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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第三章拓編
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「依頼」2

「依頼」2


JOLJUの知恵を借り、航海相談。

だがやらなければいけないことは山ほどあった。

特に問題なのは食料。

仲間が増えた分、どこかで大量に手に入れなければならないが……

***



***



 問診は15分ほどだったが、雑談やら近況報告やらがあり、JOLJUが部屋を出たのは30分ほどしてからだ。


「これで大丈夫かい? JOLJU」


 篤志が問診結果をまとめた大学ノートをJOLJUに手渡す。JOLJUは「大丈夫だJO!」とそれを受け取り、ささっとリュックの中にしまった。


 杏菜は日本人の客が来ているという事で少し興奮気味だったが、軽い咳をしきりにしていたので、容態を考えて今晩は無駄話をせず全員寝室を後にした。


 そして拓と時宗と篤志とレ・ギレタル、JOLJUの五人はすぐ上のリビングデッキに集まった。


「もう抗生物質はほとんどないんです。それに食料も余裕はなくて」


 だから篤志は野外演奏会を開き、娯楽を提供することで<香港>の組織の者から食料や薬を貰い、それでなんとか細々と生きている。

 もっとも抗生剤だったら何でも効果があるわけではない。<香港>の組織にも医学の専門家はおらず、とりあえずペニシリン系を貰っている。


「野菜やお肉は手に入りづらいし、ギレタルはお肉が苦手で」

「あー……そーかも。地球人が食べるお肉は牛と豚が多いし。ク・プリアンだと……鶏肉や卵は食べれるけど、他は無理かも。食生活はベジタリアンに近いかもしんないJO」

「はい。新鮮な魚は少し慣れましたけど、肉は臭くて」


 地球人にはなんともないが、肉も魚も独特の臭みがある。それに今手に入る肉や魚は塩漬けや燻製など濃い味で味付けされている。食べ慣れないものにとってはとても食べ物とは思えない。


「オイラの感覚だと……多分キャットフードはク・プリアンの口に合うかも」

「そうなの?」

「味薄いし、栄養あるし、魚原材料の多いし」

「お前食った事あんの?」

「食ったJO! うん、まずくないけどポン酢がほしいJO。でもさんま蒲焼缶詰一番!」

「お前の味覚は日本人か」

「あ、でもここ中国なら……虫の缶詰あるかも? ク・プリアンは虫なら食べるJO」

「そうなの? シルクワームとかか? ああ、それなら中国だからあるかも」


 それを聞くとレ・ギレタルは少し嬉しそうに微笑み頷いた。虫を食べる事は問題ないらしい。食文化の違いで日本人や欧米人は好んで食べないが、中華圏では食べるし缶詰などもある。だが昆虫食は栄養学的には魚食と変わらない食材だ。こういう話を聞くと異文化の異星人なのだと思う。


「俺たちは逆だな。米と魚と醤油があれば最低一週間くらいなら我慢できるぜ」

「僕も大丈夫ですけど、飽きましたね。この半年、僕と杏菜は魚ばかりでしたから」


 篤志は苦笑する。これまで海を移動してきた。船が拠点だから魚だけはいつでも手に入った。


「さすがに食料はそんなに持ってこれないJO、オイラも。持てないし、大量の荷物用意できるような状況じゃないし。何度もいうけどこっちも大変なんだJO」


「ハウルはなんとかなる?」


「今ならハウルは手に入るけど……薬を持ってきたら大荷物だJO。そんなにオイラは持てないJO」


 JOLJUは両手を広げて自分の身長をアピールする。身長50cmしかない奴だ。そして四次元リュックは精々60cmくらいの大型リュック分の容量しかない。それに何度もいっているが、JOLJUたちだって平和に過ごしているわけではなく、ALと戦ったりサバイバル生活をしているのだ。


「食料は俺たちも自分で調達できるけど、医薬品だけはJOLJU頼りだからな。今回は優先的に医薬品を持ってきてもらうしかないだろう。後、入るならハウルくらいかな。ああ、銃はともかく弾は頼む。9ミリと38口径。持てるだけでいいから」


「米国だから銃や弾のほうが比較的簡単だJO」


 そうだろう。米国は世界一の銃社会だ。フルオートの銃でなければ入手は世界一しやすい。

 一方拓たちはこれから目指すのは日本だ。銃と弾は警察署でなければ手に入らないし、数は見込めない。



「一週間おきにこいつ召喚したらいいんじゃねーの?」と時宗。


「オイラは運び屋か!? 大迷惑だJO! ホント、オイラたちだって大変なのに!」


「それ、駄目なんだ。最後の手段はそれだけど、JOLJUの召喚は回数制限あるんだ。全部で10回。今回の計画で3回だ。北米まで行くこと考えたら、2回は残しておかないと祐次との連絡手段がない」

「なんで10回だなんてセコいことやるんだよJOLJU!」

「オイラがやってるんじゃなくて<BJ>の馬鹿ちんが勝手に設定した事なんだJO!」

「ということで話を整理しよう」


 拓はJOLJUが持ってきたソーダを一口飲んでから、リビングのテーブルに大きな紙を広げ、マジックペンを取った。





***




①日本に向かう。この<アビゲイル号>を使用する。

②パーティーは拓たち6人と篤志たち3人。合わせて9人。

③一週間後の召喚でJOLJUが杏菜の薬を持ってくる。日本到着まで推定1カ月分。

④最低800Lの軽油を手に入れる。できれば沖縄、最低でも台湾まで行く。

⑤杏菜とレ・ギレタルの食事用として最低10食×2のハウルを手に入れる。

⑥滞在分を別として、渡海用として5日分の食料のストック。一日二食として。

⑦乗せられるだけ目一杯、砂袋を用意する。最低200kg

⑧AL対策として最低弾丸1000発。

⑨これらを調達する間の食料。

⑩調理道具と調味料。





「メッチャ、やること多くね? そんでもってかなり大変じゃね? 普通にやったら一ヶ月はかかるぜ?」


 時宗はため息をつく。特に食料の調達が難題だ。できるだけ一気に稼がないと日々の生活で使い切ってしまう。


 仲間が増えた分、食料は必要だ。拓たちだって、この香港に入ってからはちゃんとした食事は一日一食か二食。後は小腹が空いたとき何か菓子などを摘む程度で過ごしている。しかもできるだけ食材を無駄にしないよう、大鍋でごった煮雑炊を作る事が多い。しかし船上でこの食生活を続ける事は難しいだろう。キッチンもあるが電力を使う。煮炊きはデッキでもできるから、アウトドア用品や薪や炭も用意したほうがいいかもしれない。


「この中でクリアーしているのは⑤のハウル20個と⑦の砂袋かな。ハウルは……10個くらい残っているだろ? 今JOLJUが持ってきた3個に、深セン市の倉庫に隠した24個。これで37個だ。二人だけで食べるのなら約18日分」


 元々拓たちが航海用に残しておいたハウルが24個。4日分の計算で残して隠してある。


「私は穀物であれば贅沢は言わない。地球の生活も長い。米や麦なら食べられる」


 レ・ギレタルはそう言う。

 彼女たちだって常にハウルだけを食べてきたわけではない。地球の食べ物は口にして生きている。


「杏菜も毎食ハウルではなくて大丈夫だと思いますよ。あればかりだと飽きますし」


 と、篤志。


 しかしそこだけは、拓は譲らない。



「結核は体力低下が一番危険なんだ。食事が悪いとすぐに悪化するし、悪化すれば俺たちにも感染のリスクが生じる。だから食料だけはなんとかちゃんとしておかないと全滅しかねない」


「⑦の砂袋って何よ?」

「海上のAL落としというかAL除けです。船体に砂を撒くとALがよじ登ってきても砂で滑って海に落ちるんです」

「マジか」

「祐次さんに教わりました。それに実践して確かめました。確かにやらないよりは効果がありました」

「あいつ、何から何まで知っているな。何者なんだよアイツ。崩壊世界マスターか?」

「あ。それ、祐次のオリジナル知識じゃなくてイタリアのボートピープルから聞いた丸秘お得情報だJO。ヴェネチアでその話聞いた後ドイツに行って篤志たちに教えて、そんでもってオイラもその方法で大西洋横断できたJO!」


 そう言ってからJOLJUは周囲を見渡した。

 前回祐次と一緒に大西洋横断したと言おうとしたら警告音が鳴ったからだ。今回は「祐次と一緒」とは言わなかったのと、すでに篤志が言った後だからかもしれない。


「参考までに聞くけど、お前はどんな船で何日分食料用意したんだ?」


 と、拓。用心のため<JOLJUと祐次>とは言わなかった。


「25mくらいのでっかいエンジン付きのヨットだJO。食料は多めに用意して15日分くらいかしらん? あ、でも途中オイラ、マグロ一匹釣ったから三日くらい助かったけど」

「お前、変なところで役に立つんだな。でも、そうか。最悪航海中も釣りは出来るのか」


 東シナ海はいい漁場だ。マグロやブリやカツオは勿論、トビウオやサバの回遊に当たれば束で釣れて一日二日分の食材にはなる。釣れれば、だが。


「拓、釣りできたっけ?」

「少し。啓吾はできるよ。あいつ魚捌けるし」

「ふむ。じゃあ特別だJO」


 そういうとJOLJUは肩パットの中から小さなバッグを取り出す。この肩パットの中もJOLJUの四次元ポケットだ。


「オイラ選りすぐりのルアーセットだJO! 近海から沖まで色々使えるJO! あ、サバとか小型カツオの群れが来たときはジグサビキがオススメだJO」

「貰っていいの?」

「米国に着いたら返してだJO。今海遠くて当分使いそうにないから貸すJO!」

「何から何まですまないな」


「じゃあぼちぼち帰るJO。今ならまだお昼ご飯残ってるかもしれないし。今度は邪魔されたくないJO。ご飯は貴重なお楽しみなんだJO」


「きっかり一週間後な。タイマーセットしといてくれよ」

「了解だJO」


 その場でJOLJUは自分のスマホでタイマーを一週間後に設定すると「でわ!」と手を振る。そして次の瞬間テレポートで消えた。


 拓も自分のスマホにタイマーをセットする。


 これでいくつかの問題はクリアーだ。

 一週間後JOLJUがなんとかしてくれる……ことを期待しよう。

 祐次のほうも大変らしいが、ちゃんと拓が召喚した時のためJOLJUに荷物を持たせるくらいだから中国よりはマシなのだろう。それに物資調達に関して祐次は日本人の中でも抜群に優秀だった。今回も祐次の力に期待するしかない。



「とりあえず明日から動き出すとして……」


 拓は立ち上がり篤志を見た。



「俺たちは日本につくまで運命共同体。仲間……ということでいいかな? 篤志君」

「勿論です。ああ、<篤志>でいいですよ。僕は船、レ・ギレタルは船の操縦。そして拓さんたちは杏菜のための薬と食料。目的地は日本。一緒ですから」

「<呉越同舟>だな」


 レ・ギレタルは楽しそうに言う。

 拓たちには分からなかったが、それを聞いて篤志はクスリと笑った。この熟語は彼女のお気に入りなのだ。



「分かった。じゃあ、これから仲間だ。ええっと……いきなり要求するようで悪いんだけど、この船に転がり込ませてもらってもいいかな? 俺たち九龍の下町に住んでいるんだけど環境悪くて、部屋も風呂もトイレも最悪で。仲間に女の子があと二人いるんだけど、多分シャワーは死ぬほど喜ぶと思う」

「シャワーではなくお風呂でいいなら大丈夫です。今晩は後一回使えると思います。すみません、お湯の量は一日で限られているのです。バスタブは大きいので二人一緒に入れると思います」

「十分だ。俺たちは明日でいい」と時宗。

「ベッドは5つです。杏菜とレ・ギレタルには個室を使わせてあげてください。空いているベッドの一つはキングサイズです」


 こんな豪華クルーザーのVIP用のキングベッドだ。やや窮屈だが女子なら三人眠れるだろう。


「じゃあ女子三人はそこでいいかな。て事は……残りベッドは一つか」


 さすがに船の持ち主である篤志のベッドを譲ってくれとはいいにくいし、姉弟とはいえ結核である杏菜と一緒にする事もできない。ここはゲストの拓たちが我慢するしかない。


「野郎三人で一緒は嫌だから代わりばんこしようぜ。あの九龍の硬くて臭い布団より、このリビングのソファーのほうが全然マシだぜ」

「モーターボードが戻ってきたら、また一便だな。毛布や食料や鍋やら取ってこよう。で、今日の活動は終了だ」


 拓は全員を見回し宣言した。

 皆異論ない。これから忙しくなるだろう。


「依頼」2でした。


船+砂袋は第一章の「洋上の男」で、祐次たちがすでにやっていたAL対策ですね。

船としては<アビゲイル号>のほうが大きいし馬力もありますが、人数も多いですし、一応祐次は船舶免許があり、なんでもできるJOLJUと一緒だと考えると、素人だらけの拓たちのほうが難易度は高いです。

そして食料と燃料も問題。

こちらはガソリン船でなく軽油です。ガソリンのほうが実は手に入れやすいんです。放置車を漁ればいいので。

どうする拓たち……というのは……実は第三章中盤で、一旦エダ編に行きます。

その前に次回、レ・ギレタルが重要な話をします。それからエダ編になります。

第三章は拓編、エダ編が交互に二回です。

次回<ラマル・トエルム>について情報が!


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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