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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第二章エダ編
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「次の圧倒的な脅威」第二章 エダ編 最終話

「次の圧倒的な脅威」第二章 エダ編 最終話



後日……JOLJUが撮った一枚の写真。

そこには、これから最悪の凶暴期への前兆が映し出されていた。


そう、近いうちにこの街はALの大群に襲われる。

その襲来の恐ろしさは、祐次ですら逃げるしかないほど……。


だが、このNYには3000人も人がいる。

果たして逃げることが出来るのだろうか?

***


 そして三日後……10月15日。昼。


 病院での仕事を終えた祐次とエダは、控え室で神妙な顔でスマホを見つめるJOLJUを見つけた。



「ゲームでもしているのか?」

「ゲームもしてたけど、別のことしてたJO」


 ベイトとジョエインの治療は山を越え、危惧していた感染症もどうやら発病せず押さえられた。もう祐次とエダの二人で対応できるから、JOLJUはたまに雑用を手伝うくらいで、空いた時間はスマホでゲームをしている。こいつはゲームやアニメといったサブカルチャーが大好きなのだ。なので、スマホにはアニメやゲームが沢山入っている。


 JOLJUの表情は珍しく険しかった。



「どうしたの?」とエダもスマホを覗き込む。


 その画面には、先日のタイプ3の姿が映し出されていた。


「タイプ3?」

「これだJO」


 そういうと、JOLJUはスマホを叩き画面を拡大する。


 祐次も画面を覗き込んだ。

 そして息を飲んだ。


 JOLJUの言いたい事が分かった。



「赤い斑点が出ている」

「斑点?」


 エダもよく見てみた。

 確かにALの体の全身に小さな赤い斑点が浮かび上がっている。まるで湿疹のようだが、ALにもそんなことが起きるのか?


「第三期だ」


 祐次は言った。その言葉には戦慄が篭っている。


 その言葉でエダは顔を上げた。


 確か最初に聞いた。ALには進行度があり、段々凶暴となる。第三期は凶悪期の入り口で、これから進めば第四期、そして凶悪凶暴な最終第五期、凶暴期がある。


 進行の度合いはその都度違うからなんともいえないが、間違いなく進行していく。


 凶悪期に入ればALの戦闘力は桁違いに上がり、その動きも格段に素早く、防御力も上がり、人間だけを選別して効率よく、そして、容赦なく殺す殺戮兵器と化す。


 だけではない。

 第四期以降、ALは爆発的に数を増やし襲撃してくる。

 その数はいつもの100単位の群れではない。一つの群れで1000単位だ。圧倒的な数の暴力で押し寄せてくる。



「千の群れ!?」


 エダは声を上げる。

 だがそれは間違いだ。


「来るのは、万の群れだ」

「えっ!?」

「凶悪期になれば、町のほとんどはALで埋まる。最低でも10万、20万の単位だ」


 それも、過去の例だ。

 ALはその地で抵抗している人間の数に比例する。ドイツでは、600ほどの村で4万だ。


 このNYには3000人いる。同じ規模だとは限らないが、単純計算で20万だ。



 祐次は近くの椅子を引き寄せ座った。

 祐次は三度、凶悪期を経験している。



「ドイツの集落で襲撃を受けたとき、村の半分以上が死に、残り半分は散り散りに逃げてどれだけ助かったか分からない。日本の例もある。東京は、もう何度か凶悪期の襲来を受けていて、俺も二度経験した」

「東京の人はどうなったの?」

「隠れた。地下や高層ビルに、少しずつ分けてだ。一箇所にしなかったのは、全滅を避けるためだ。凶悪期のALの人間を探知する嗅覚はいつもの三倍だ。1体に発見されたらその群れ全部が知る。戦えばもっと多くのALに存在が知れる。見つかればほぼ終わりだ。だから生存者を出すためには、避難先は分けるしかない」


「…………」


「一度だけ、東京でも迎撃作戦をしたことがあった。連中をお台場におびき寄せて、集めるだけ集めて、そこに米軍から拝借したミサイルや魚雷やダイナマイトを山ほど設置して吹き飛ばした。お台場を更地にしたよ。だけどALは半分ほどしか倒せなかった。残った約30万は、再び都心に向かった」


「じゃあ……60万の襲来!?」


「もっといたかもしれん。ただ、爆発でレインボーブリッジも破壊したから、ALは台場に足止めを受けて、住民が逃げる時間が出来た。あれは偶然の幸運だ。幸い日本政府を連中は逃げることを知っていたからな。だけど米国人は難しいかもしれない」



 日本人が逃げることを選べた理由は簡単だ。


 そもそも銃器が乏しく撃退する武力は逆さまになってもない。

 最後の手段がミサイルによる一網打尽の自爆だった。

 それが駄目だった以上逃げるしか手がない。

 


 だが米国は違う。

 銃や弾は膨大にあるし、自主独立の国民性だ。自衛のため戦う事は憲法にある。皆、自分の生活を守るために戦うだろう。それが事態を悪化させるとしても。



 エダは言葉も出ない。



 先日の襲撃もエダにとっては最大規模だったし自警団の防衛力とも拮抗していていた。それでも精々4000だ。あれが6000であればもっと被害は出ていた。そして1万であれば突破されて町が戦場になっていただろう。その10倍の数が来るというのか。



「ミサイルでも倒せないの?」

「ALは熱に強いんだJO。熱に対しては数万度でも外皮は熔けないし、レーザーや荷電粒子ビームでも穴は開かないJO。プラズマの中でも動ける奴らだJO」

「つまり爆弾の熱じゃあ、ALを殲滅できない。だから核爆弾を使ったとしても全滅しない」


「そ……そんなにすごいの!? でも銃で倒せるのに?」


「地球人が使う銃は、大別すれば投石の延長兵器で物理兵器だからだJO。元々ALは宇宙戦争用だから高温兵器には大体抵抗力があるんだJO。ついでに冷たいのはマイナス220度以上じゃないと効果がない。呼吸しているワケじゃないから凍らない。だから科学兵器で倒すのは大変なんだJO」


 お台場を吹き飛ばすほどの爆発で半分倒せたのは爆発や熱ではない。

 爆発によって粉砕された建物の破片が当たり薙ぎ倒したのだ。やった規模を考えれば効果は少なかったといえる。



「俺たちより科学の進んだ最高の兵器を持つク・プリ星人やゲ・エイル星人が苦戦する理由はそこだ。ま……戦争も科学が行き過ぎれば最終的には白兵戦に戻るって言われているからな。殴りあいだ」


「…………」


 途方もない話に、エダは次の言葉が出てこない。


 ミサイルも爆弾も効果は少なく、凶悪期に入ると水もいつもの倍以上必要で、しかも水にも怯えない。水による牽制も効果は少ない。



「ど……どうしたらいいの?」


「二つしかない」


 祐次は二本の指を立てる。


「一つ。隠れる。凶悪期は48時間だ。その後第一期に戻る。ただし、一度集まった数がまた散っていくまで5日から一週間はみないといけない。一週間は絶対見つからず息を潜める生活は大変だ。指導者の力も必要だ」


「もう一つは?」


「逃げる」


 祐次は指を折る。


「ALは人間の集落を狙って襲ってくる。奴らはそこに人間の抵抗勢力があると認識したとき襲来モードに入るんだ。だが全ALが凶悪期に入るわけじゃない。とにかく遠くに逃げて、その襲来をやり過ごせば一応問題なくなる。ただし、どこまで逃げたらいいか、その保証はどこにもない。俺は南ドイツからフランスまで24時間休みなしで逃げ続けた。ただ、それが出来たのは、俺とJOLJUの二人だけだったからだ。俺たちはALについての知識はあるし、二人なら見つかりにくいし、逃げるのも計画の相談もなく無我夢中で逃げればよかった。仲間がいたら……仲間を守りながら逃げないといけない。そうやってまごついている間に追いつかれて死んでいた」


「…………」


「住人の規模が少なければ、どちらかの方法が取れるが……1000人以上になると大変だ。統制を執るのも、危険を周知させるのもな」


「…………」


「そんな顔するな。まだ第三期で二段階残っている。明日明後日いきなり襲来することはないさ。対策を考える余地はある」

「……うん……」


 エダは頷いたが、やはり不安を完全にぬぐう事はできない。



 以前、祐次は言っていた。「第三期以降なら逃げる」と。そしてドイツでは祐次ですら逃げた、と。この祐次が逃げざるをえないのだ。



 だが、このNY共同体の人たちは逃げるという選択は出来るだろうか?



 エダはなんとなく分かった。祐次がNY共同体に参加せず、飽くまで客の立場を取った本当の理由を。


 もしALの凶悪期にあたり、さらに10万を超える時は、ここを捨て逃げ出すためだ。


 だから祐次は車を用意してあるし、武器をNYの外に分散して隠したのだ。あれは逃げ出したときのためのバックアップだ。祐次は経験上知っている。自分がどれほど強くても、溢れかえったALの前には逃げるしか手がない。


 祐次は強く経験豊富だが、逃げることを知っている。ALの本当の恐ろしさは、巨大なタイプ3ではなく数だということを知っている。そして逃げるという選択肢を選べず死んだ人間を沢山知っている。




 だけど……と、エダは考えてしまった。



 アリシアやベン、リチャード……他に色んな人たちと仲良くなった。皆いい人たちで、ここには文明の生活が残っている。すごくいい仲間がいる。




 ……皆を捨てて、自分たちだけ逃げることができる……?



 その答えは、どんなに考えても出ない。



 祐次はその答えを求めない。



 だが……いつかはその判断をしなければならない。



 そしてその日は、すぐにではないが、そう遠くではない。




 もし英雄や救世主が現れるとしたら、この街が危機に瀕したときなのかもしれない。

「次の圧倒的な脅威」第二章 エダ編 最終話 でした。



ということで、今回が第二章エダ編の最終回です。まあエピローグです。

そして今後の予告編的な話でした。

そう、ALの大襲来が迫っているのです!


第二章は、拓編もエダ編も、どっちもキャラ紹介みたいな展開でした。拓たちはパーティーが確定して、エダと祐次は本拠地が決まる……という事で、実は本編の本題的なエピソードは、第三章以降になります。


第三章からは、すぐにハードな展開になり、色々きき事件が起こります。どっちのルートでも。


ということですが、これで第二章が終わりではないのです。


実はこの後、短編(といっても4万文字くらいはありますが)の「米軍編」があります!

そう、実はちゃんと米軍もあるんです。

そして米軍のある将校をメインにある事件を描いています。これもちゃんと後々本編に関わってくる外伝です。


で、実は最終話は、また拓編に戻り、短編があって第二章完結になります。

まぁ、最後の拓編は半分くらい第三章の足掛けのようなエピソードです。


ということで、エダとは第三章のエダ編までしばしお待ちください。


本作は長編です。ほんとに長い話ですが、段々展開はハードになってスケールも大きくなっていきます。

どうぞこれからも「AL」をよろしくお願いします。

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