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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第一章・エダ編
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「世界の破滅と救援と」

「世界の破滅と救援と」



突如現れたエイリアン。

そう、それは異星人エイリアンと呼ぶしか表現しようのないモノだった。

ついに戦闘エイリアン<AL>が牙を剥く。

パニック陥る一同。

そして、一つの運命の糸が結ばれる……。

***


 それは、<エイリアン>というしか表現しようのない生命体だった。



 深緑色の体、ぬめり感のある体液らしきもので体は濡れ、服も纏っていない。そして長い尻尾が揺れている。

一応人型だが哺乳類というより爬虫類か両生類のようだ。



 1体ではない。よく見れば、奥の森にもう2体ほどいる。見る限り同じ顔で差は見られない。

 コミュニケーションを取り合っているようにも見えない。3体はバラバラに歩いている。


 だがこの状況下で、エイリアンを見てテンションが上がるほどエダもトビィも能天気には出来ていない。

 エダは絶句したまま後ずさると、黙ってトビィの服を掴む。


「トビィ……アレ……」

「あ、ああ。どうみたって……地球人じゃない」


 二人とも頭がこんがらがって、まともに思考できない。

 根拠はないが、この事態の元凶は間違いなくアレだ。


 幸いか、ALはエダとトビィに気付かず、そのまま管理小屋の前を横切り、B棟のほうに向かって歩いていく。


 二人共、なすことなくそれを見ている。いや、動こうにも恐怖と衝撃で体が動かない。



 が……10代の少年少女たちにとって、<エイリアン>という存在は時に恐怖より好奇心を刺激する。



 仲間たちも見つけたのだろう、B棟から4人、C棟から3人……ログハウスから歓声を上げながら飛び出してきた。皆、手にスマホを持ち写真を撮りながら騒いでいる。




 ……どうなるんだ……?



 トビィも立ち上がり窓際に移動し、その光景を見る。その後ろにエダも続く。恐らくログハウスのほうでも観察しているに違いない。


 飛び出した7人の少年少女たちは最初は遠巻きで騒いでいたが、敵対心がないと分かると「ハローハロー」と語りかけながら接近する。



「大……丈夫?」と呟くエダ。

「武器は……持っていないようだけど」とトビィも呟く。



 やがて好奇心旺盛な少年、14歳のウォルター=ゼニスが握手しようと右手を伸ばした。


 その時だった。


 その手を不思議そうに見ていたALは、右手を振り上げ……そして、三本の指が一瞬にして大きくなると、ウォルターの身体を真っ二つに切り裂いた。


「なっ!?」


 ALは独特の甲高い「キシャァーっ!!」という咆哮を上げると、両腕でウォルターの身体をあっという間に切り刻み、人間をただの肉塊に変えた。



 その光景を見ても、誰も声が出せなかった。

 本当にショッキングな光景は、人を無言にし、硬直させる。


 ウォルターが血煙とともにただの肉塊となった後、ALは次の標的を見定め、近くにいた少女メリーアンに飛び掛った。むろん抵抗などできるはずがない。一瞬にして切り刻まれた。だがメリーアンは断末魔の叫びを上げた。その声で、全員が現実を認識した。


 悲鳴が至る所で上がる。


 エダも、小さな悲鳴を上げた。


 セナリー先生が悲鳴に近い奇声を上げながら、残った少年少女を救うため飛び出す。B棟からはバーニィーがドライバーを片手に飛び出した。


 だが、二人の救援など何ら助けにならなかった。


 3体のALは6人を瞬く間に惨殺し、駆けつけたセナリーの腹を爪で貫いた。



「バーニィー、戻れ!!」


 B棟に残っていたカイル=グラードが叫ぶ。その声を聞き、ようやくトビィの体に力が戻った。


 トビィは管理小屋を飛び出し、近くにあった薪を拾い、それをALに向かって投げつける。遠いから当てるのが目的ではない。


 3体のALは、トビィのほうを向いた。


「バーニィー!! 今のうちに!!」


 トビィは薪を何度も投げつけ注意を引く。


 ALたちの標的はトビィに切り替わった。


 そう判断したALは駆け出す。速い。


「トビィ!!」


 エダも飛び出してトビィを掴んだ。

 トビィはバーニィーが一人を担いでB棟に逃げるのを確認し、エダを抱くようにして管理小屋のなかに飛び込んだ。すぐさまエダがドアを閉め、鍵を掛ける。まさに間一髪、ドアのほうが速かった。ALは減速もせずドアに体当たりし、小屋が揺れた。エダは悲鳴をあげる。


 トビィはエダを抱きしめた。


「大丈夫! 大丈夫だエダ!!」

「……トビィ……」


 トビィはエダを強く抱きしめる。二人とも震えていた。だがトビィの恐怖はエダの震えを知り、勇気へと覚醒した。

 今は、震え合っているようじゃあ男ではない。


 トビィはエダから離れ、無線機を掴むとエダを奥の部屋に押しやる。


「トビィはどうするの!?」

「いいから奥の部屋にいろ!!」


 トビィは知っている。この管理小屋には銃がある事を。


 管理人の机の引き出しを開け、鍵の束を取り出すと、まっすぐ壁際にあるロッカーに向かった。そして何度か鍵を試し、6本目でようやく開けた。


 ロッカーの中には、12Gのレミントン・ショットガンと大型ライフル、そしてコルト製357マグナムが入っていた。野生動物や浮浪者の護身用としてこの管理小屋に備え付けられているものだ。トビィは無造作に置かれているコルト・キングコブラ6インチ・ステンレスを掴み、すばやく弾を確認した。弾は357マグナムが6発装填されている。


 銃を手にしたトビィは、正面に戻ると窓を開けた。すぐ目の前にALが3体たむろしていた。狙うなどまどろっこしい! トビィは無我夢中でトリガーを引いた。


 至近距離だ。弾は3体のAL全てに命中した。


 するとどうだ。


 弾を食らったALは、風船のように破裂して消滅したのだ。



「……なっ……」


 トビィは目を凝らすが、もうそこにはALはいない。死体すらない。


 だがALは確かにそこにいた。撃たれたとき散った体液が床に零れている。

 驚いたことに、ウッドデッキが、僅かに溶けていた。


「凄まじい酸性の体液……<ゼノモーフ>かよ!?」


 まるで映画『エイリアン』に出てくるモンスターのようだ。だが死体もなくなるというのは理解できない。いや、そもそも何ひとつ今の状況は理解できるものではない。


 トビィは肩で息をしながら、撃ち尽くした弾を捨てる。今頃になって恐怖と興奮が襲って手が震える。それでも空薬莢を捨て、空になったシリンダーに新しい357マグナムを込めた。


 その時だ。エダがトビィの服を掴んだ。


「奥に行けって言っただろう!!」

「トビィ、見て!」


 エダは湖面のほうを指差した。

 そこにあったのは、先程エダが見つけた黒いゼリーのような丸い塊だ。

 それがゆっくりと、岸に向かって進んでいる。

 さらに遠目ではっきりとはわからないが、中で何か蠢いているのが分かった。


 言葉にする必要はない。

 あの物体はAL……エイリアンの塊なのだ。サイズを考えれば、どれだけの数が塊となっているか想像すらできない。分かっているのは、あれが全て人型となって襲い掛かってくれば自分たちなどあっという間に殺されるだろう。



「戻ろう。お前は無線機を持っていってくれ!」


 そういうとトビィはすぐにロッカーの銃を取り出し始めた。キングコブラをズボンの背中に突っ込み、そこにある357マグナムを全てポケットに入れ、ショットガンとライフルを背負う。そして弾箱を掴んだ。その時もう一丁スナブノーズ・357リボルバーが出てきたので、それはズボンに突っ込む。


 用意が終わると、すぐに二人は管理小屋を飛び出した。


 エダが前を走り、その後ろをトビィがショットガンを構え、警戒しながら進む。


 今の二人にとって、120mは途方もなく遠く感じた。


 途中、無残な屍となった仲間と教師、7人の遺体があった。


 エダはそれを見ないよう、必死に走った。見ればきっと泣き出してしまう。


 まずエダがB棟に飛び込み、トビィがやってくるとバーニィーが出てきて出迎える。トビィはライフルと弾ケースをバーニィーに投げて渡すと、今度はC棟に走った。もうこうなれば全員一緒のところにいるしかない。武器のあるところでなければ危険だ。C棟のほうでもトビィの意図を理解したのだろう、フィリップとジェシカが先導して女の子たちを移動させた。


 全員無事B棟に逃げ込んでドアを施錠したとき、緊張はまだ解けない。


 ショットガンはフィリップが受け取り、窓のところでALの様子を確認する。トビィとバーニィーは銃別に弾を分け合い、ジェシカは震えて泣き出す女の子たちを必死に抱いて落ち着かせる。



「…………」



 エダも震えが止まらない。



 死んだ。


 友達が6人、先生が1人。そして一人は命は助かったが重傷だ。


 いとも簡単に、あっけなく……あっという間に。


 みんな、仲のいい友達だ。


 エダは無線機にしがみつくと、その場に蹲り、嗚咽を漏らした。



 その時だった。



 僅かな声に、エダは気づいた。



 気のせいかと思った。



 しばらく耳を傾ける。



 それは酷いノイズに混じっているが、確かに音声だ。



「みんな! ちょっと静かにして!!」

「どうした?」

「無線から声が聞こえるの!!」


 全員、息を飲む。

 すぐに年長者たちが泣く子供たちを落ち着かせる。

 トビィがそっとエダのところに駆け寄る。

 トビィも確認した。確かに聞こえる。


「誰かいる! だけど……こっちには気づいてないかも。それに……何語だ?」


 トビィは無線機の音量と周波数を確認する。周波数は緊急無線のもので、向こうは気づいていないような感じだ。どうもこっちと通話をしたがっているようには聞こえない。それ以前に英語ではなかった。



「何語だ? エイリアンの通信か?」

「違うだろう。聞き覚えはあるけど」


 もう一度トビィはつぶやく。だが音量は小さいし、独特の喋り方で教師のフィリップも検討がつかない。


「フランス語やスペイン語じゃないな」

 ヨーロッパのどの言語とも違うようだ。どうやら男の声なのは分かる。


「あ……」


 エダはその言葉に気づいた。



「これ、日本語です」



 その言葉に全員訳が分からず顔を見合う。

 日本はほぼ地球の反対側ではないか。


 だが間違いなかった。エダは日本育ちだ。むしろ英語より日本語のほうが得意なのだ。



「日本人です」


 呆然と、エダは呟き、そして無線機を見つめた。



 これが、彼女の運命を変えることになる。


「世界の破滅と救援と」でした。



今回はトビィ君が挿絵表紙です。

金髪碧眼の少年です。実は今回のリマスターにつきちょっとデザインは変わっています。

あと、ちょこっとALタイプ1も挿絵に入れてみました。

基本あんな感じでアッサリとしています。

ALのデザインは変わっていません。タイプ5まで登場しますが、とりあえずしょっちゅう出てくるのはこのタイプ1です。


さて、ついに<AL>が登場しました。

悲惨な惨劇はここから始まります。ようやくサバイバルパニックらしくなってきました。


そしてラスト……お気づきの通りの人物です。

ということで次回、ユージとJOLJU登場です!

ここからは一気に物語がハードモードになります。


ということでこれからが<AL>の本番です。

これからも「AL」をよろしくお願いします。

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