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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第二章エダ編
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「歓迎会」2

「歓迎会」2



ついにエダと祐次の歓迎会が始まる。

みんなの前で挨拶をするエダと祐次。

どうやらエダたちは仲間として温かく迎えいけられたようだ。


新しい生活が始まる。

***



 午後8時になった。


 これまで各所で料理や酒を楽しんでいた人々が、お喋りを楽しみながら、公園中央にある大きなキャンプファイヤーの周りに集まり、輪を作って座りだした。


 そして全員が落ち着いたところで、<リーダーズ>のリーダー、ベンジャミン=アレックがビールを片手に数歩歩んだ。


 最初は集まった面々に挨拶を交わし一通り喋った後、手を叩き全員の静粛を促した。



「今日、突然のパーティーに驚いた者もいるだろう。いつもはもっと前に告知をして開催するのだが、今回は急遽ちょっと変わった旅人をこのNYに迎え入れる事にした。ドクター・ユージ=クロベと、可愛い天使エダ=ファーロング嬢だ。大望のお医者様だぞ、みんな! これで風邪の心配をしなくてすむし、賞味期限の缶詰を食っても安心だ。これだけでも俺たちはハッピーと言えるだろう」


 周囲はベンのジョークに楽しそうに笑う。


「今回仲間になった二人だが、一つ伝えておきたい。二人はこのNYに避難してきたわけではない。この街に安全を求めに来たわけでもない。二人はある東洋人を探すためここに来た。俺や自治組織はそれを受け入れ、協力すると誓った。この二人が信頼できる人間であることは、俺が保証する。だから皆も協力してやってくれ。その代わり滞在中ドクター・クロベは我々の診察をしてくれる。そういう契約だ」


「若い二人の面倒は私とベンがちゃんと見る。だから安心して」


 後ろに控えたアリシアが皆を見回していった。

 <リーダーズ>のトップ1、2がわざわざ相手をする。破格の待遇だ。


「ドクター・クロベは優秀なようだ。あのピエールが絶賛していた。リチャードも腕は保証している。しかし問題は、どうもこの若い医者は英語が苦手で無愛想だ。だが安心していい。看護師をやってくれるエダ君は優しい天使だ。彼女が優しくとりもってくれるから最高の環境だ。見た者もいるだろうが、この通り素晴らしくチャーミングで美少女だ。もし俺がティーンだったら毎日すり傷を作って花を摘んで毎日通うだろう。しかし彼女はまだ11歳だ。子供に笑われたくないから、時々訪ねて眺めるくらいで我慢する。お前らも節度をもって接してくれ。お前ら馬鹿が彼女の可愛い尻を追い掛け回しているのを見つけたら、俺とアリシアが逮捕する。忘れないでくれ」


 ベンのユーモアに皆声を上げて笑った。エダだけは思わぬ紹介に耳まで真っ赤にしたが。


「じゃあ、新しい仲間の二人にも一言ずつ挨拶をしてもらおう。いいかな? エダ君」


「はい」


 エダは答える。そして祐次の手を引いて円座の真ん中まで歩いた。

 まずはエダが挨拶を始めた。



「ありがとうございます。こんな温かくて楽しい歓迎会を開いてもらって感謝しています。世界がこんな風になっちゃって寂しかったけど、ここには多くの人がいて嬉しいです。お料理も美味しいし、皆も優しくて、ここに来て凄くよかったと思います。あたしも、できる限り皆さんの力になりたいと思います。だから困った事があったら何でも言ってください! お花も好きです。だけど、それより皆が笑顔でいてくれることのほうがあたしは好きです」


 エダの挨拶に、周囲も笑みを零す。成程、ベンの言うとおり彼女はユーモアの分かる優しく魅力的な少女だ。そして確かにちょっと見ないくらい、秀麗で美しく愛らしい少女だ。


 エダが終わると、次は祐次だ。エダは座に戻り、祐次とJOLJUが残った。

 エダと違い、祐次は愛想笑いも浮かべず、手の中の紙面を広げた。



「俺が黒部 祐次だ」


 祐次は英語で喋った。


「紹介のあった通り、医者だ。だから風邪でも怪我でも安心していい。俺は無愛想だが、ベンの言うとおり美人の助手がいるから遠慮しなくていい」


 そういいながら、チラリチラリと手の中の紙片を見ている。祐次は予め挨拶文を作り、エダが英文を書いて用意していたのだ。


「俺は<ラマル・トエルム>という男を探すためここにきた。多くは分かっていない。だから色々聞いて回ると思う。悪意はないし、その男も悪人じゃない。ただ会って話をしたいだけだ」


 祐次はそういうと、もう一度紙面を見て手の中に握りこんだ。


「実は日本政府に属していた。日本も崩壊したが、臨時政府を立ち上げ運営している。とはいえ今はフリーだ。だから日本政府のスパイじゃない。俺が言いたかったのは、日本でも生き残った人間がいて、ちゃんと国として活動しているということだ。だから人類はALに完全敗北したわけじゃない。この米国も、きっとALに打ち勝てると信じている。希望を捨てないで欲しい」


 日本政府が生き残っている……そのニュースは、周囲の人々を驚かせた。



「俺の相棒には、エダの他にもう一人面白い奴がいる。それがこのJOLJUだ」


 そういうと祐次は肩に乗っているJOLJUを掴んで周りに見せた。

 周りはこの時初めてはっきりJOLJUを認識し、どよめく。

 誰がどう見てもエイリアンだ。そして今人類はエイリアンと戦っているのだ。

 だがJOLJUに敵意はなく、相変わらずの笑顔で周囲に手を振っている。


「今更エイリアンをみて驚かないと思うが、こいつはいいエイリアンだ。まるで戦闘力はないし、食いしん坊な事を除けば無害で友好的な奴だ。皆とも友達になれると思う。色々知識は豊富で、我々の敵であるエイリアン……ALの事にも詳しい。あの戦闘エイリアンは<AL>という名だ。そして俺はこいつから色々あのALの事や他の異星人の話を聞いた。だからここにいる人間の誰よりあのALには詳しいと思う。分からない事があれば聞いてくれれば教える。そしてあのALが出現すれば、俺が駆逐する。俺は日本政府の中でもALの対応にかけてスペシャリストだった。だからALからも皆を守る。そのために拳銃の携帯許可は貰った。だが俺はけして銃口を人には向けない。だから安心してほしい」


「貴重な医者だ。どこかの荒くれ者に拉致されたんじゃあ困るからな。ドクターにはここのルールに従うよう話はつけてある。安心していい」


 ベンが皆を見回して宣言する。それで一応周囲も静まった。



 祐次は挨拶し元の座に戻ろうとして、何かを思い出し立ち止まり、振り返った。



「最後に言い忘れた。ベンから聞いたが、今は10月らしい。これから寒くなる。インフルエンザの予防注射を始めたい。万全じゃないが、しないよりマシだ。今の人類にとって、インフルエンザはALの次くらいに厄介だからな」


 祐次はそういうと座に戻る。


 途中ベンが出迎え「いい演説だ」と笑みを浮かべ祐次の肩を叩き、耳元でそっと「カンニング・ペーパーは最後までちゃんと読めよ」と囁いた。

 祐次は後半、ほとんど紙面を見ていなかった。

 喋れない演技をするならちゃんとそうしろ、という忠告だ。

 幸いエダはアリシアが声をかけ気を引いたので祐次の独走に気づかなかったが。



 祐次とJOLJUが元の座に戻ると、再びベンが真ん中に進んだ。



「ということで、ワクチンについてはまた後日に連絡する。じゃあ、パーティーを楽しもう! 今日は思う存分バーベキューを楽しんでくれ」


 その言葉に皆が喝采を上げた。

 ベンは再びビール瓶を高く掲げた。



「新しい仲間に、乾杯!」

「乾杯!」


 皆の声と瓶を傾ける音が一斉に重なり、それからは沢山の笑い声がそこらじゅうで起こった。



 堅苦しい……ことはないが、型どおり紹介は終わった。これからは無礼講の宴会だ。


 皆料理を楽しみ、久しぶりに皆で飲む酒を無邪気に楽しむ。



 祐次はベンとリチャードに囲まれ雑談を始めたので、エダとJOLJUはアリシアと一緒に住人たちに挨拶をして回った。皆優しく、温かく迎えてくれた。


 話すうち、このNYには何人か子供がいることも分かった。家族ではなく子供だけで避難してきて住みついたグループもあるらしい。



「お嬢ちゃんは保護者付きだけど、そうじゃないグループもいるの。デズリーって子がリーダーで6人で住んでいる。中々優秀な調達チームよ。きっとそのうち顔を合わすわ」

「子供たちだけのグループですか?」


 エダにとっても他人事じゃない。祐次と出会わず、トビィやジェシカたちが生きていて一緒にNYに辿り着いたら、子供たちだけで生活をしていただろう。そういうケースは有り得る。


「ええ。皆14から16歳。お嬢ちゃんより年長だし、お嬢ちゃんほど賢くはないから期待はしないでね」

「あたしはそんなに賢くないですよ」

「私が見るところ……お嬢ちゃんやサムライ・ドクターはIQの高いホワイトカラー。でもデズリーたちはよくいる米国のブルーカラーの子供たち。差別するわけじゃないけど、お嬢ちゃんは上の人と付き合うほうがいいわ」

「…………」


 米国人社会は上級社会であり頭脳労働者階級のホワイトカラーと肉体労働系のブルーカラーに区別されることがある。ホワイトやブルーというのは着ている服のイメージカラーで、ホワイトはスーツ、ブルーは作業着だ。


 アリシアがいうには、デズリーをリーダーにするグループは、元はストリート系や貧困層出身の子供たちで、逞しく、そしてまだ子供っぽい。根は悪い子ではないが、エダのように行儀のいい子供ではなく日本育ちのエダとは合わないだろう、いうのがアリシアの意見だ。アリシアも元はNY州警察の警官だからデズリーのような若者はよく知っている。


「じゃあ、いつか皆でご飯でも食べましょう♪ ご馳走します。あたし、料理が好きだから」

「お嬢ちゃん、いいお嫁さんになるわ」


 それを聞いて、エダは真赤に赤面した。その様子を見てアリシアは楽しそうに笑いながらワインで喉を潤した。


 これからNYでの新しい生活が始まる。

「歓迎会」2でした。


新しい仲間が皆の前でスピーチするのは米国流ですね。

そしてリーダーがまず代表して演説するのも米国流です。

今回の話で、リーダーのベンやアリシアの人望の高さも分かったと思います。


エダは子供ですが結構しっかりしているので、アリシアなんかはもう友達扱いであまり子ども扱いしていませんね。

一方、ここに定住する気のない祐次は、ちょっと距離を置いている感じです。

この関係が今後どうなっていくか……がエダ編のドラマパートになっていくと思います。


次回も新しい共同体での話です。

とはいえサバイバルな世界。そのうちハードな展開もあるのでご期待ください。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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