「タイプ3の脅威」
「タイプ3の脅威」
ALの大群迫る!
しかもその中には巨大AL、タイプ3が何体も!
マシンガンで迎撃するが、窮地に陥る自警団。
そこに飛び出す祐次。
なんと、祐次は一人でタイプ3、2体に立ち向かっていった!
***
祐次はじっと橋の上の戦況を見つめていた。
「銃を出して、安全装置は外しておけ。だけどお前が銃を使うのは最後の最後だ」
「うん」
「俺たちの仕事は救護だ。怪我人が出たら俺が飛び出す。負傷が一人なら俺だけでいく。沢山出たら荷物を持って付いてきてくれ。そして俺の後ろだけ警戒して、ALが来たら教えろ。10m以内に迫ったら、自分の判断で撃て」
「うん!」
「大丈夫だJO! オイラもついてるJO。それにALは<人>じゃないJO。生命体でもないから人殺しにはならないJO」
「生命体……じゃない? 異星人じゃないの?」
「<異星人>の定義が地球の言葉だと適切じゃないから違うとはいえないけど、皆が考えているような知的生命体じゃないJO」
「今日はお前も撃つ事になるかもしれない。撃てるか?」
「うん。分かってる。撃てるよ、あたし」
「『ALも生命体だ。殺すなんて野蛮な事は許されない。話し合えば理解しあえる』……そう言った平和馬鹿も世の中にはいるからな」
その平和馬鹿はALに切り刻まれて死んだ……そこまでは言わなかったが、聞かなくてもエダにも想像はついた。
「そっか」
エダは少し声を落とした。
その人の気持ちは分かる。
エダも、心のどこかでは暴力で対抗する事に嫌悪感を覚えなくはない。もしALが、もっと異星人らしく服を着ていたり言葉を喋っていたりすれば、エダも殺す事を躊躇ったと思う。
しかしALは敵だ。
自分の命を守るためだけじゃない。自分が撃たなければ祐次に危険が迫る。そして他の人の命を脅かす事になる。祐次についていくと決めたのは自分だ。ALを撃てなければ助けになるどころか足手まといだ。
エダは誰にも優しく聡明だ。
戦う事が必要な事は、知っている。
世の中、甘い考えは通用しない。
***
一方……ベンが率いるバリケード側の戦いは最大の山場を迎えていた。
人員の集中投入と一斉射撃によって、タイプ1、タイプ2の大半を制圧した。200体ほどのタイプ1はバリケードと第一陣の包囲を抜けたが、第二陣のアリシア隊がそれを至近距離で撃退する。軍隊ほど洗練された動きではないが、その連携は見事で、今のところ僅かな数のタイプ1が橋から公園の森に飛びこんで逃げていったが、橋の上は突破されていない。
しかし、まだ約300体のタイプ1と、傷だらけだが弱る様子のないタイプ3が2体残っている。
もう橋の北側からALは沸いてこない。今、橋の上にいるALを掃討すれば一息つける。
一進一退の攻防の中……バリケードの上に設置してあった分隊支援用の大口径マシンガンの弾が切れた。続いてトラックに乗せていたマシンガンの弾が切れた。どちらも200発の弾丸が装填されていたが、それは全て吐き出された。
弾の再装填には時間がかかる。この戦闘の最中悠長に弾の再装填は出来ない。
自警団には、もう大口径の武器はない。
タイプ3は、まだ2体残っている。
そのうち1体が、ついに弾雨の中バリケードを超えた。
タイプ3の跳躍力は10mを超える。奴が本気を出せばバリケードも一跳だ。
「散れ!!」
ベンが叫ぶ。だが、タイプ3の巨大な爪が振り下ろされるほうが早かった。
バリケード近くにいたゴードン=ベイトを薙ぎ払うと、さらに近くのハリー=ジョエインに襲い掛かった。ジョエインは背を向けて逃げ出す。だが、その横からバリケードを突破したタイプ1が襲い掛かった。
「ゴードン!! ハリー!」
ベンが44マグナムでジョエインにしがみついたタイプ1を撃つ。
タイプ1は倒したが、ジョエインは苦痛で呻きながらその場に倒れた。
そして、群がっていたALは、新たに目標をベンに変え、四方から包み込むようにベンを圧し包んだ。ベンは咄嗟に2体を撃ち倒したが、3体に組み敷かれ、倒された。
その光景を見た全員の血の気が引いた。
たった一人……いや、二人と一匹を除いて。
ベンが押し倒された瞬間だ。
黒服の男が飛び出していた。そして2秒も掛からずベンを押し倒したタイプ1を正確に狙撃した。
祐次だ。
ステアーAUGを右手に握り、大きな医療バックを背負っている。
そして、その後ろにはエダがUSPコンパクトを握りついてきている。
80mという距離があった。だが祐次は的確にALタイプ1だけを撃ちぬいた。
「俺の後ろだけ警戒してくれ!」
「うん!」
後ろ以外は全て祐次が対応する。
祐次の動きは凄まじい。登場したかと思うと、的確にセミオートで周囲にいたタイプ1を目にも留まらない速さで狙撃しながら走っていく。照準などしているように見えない。祐次は自動小銃であるステアーAUGをハンドガンのように片手で扱い、周囲のタイプ1を蹴散らしていく。エダが警戒する必要などどこにもない。
祐次は新しいマガジンを交換すると、倒れたベンを抱き起こした。
手に、血がついた。地面にも血が流れている。が、多くはない。
「くそ! 背中と腕を切られたらしい! 俺は大丈夫だ!」
ベンは起き上がりながら叫ぶ。
ベンはやらねばならない事がある。
タイプ3はすぐ目の前だ。だが、今ある武装ではこの化け物を倒すことは難しい。
「全員退避!! 一旦逃げろ!!」
すでにバリケードは突破された。
タイプ3が2体。タイプ1が100体はいる。タイプ1の半分は橋の上の人間を無視し、マンハッタンに向かって走り始めた。
100体程度のタイプ1はどうでもいい。問題はベンと祐次の目の前にいるタイプ3だ。
タイプ3は無数の銃撃を受け外皮を酷く損傷していたが、健全だ。
アリシア他二人が、ベンと祐次が逃げる隙を作るため、自動小銃を構えタイプ3を狙う。
その時だ。
「誰か! ショットガンをフルロードで用意しろ!」
祐次は叫ぶと、ステアーAUGを収め、なんと懐からDEを抜いた。そしてゆっくりとタイプ3に向かって歩き出した。
「何やってるんだ! 死ぬぞ!!」
「エダ! お前とJOLJUはベンの傷を見ろ!」
「祐次!? 待って!!」
「いいから見ていろ。後ろにALが現れたら言ってくれ」
そういうと、祐次はDE構えた。
タイプ3は半分崩れた顔で、威嚇するよう咆哮した。
その瞬間、祐次はDEの引き金を引いた。
9連発だ。
全弾、タイプ3の左目に命中した。
そして2秒で新しいマガジンを交換すると、再び8連発した。
「嘘……」
「イカレてる……」
その衝撃的な光景を全員が呆然と見つめた。
「う……嘘……倒した……」
エダも目を見開く。信じられない。
祐次の集中射撃を受けたタイプ3が大きく体を反らせたかと思うと、横に倒れ、そして破裂して消滅した。
祐次は新しいマガジンを交換すると、ベンのところに戻ってくる。
「44マグナムを貸してくれ」
「何?」
「44マグナムだ! フルロードで! タイプ3はもう1体いる!」
ベンはすぐにシリンダーを開け残弾ごと一旦全て捨て、スピードローダーで新しい弾を6発装填すると、銃を祐次のほうに投げる。
祐次はベンからのS&WM29・44マグナムを受け取りズボンに押し込むと、別の仲間から6発フル装填されたショットガン、ベネリM3を受け取った。そしてバリケードをよじ登るタイプ3に向かって進んだ。
あんな装備で何をする気か……全員が息を呑む。ほんの一瞬だが。
次の瞬間、祐次は狙いを定め、ショットガンを放つ。
6発の弾は、驚くほど正確に、全てタイプ3の右目周辺を抉った。
タイプ3は咆哮し、酸の唾を吐き散らす。
祐次はベネリM3を捨て、ベンのS&W M29を構えた。
そして今度も、その傷口目掛け6連発する。
撃ち終えると、その場に銃を置き、DEでさらに8連発撃った。
たったそれだけだ。
だが、タイプ3は急に力を失い地面に倒れると、破裂した。
倒した。
タイプ3……全長6m、体重15tはある巨大なALを、祐次は一人であっさり片付けてしまった。
しかもその攻撃のほとんどは44マグナムとはいえ拳銃で、だ。
それは、とても有り得る光景ではなかった。
だが、現実に、タイプ3は倒された。2体とも、だ。
「タイプ3の脅威」でした。
タイプ3、恐ろしい!
だがもっと化け物なのは祐次だった!
タイプ3はほとんどTレックスですしね。それを44マグナムで狩ってしまう祐次は、もはや化け物です。
タイプ3は絶対に倒せないものではなくて、大量に水をぶっかけたり大口径マシンガンで蜂の巣にすれば倒せますが、それでも脅威であることに変わりはない……のに、祐次は平然と倒します。
44マグナムとはいえ威力は5.56ミリと変わらないので、通用するのは全て一瞬のうちにワンホールショットで撃っているからです。後、ライフルより弾のサイズが大きいことも理由です。ALには貫通力より面積に意味があります。
どっちにしてもこんなことができるのは祐次だけですけど。




