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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第二章エダ編
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「新しい生活」1

「新しい生活」



共同体が開いている購買部に向かったエダとJOLJU。

そこは以前の世界と同じようないろんなものが豊富に用意されていた。

平和な買い物に心弾ませるエダとJOLJU。


一方。ユージはベルと医療部門チーフのリチャードを交え、情報公開のやりとりを行っていた。

***



 コロンビア大学は大きな大学だ。


 そしてその構内全体が、まるで<大型ショッピングモール>のように、あらゆる物資が乱雑に積み上げられている。


 品揃えは食料から家電製品、衣料品、雑貨……それだけでなく本やCD、DVD、ゲームのレンタルコーナーまであった。ないのは宝石や貴金属、そして玩具くらいのものだ。商品には値札が貼られ、何箇所かあるレジで購入することになっている。一番安いものは1ドルでセント硬貨はない。安いものは束で1ドル、という感じで売られている。


 構内は午後ということもあり、100人ほどの客がいた。主に女性や老人、子供が多い気がした。

 きっと労働に行った家族や仲間の代わりに買出しに来ているのだろう。皆とても楽しそうだ。



「結構賑わっているね」

「皆、楽しそうだJO」

「ショッピングだもの」

「オイラ、こういうトコは初めてだJO」


 二人は買い物用のカートを押しながら、色々見て回る。なんだか人がいることも買い物が出来ることも嬉しいし、人が普通にいるのも嬉しい。



 値段は<世界崩壊レート>で、元の世界より安い。


 儲けは考えられていない。飽くまでここは交換所で、生存者たちの生活の最低限を支え、ささやかな贅沢を得るための場所だ。衣料や雑貨、家電、水は安く、嗜好品はやや高い。

 

 生活必需品や家電は、危険を冒せば金を払わなくても調達……つまり無人の店や家から盗んできたらいい。ただ、自治体としてはそれを奨励しておらず、できればここで買ってほしい、ということで、これらのものは安いのだ。こういうものの調達は慣れた調達班が行うほうが公立もいいし人も死ななくてすむ。


 エダとJOLJUはそれぞれ大きなショッピングカートを押して見て回っている。


 電池式LEDランタン二つ。LED懐中電灯三つ、蝋燭と蝋燭用ランタンも念のため。そしてポータブルDVDプレーヤーと電池を沢山。炊飯器や鍋やフライパン、そしてキッチン用具と調味料。タオルやトイレットペーパー。石鹸と洗剤と男性用と女性用のシャンプーとリンス。これでJOLJUのカートは埋った。これだけ買って170ドル……確かに安い。

「重くない? JOLJU?」

「カートがあるからモーマンタイだJO♪」

「後は食料品、だね」


 食事はこのコロンビア大学にある食堂で出来る。昼はそこでアリシアを交えて食べた。

 昼は10時30分から15時。夜は17時から20時で、金を支払えば日替わり定食があり、その他少しだが肉や魚の加工品、野菜、調理されたちょっと贅沢な惣菜も売っている。


 昼のランチメニューはコーンブレッド2切れ、塩味のマッシュポテト、チリビーンズ、ベーコンが二枚、スライスキュウリだった。エダには量は問題なかったが祐次とJOLJUは足りなそうだった。質素なのは別にいい。世界が崩壊した今、あれだけちゃんとしたメニューを出せるのはすごいことで、特に野菜を出している点は祐次も感心していた。今は肉も野菜も新鮮なものは限られているし、この街は人口も多いのだ。


 ただ祐次とJOLJUはもっと食べたいだろうし米国食より米飯が喜ぶだろう。



 食料コーナーも豊富だ。保存食が主だが、いろんな缶詰や調味料は揃っているし、チョコレートやスナック菓子、プロテインバー、炭酸ジュースなんかも山積されている。これらは元の世界よりやや高い。野菜は農場で採れたものが高いが少しだけ売っている。肉は鹿や猪、ノブタの肉の塩漬けや燻製が置かれていた。これは住民が狩りで獲ってきたものだろう。他に手作りの魚のオイル漬けもあり自炊も出来そうだ。大きな冷凍庫が一台だけ動いていて、そこには肉や魚の切り身が凍らされている。これは値段が高かった。



 幸い米はあった。カリフォルニア米だ。むろん今年生産したものではなく古米だが。


 米を10キロ。野菜と燻製肉、粉末ポテトと粉末卵、牛乳を買い、後は乾麺や缶詰を色々買い、祐次のためのブランデーを買う。こっちのほうが全部で260ドルと高くつついた。


 これでエダのカートも一杯だ。



「一度家に帰って、荷物を置いてからまた来ようか? JOLJU」

「了解だJO」


 まだお金はある。家は1ブロックしか離れていないし、祐次は音楽CDを欲しがっていたしJOLJUはお菓子が大好きだ。エダも本とか冬用の衣服とか着替えが欲しい。今持っている着替えはリュックに二つ分詰めた分だけで長期滞在するほどは持ってきていない。そして一つはシボレーに置いてきた。シボレーの荷物はいつここを出るか分からないから持っては来られない。だからここでの生活用に別に用意しなければならない。


「でも使いすぎないようにしないと」

「買い物好きは女の子の性分だから問題ないと思うJO」

「JOLJUはヘンな事知っているね」とエダは思わず笑った。



 こうして一度二人は家に戻った。

 祐次はまだ帰っていなかった。





***





 コロンビア大学にある<リーダーズ>の自治事務所に顔を出した祐次は、構内の一室に通された。


 待つ事10分。


 40歳前後の壮年の長身の男と、50代の中背の痩せた男が姿を現した。



「俺がこのNY<リーダーズ>のリーダー、ベンジャミン=アレック。ベンでいい。こっちが<医療担当>のチーフ、リチャード=バーナーだ。ようこそ、ドクター・クロベ」


 リーダーのベンはそういうと祐次に握手を求めた。祐次はまずベンと握手を交わし、それから後ろに控えるリチャードと握手を交わした。

 ベンは笑みを浮かべながら祐次の顔を覗き込む。


「色々話を聞きたい。君たちは生存者ではなく旅人だと言った。どういう意味なのか知りたい。そしてピエールのいう通り凄腕の医者かどうかもな。それで君たちの処遇も変わる」

「日本語はどうした?」


 確かこの男は日本語で挨拶をした。

 だがベンは頭を振り「あれはガイド本にあった言葉だ。よく知らん」と笑う。


「英語は分かるのだろう?」

「…………」

「通訳のお嬢ちゃんは必要ないはずだ」

「何故分かる?」

「欧州から渡ってきた男が、英語が喋れないはずがない。ピエールも日本語は喋れないのに君とコミュニケーションを取っていたようだ。それに昨日の会話で確信した。君は、あの少女が訳さずともこちらの話の内容を理解していた。顔を見れば分かる」


 祐次は黙った。


「日常会話程度というが、アクセントも発音もナチュラルで自然だ。英語片言の米国人も沢山いるがお前は違う。第一今こうして会話が出来ている。違うか? 若造」


 祐次はしばらく……といっても5秒ほど考え、頷いた。


「英語は喋れる。早口も悪口もよく分かる。しかしよく観察している」

 祐次は観念して英語で答えた。流暢で米国人と変わらない。


「俺は元ニューアーク市警の殺人課の刑事だ。嘘を見破る本職だ。造作もない」

「必要な嘘だ。できれば付き合ってくれ」

「あのチャーミングな女の子を守るためか?」

「そうだ。あいつは友達を多く失った。そして俺はあの子の死んだ友達に誓った。何があっても絶対あの娘を守ると。ALからも……愚かな人間からもだ。そのためだったら俺は何でもする。安全を守るためには、俺の傍で通訳をしてくれるのが一番だ。いつも目の届く場所にいるからな」


 祐次が日常会話レベルでしか喋れない……ということになれば、どこに行くにも祐次とエダの行動は一緒になる。そして祐次がVIP扱いを受ければ、当然エダもそれと同じ扱いを受ける。それが祐次の狙いだ。


「ま、12歳以下の子供を一人にするのは罪になるからな」


 州によって10歳だったり12歳だったりするが、そういう法律が米国州法にある。崩壊した今、そこに拘る必要はないが、やはり米国人の大人の感覚としては子供を一人にしておくのには抵抗感がある。


 もっとも……『大人は30歳から』という米国社会からみれば23歳の祐次は子供ではないが一人前の年齢ではない。大学生などまだ青臭さがたっぷりある無鉄砲で無邪気な存在だ。だがこの祐次だけはその青臭さはない、とベンたちも感じ取っている。


「この共同体のほうが安全だとは思わないか? 君が一人で守るより大勢な者が守ってくれる。アリシアから聞いたが見た目だけでなくとても聡明で魅力的な少女だ。アリシアもとても気に入っている。俺だって彼女をみた時、モデルのような美少女だと驚いたし、守りたいと思った。ここにはちゃんとした大人が2500人はいる」

「1000人いようが2000人いようが関係ない。まず、その誰よりも俺は強い。それに2500人の保護者は多すぎるだろ? 皆が取り合いになればエダが戸惑う。結局、誰かが全ての責任を背負わなければならない。だが自分の命以上にあいつのことを考えられる人間はいるか? あいつが成人するまで確実に守ってくれるのか?」

「…………」

「だが俺は全責任と、命を賭けてあいつを守る。自分の命より大切だ」

「…………」

「そのためには俺の傍にいてもらう必要がある。あいつには医術のサポートも教えたし薬学も教えている。賢い子だし、ああ見えて勇気もあるし度胸もいい。いい看護師だ。いい医者にもなれるかもしれない。何より俺が仕事がしやすい。それに……俺は料理がまるで駄目でな。あいつには料理が上手いんだ。胃袋を掴まれて離れるに離れられない」


「とんだ魔性の天使がいたものだな」

 ベンは笑った。

「分かった。君が異常性欲者でない限り、君たちの関係に口を挟まないと約束しよう。元々そういう話だからな。そういう変質者には見えないがな」


 そういうとベンは微笑むと、祐次の肩を叩いた。


 二人が話している間にリチャードが椅子を三つ用意していた。


 三人はそこに座る。



 これからは医者としての仕事の打ち合わせだ。

「新しい生活」でした。


このNYの共同体は、エダたちが思っているより物資しも人も多く、安心できる平和な待ちだった。

新しい生活のため色々買い物をするエダたち。


一方ユージはベンたちに呼ばれ、色々質問を受けています。

ベンたちにとってユージはかなり異質ですしね。医者であることもそうですが、世界には詳しいし恐れてもいないし何か沸けありそうですし。

まぁまだ完全には信頼されていませんね。それはユージもそんな感じですが。

次回はユージとベンたちの話です。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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