで核ミサイルがあるようなものか。凄いが凄すぎてむしろ役に立たない。



「気にしないでいい。JOLJUは君たちが見たとおりだ。アレは生命体の進化としては最高で知識はあるが朴訥で無害な事で有名な超生命体です。過去アレから害を受けたという話は聞いた事がない、ただの風来坊です。自由で自分勝手だからこそ、自分の好みで地球人類を助ける気になったのだろう」

「そんなにすげぇーなら、人類丸ごとなんとかしてくれりゃあいいのに」

「<BJ>と他の第四階級の神二人がいなければ、仕方なしで何かしたかもしれないが、今地球には神が三人いるからやらない。神に飼い犬の世話を頼むようなものだ。人間がいるのであれば、人間に犬の世話をさせるだろう? ただ、神は神でもJOLJUはえらく犬好きな奴だと思えば近いな。飼い主ではなく犬とじゃれて遊んでいるだけだ」


「情報ありがとう」


 拓は一先ずそう答えた。



 拓たちにとって神の話など、雲の上のさらに上の話だ。


 だが今の説明でいくつか分かった。


 思い出した。ク・プリアンであるサ・ジリニの言った言葉を。



「我々の敵は神だ。だが希望はある……」



 <ラマル・トエルム>の存在は、その領域の一端なのかもしれない。


「依頼」3でした。



実はこれで第三章拓編、一旦終わりです。次回からエダ編で、エダ編があってから、また拓編になります。


今回は<ラマル・トエルム>の秘密です。

拓たちは、初めて<ラマル・トエルム>の手がかりらしきものを知ったのが、今回です。

今回はかなりSF的な話でした。

<ラマル・トエルム>が別の宇宙の魔人の伝説だと分かりました。まぁこんな名前、地球にはないですし。

そして謎の蒼髪の人類。

何者か!?


……パラリアンという別の星の人類が地球にいる!

(とはいえPVですでに先行で登場していたりしますがw)


ということで謎は深まります!


拓編は、今度は別の現実的な問題の対処編になります。

で、次回からはエダ編です。

エダたちのほうはこれからALの大侵攻がくるかも!? というところから始まります。


ということで第三章はどちらのルートも色々ハードです。

そしてようやくSF色が濃くなってきます。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 写真を見て篤志君が安心できる人物であるとわかるのと 同じくらいに懐かしさが込みあげる演出っていいですよね JOLJU召喚に回数制限があったり転送も やたらめったらできないのも納得しました …
2022/03/05 09:00 クレマチス
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