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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第二章外伝米軍編
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「フォート・レオナード・ウッド」3

「フォート・レオナード・ウッド」3


米軍基地に押し寄せたALの大群。

その数30万以上。しかも凶暴期だ。

米軍は総力を挙げて迎撃する。

だが、ALの数はあまりに多かった。

***




 米国 ミズーリ州 フォート・レオナード・ウッド陸軍基地。


 日常の静寂が破られたのは午後15時08分の事であった。


 このフォート・レオナード・ウッド基地周囲は自然公園だ。米軍は、周囲の森の中に動体センサーを何箇所も設置してあるし、ワイヤーとブザーによる原始的な罠も設置してある。もっとも自然公園内は野生動物も多く、警報は日に一、二度は鳴る。それを偵察部隊が確認して再設定するのも仕事の一つだ。



 しかし、この日は違った。



 半径5km圏内無数に設置した警報機の、ほとんど全てが鳴り響いた。


 すぐに完全武装した小隊が各方面に向かって飛び出した。


 そしてすぐに猛烈な銃声が四方で起こった。同時に緊急を告げる無線が鳴り、状況が明らかになった。

 ALの襲撃だ。それも数の検討がつかないほどの膨大な数だ。



「ヘリを出せ! ざっとでいい。ALの数を確認だけして戻れ!」


 バーバリー大佐はそう命じると同時に民間人をショルターに避難するよう命じた。避難訓練も何度か行っているし、ALの襲撃もこれまで何度かあった。こういうことも想定内だ。


 偵察のためAH64A戦闘ヘリコプター二機が飛び、周囲を旋回する。

 彼らから信じられない報告が司令部に届いたのは、僅か5分後の事だ。



『正確な総数不明! ALが見渡す限り取り囲んでいます! 多くて数え切れません!! 測定不能!!』

『ALの色、赤い斑がはっきり確認できます! 凶暴期です! タイプ3、無数!!』


 その報告にALとの戦闘に慣れたバーバリー大佐たち軍司令部も騒然となった。ALはついにこのフォート・レオナード・ウッドを滅ぼしに来たのか。見渡す限りということは、1万や2万といった数ではない。30万は超える。


 非常事態の警告が基地に響き、軍人は全員武器を手に持ち持ち場につく。民間人は強固な倉庫や地下シェルターに避難していく。一部の農場係の民間人は動物たちも屋内に避難させる。


『群れの主力は現在5km地点! 第一波はもうじき基地に到達! 第二波主力は推定30分後到着!』


 バーバリー大佐は基地側の迎撃体制を確認する。もう8割の兵士は所定の防御陣地に到着している。だが民間人はまだ完全に避難が終わっていない。軍属労働者は広い基地に散らばり、避難には時間がかかる。この基地は広大なのだ。



「ついに使うときが来たか」


 バーバリー大佐は決意した。


 いつかこの日が来る。その時のための奥の手だ。


 バーバリー大佐は二機のAH64Aと地上部隊に対戦車ミサイルの発砲を許可した。照準など考えず四方八方撃て、と命じる。


 1分後にその命令は実行された。


 小さな爆発が、無数に起きた。


 だが対戦車ミサイルで倒せるALの数など高が知れている。一発で20体も倒せない。撃たないよりマシだというだけの話だ。


 AH64A戦闘ヘリコプターはALの上空を旋回しながら、搭載しているマシンガンで薙ぎ払っていく。一面ALだらけだから狙う必要はなく、撃てば当たる。こっちのほうが効果は大きい。M134ミニガンは1分で3000発だ。だが無限に弾があるわけではない。


 そしてタイムリミットが来た。


 上空に飛行型ALであるタイプ5が現れた。AL側も飛行物を認識したようだ。これが出てくると、どれだけ速かろうが装甲があろうが武装があろうが関係ない。タイプ5は対象物にぶつかり墜落させる。それは米軍側も過去の戦闘の経験で学んでいる。タイプ5の出現を確認すると、その事を報告すると同時に旋回し地上に戻る。地上部隊も対空射撃で連携し、タイプ5の進撃を出来るだけ防ぐ。


 地上に降りてしまえばタイプ5は興味をなくし襲ってこない。

 運良く一機は無事攻撃を受けることなく着陸したが、一機は地上付近でタイプ5の群れに襲われ一瞬で破壊された。ただ搭乗していた兵士はなんとか地上に逃れ、軽傷だけで死なずに済んだ。



 ついにALの大群第一波が基地外側のフェンスに取り付いた。四方全てだ。その数はざっと2万。これは先を走っていた群れだ。ALもタイプ1とタイプ2ばかりだ。



 フォート・レオナード・ウッド基地の各場所に設置されたマシンガンが一斉に火を噴いた。


 そして基地の外の地面に埋められた地雷が次々に爆発していく。

 基地は、小さな爆発に包まれているようだ。



「まるで第一世界大戦だ」


 司令部の中から外の様子をモニターで見ていたスコット海軍中佐は思わず呟いた。


 電子火器管制システムは使えないから電子式誘導ミサイルのほとんどが使えない。航空爆撃もできない。使えるのは地上用の機関砲や機関銃、そして自動小銃だ。こんな戦いは現代戦にはない。類を求めれば第一次大戦になる。ただし第一次世界大戦と違う点は、敵が撃ってこない事と大砲がない事くらいだ。ミサイルの登場で大口径の大砲はなくなり砲といえば戦車砲くらいのものだ。戦車砲も対戦車砲だから対人用に特化はしていない。


 フォート・レオナード・ウッド基地も、AL対策を怠ってはいない。フェンスと堀と塹壕を幾重にも張り、ALの侵攻を物理的に遮るシステムがある。


 確かにALの侵攻の足は遅くなる。そこを銃撃で倒せば効率はいい。


 だがALの体液は強酸だ。鉄のフェンスなど、すぐに溶けて穴が空く。


 それにALには跳躍力がある。奴らは行き止まりにぶつかると跳躍して超えようとする。互いの背中を蹴りあえば10mのフェンスでも越える。


 交戦から20分。第一波の大規模な侵攻は防いでいるが、フェンスを飛び越えた一部のタイプ1が迫り、近接戦闘も始まっていた。


 そして、本陣というべき第二波の群れが雲霞の如く大地に溢れている。

 その数は20万を軽く超える。とても地上の戦闘だけでは迎撃できない。


 バーバリー大佐はついに決断した。



「C130Jを出撃させろ」


 その命令に、司令部に緊張が走った。

 スコットは、そっとバーバリー大佐のところに行く。


「航空機はすぐに撃墜させられます、大佐」

「分かっている。だが機体が大きい。3分保てばいい」


 何をする気か?


 新参のスコットは知らないが、陸軍司令部の人間はこれが何を意味するか知っているようだ。皆緊張で顔が強張っている。スコットはバーバリー大佐を見た。その顔には強い決意と感情を押し殺す意志が漲っていた。


 命令はすぐに実行された。


 格納庫が開き、大型輸送機C130J……通称<スーパーハーキュリーズ>が動き出した。

 C130Jは、格納庫を出るとすぐに加速し飛び立った。


 すぐに地上にいたALタイプ1が反応し、瞬く間にタイプ5に姿を変えると次々に飛び立っていく。その数は1000を下るまい。そして前方の第二波からもタイプ5が飛び立つ。合わせて3000か。


 急速上昇するC130Jは、すぐに取り付かれた。


 だが輸送機は速く、もうALの大群の上空だ。


 その時、輸送機の腹から何かが落とされた。


 パラシュートが開き、それはALの群れの中に落ちた。


 次の瞬間、巨大な閃光と爆発が、辺りを包み込んだ。



「なっ!?」



 巨大な爆発は、なんと直径800mにも及んだ。衝撃波と爆風はその倍に広がる。


 大規模爆風爆弾MOABの爆発だ。非核兵器の中では最強の威力を誇る投下式爆弾で、地上にあるあらゆる物を薙ぎ払って爆発する。その爆風と衝撃波は基地にもおよび櫓やフェンスの一部も吹き飛んだ。


 これこそ、バーバリー大佐が持っていた切り札だ。


 その爆発力は最強の爆弾の名に相応しく、高温にして強力、キノコ雲が発生するほどだ。


 この一発で、半径400m内にあったものは全て粉砕された。投下された自然公園は、全ての木が薙ぎ倒され、延焼する。


 C130Jは爆風で大きく揺らぎながらも、なんとか耐え切った。そして爆発によって上空にいたタイプ5の多くが弾き飛ばされた。C130Jは機体の制御を取り戻すと、すぐに高高度で旋回し、今度は反対側のALの群れに向かい、もう一発大規模爆風爆弾MOABを落とした。


 再び巨大な爆発が起きた。


 基地の北と南が、巨大な爆炎に包まれた。

 だが残る東西から、タイプ5が群がりC130Jに襲い掛かる。



「大佐! 乗員の救出は!?」

「これは片道切符だスコット中佐。帰還は想定していないし救助はない。むろん乗員も覚悟の上だ」

「なんですと!?」

「機内には積める限り一杯のミサイルや爆薬を搭載している。あの輸送機自体が巨大な爆弾だ」

「<カミカゼ>ではないですか!?」

「どうせ助けられん」


 仮に爆発に巻き込まれず飛行できたとしても、この基地に戻ってくるには何度も上空で旋回する必要がある。ALタイプ5がそんな悠長な隙を与えるはずがないし輸送機を着陸させるような態勢もない。助からないのだ。これで死ぬ乗員……兵士は二人。それで数万のALを倒せる。


 バーバリー大佐の哀しい予見通り、C130Jは瞬く間にタイプ5の猛攻撃を受け、2分としないうちに機は浮力を失い傾き、そのまま基地から8kmのALに満ちた東側の大地に墜落した。その瞬間巨大な爆発が起き、地上のALを吹き飛ばした。

「フォート・レオナード・ウッド」3でした。



米軍編第三話です。


米軍、本気です!

なんと大規模爆風爆弾MOABも使用です。

米軍が所持する、非核爆弾の中では最強クラスの爆弾です。

しかし、そんな爆弾も決定打にならず!

ALは熱には強いので、爆熱自体はなんともないのです。飛んでくる破片とかでは倒せますが。

そしてどんな強力な兵器でも、ALは怯える事はありません!

ヘリを飛ばしてもタイプ5が群がって落とされる! 空爆もできない!

こうして地上戦で対処することになります。

しかし数万もの相手に1000人ちょっとの米兵で勝算はあるのか!?


思えば米軍が数万もの数の地上戦というのは第二次大戦以来の会戦ですね。

航空支援や爆撃ができない事を考えるとやっていることは第一次大戦と変わらない。


ということで米軍編は続きます。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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