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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第二章エダ編
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「NYの変貌」

「NYの変貌」


アリシアの案内でNYに入ったエダと祐次とJOLJU。

移動しながらさまざまな話を聞く。

この街の話。そして米軍の存在。


そして車は彼ら共同体の本部に到着した。

***



 シボレーをリバーパークの駐車場に置き、用意された別に車に移ることになった。


 祐次は自分の荷物と医療道具や薬を入れたリュックを背負った。

 エダも自分のリュックと食料の入ったリュックを背負う。JOLJUはせっせと大好きな食料品を運んでいた。


 助手席にいたアリシアは、シボレーに積まれた荷物を点検している。

 食料、医薬品、ガソリン、そして銃と弾。

 かなり豊富にあり三人なら10日は問題なく過ごせるだろう。


 アリシアの関心は銃だ。


 口径別の自動小銃が5丁。サイズ別の12Gショットガンが3丁。SMGが3丁、50口径ライフルが1丁。分隊支援機関銃が1丁ある。完璧といっていい品揃えだ。



「医者の坊や。アンタ、一人でこれを使いこなすの?」

「ああ。ALによって使い分けるからな」


 祐次は答える。

 むろん日本語だからエダが通訳する。



「長物も一丁持ち込んでいいよ。特別にね。ああ、皆には内緒よ?」



 これだけの重火器が使えるということは、戦闘力も相当高い……とアリシアは判断した。ならば持たせておいてもいいだろう。


 祐次は少し考えた。



「タイプ3の出現率は? 恐竜みたいなALだ。出てくるだろう?」

「ええ。月に5匹くらいかしら? 多いときはもっと出るけど。マシンガンで蜂の巣にして対処しているわ」

「タイプ1は多いか? 一番見かけるグレイ・タイプのヤツだ」

「アレは多いよ。どうやって入るのか封鎖エリア内にも現れる。被害も一番ね」

「それは世界どこでも一緒だな」


 そういうとユージは使い慣れたステアーAUGと、予備マガジンの詰まったバックを掴んだ。バックの中にはステアーのフル装填されたマガジンが9つ入っている。


 それら荷物を、<リーダーズ>が用意した、使い込まれ汚れたセダンの後部座席に積み込んだ。



 ここからはアリシアの運転だ。エダが助手席、祐次とJOLJUが後部座席だ。


 同性同士だし、言葉が通じることもあって会話は主にエダとアリシアの二人の間だ。


「NYは初めて?」

「ちゃんと来たのは初めてです。あ、でも少しだけ……日本から飛行機でJFK空港に来て、両親と3時間くらい観光しました。すごく大都会で沢山の人がいました。うん、東京より凄かったです」

「お嬢ちゃんは日本育ちなの?」

「はい。1年前まで東京に住んでいました。だからどちらかというと日本語のほうが得意かも?」

「変わっちゃったわよ? NY。びっくりしないでね?」


 今、ハドソン川沿いのリバーサイド・パーク沿いを走っている。今は森が広がり、街並みは見えない。


「私たちが住んでいるのは主にセントラル・パーク周辺よ。マンハッタン島を閉鎖して、ここで住んでいる。住人は2472人。後、ブルックリン北部に341人、ブロンクスに268人いるわ。3081人ね。これを42人の自警団と20人の自治責任者で治めている」

「結構多いんですね」


 エダはそう答えたが、すぐに「それは違うかも」と考え直した。人口約2000万のNY大都市圏で全生存者が3081人というのは少なすぎる。0.001%以下だ。



「今がギリギリね。これ以上だと多分食べ物がなくなって冬が越せないし」

「今……秋なんですよね?」



 エダの最後の記憶では3月末だった。トビィたちは体感的に5月頃だといっていたが、現実には9月頃だった。これは祐次から教えられた。だから祐次は「冬服を持ってこい」と言ったのだ。


 祐次は夏の終わりの一番船で移動しやすい時期を見て渡米した。


 エダたちが時間を飛んだのだ。

 こういう事はよくあって原因は<時空連続帯ハビリス>にある事はJOLJUが教えてくれた。ただし正確に今が何月何日かは誰も分からない。




「一応、私たちは今9月28日だっていうことにしているけどね」

「オイラの計算だと、今10月2日だJO」


 天才的な天文学者がいたら、月の満ち欠けで計算して弾き出すのかもしれないが、それは無理だろう。月日など生活者たちが困らなければそれでいい。


「エイリアン君のほうが正しいかしら? まあ、近いしいいんじゃない? 今日が何日でも困らないし。トウモロコシは例年通り収穫できたし、小麦も今のところ順調だから冬は越せそうだけど」


「どこかで農業しているんですか?」


「しているわ。結構見たら吃驚するわよ? セントラル・パークは今じゃあ農場だしね。他にバン・コートラント・パークも耕しているわ。豚や牛や羊や鹿、鶏を飼っているの。それでも3000人を支えるのは無理だけど、調達には行くし備蓄はしているから、今のところ飢えてないわ。半年に一度はキャラバンを組んでフォート・レオナード・ウッドと物資のやり取りもしている。あっちもジリ貧だけど」



「フォート・レオナード・ウッド? 米軍か?」


 祐次が初めて会話に割り込む。これは英語で言ったからアリシアもすぐに反応した。

 フォート・レオナード・ウッドは有名な陸軍基地だ。

 場所はミズーリ州で中部に属し、近いとはいえないが、米国の尺度でいえば遠くはない。



「ええ。米軍がいる。生存者も一番多いわ。3000人以上収容していて、兵士も1000人以上いる。彼らは農業もしているし、石油の精製もしているから、彼らから物資を分けてもらう。代わりにこっちからも物資を送ったりするけど」


 約4000人以上だ。これは大規模だ。何より兵士が1000人近くいるのは頼もしい。


「軍があるなら、何故そっちに合流しない?」

 と祐次。これは日本語だ言ったからエダが通訳する。


「3000人を移動させる方法がないわ。行く途中、全滅するのがオチよ。5、6人の精鋭が行くならともかく、女性や子供や老人には無理。第一キャパシティーが一杯で、あっちだってそんなに増えたら養えない。多分、フォート・レオナード・ウッドの米軍が唯一機能している米国政府の組織よ。全滅したら栄光ある米国合衆国の残影は完全に消える。だから今のところ無茶はしない」


「今の世の中、自活できる数は最大5000……だろうな。それ以上は食料がもたない。ALがいなくなれば話は別だが」


「貴方、日本の政府職員だって言ったね? 日本はどれくらいいるの?」


「似たような規模だ。東京の政府直轄は5000人にはいかない。京都にもまとまった町がある。全国にはもう少し生存者が散らばっていて合算すれば、もう少し生存している。あまり一箇所にかたまると生存圏を食い合って自滅するからな」


 エダは通訳しながら……日本の生存数の多さに驚きつつも現実の厳しさも知った。


 祐次の話だと、日本でも生存者は1万人から1万2000人ほど。これまでの話の中で一番多いが、元々1億3000万人の人口がいて、その生存数だ。



「日本でも、どこか防衛に適した手頃な島に移民する案はあった。本土と橋で繋がっている淡路島や周防大島、もしくは自給できる佐渡や八丈島が候補地に挙がったが、結局移動の方法がなくて計画は進んでいない。島にいくのは生活圏維持にはいいが、ガソリンがないんだ」


「私たちは米国東海岸の中部から北部。軍の活動は米国中部まで。マイアミに少しいるって話は聞いた事がある。西海岸は知らないわ。私たちみたいに共同体があるかもしれないけど。米国は広いからね」

「そうですね」


 そのどこかに<ラマル・トエルム>はいる。

 それが日本人もしくは日系人だとすれば、西海岸の大都市かアジア系移民の多いカリフォルニアのほうが可能性は高いのかもしれない。



 そんな話をしているうちに、車はリバーサイドを抜けた。

 そしてセントラル・パークが見えた。


 ぱっと見、分からない。セントラル・パークの北側は森だ。


 セントラル・パークはフェンスで囲まれていて入れない。そして豚や牛が森の中を歩き回っている。それを世話する大人たちが何人かいた。



「わあっ!」


 車がさらに南下した時、エダは声を上げた。



 そこは一面、畑だった。

 本来芝生がある場所のほとんどが畑に変わっている。


 小麦、トウモロコシ、ジャガシモ、キャベツ、トマト、ニンジン、キュウリの畑が並び、手製のビニールハウスがいくつも建っている。そしてその畑の間を鶏や豚たちが忙しそうに駆け回っていた。



「これが……あの有名なセントラル・パーク!?」


 思わず叫ぶエダ。

 世界一有名な都会のオアシスは、原始的で生活観ある農場と牧場に変わっていたのだ。これを見て驚かない人間はいない。すっかり風景が変わってしまっている。セントラル・パークは広大な都会の公園だから中々壮快な風景だった。


 そしてそこで働く人たち。大人だけでなく、まだ10歳に満たない子供や老人もそこで汗を流していた。

 ただ……唯一違う点は、時々腰にホルスターをつけ拳銃を携帯した大人がいることだ。そして所々に櫓が立ち、そこで周囲を監視する人間はライフルを手に持っていた。そこに油断はひとつもない。



「……ここにも、ALは現れる……?」

「時々ね。封鎖しているのに突然出現するわ。一応作業の責任者は拳銃携帯を許可して渡してあるの。単発なら自分たちで対処してもらうけど、群れが来たら私たち自警団が対処する。皆トランシーバーを持っていているから」


 案内のドライブも兼ねているのだろう。車はコロンバス・サークルを回ってアッパーイーストサイドに入り、再び北上してセントラル・パークの北に出てハーレム地区に入った。ハーレムに入ると、町の所々に生活する人たちの姿が見えた。


 そしてディヴァイン大聖堂の横を通り、コロンビア大学の前で止まった。



「我々<リーダーズ>の本拠地はここ、コロンビア大学よ。有名だから名前くらいは知っている?」


 NYの観光名所にもなっている世界的に有名な大学の前は、頑丈なフェンスで囲まれ、沢山の車やテントが並び、大きなガソリンタンク車が連なり、太陽発電のパネルが隙間を埋めるように並んでいる。目前にあるモーニング・サイド・パークにも沢山の大きなテントが建っていた。



 その光景は仰々しく、まさに<基地化>されていた。

 非常事態対応だが、それでもちゃんと人間が社会を形成している。

「NYの変貌」でした。



今回重要だったのは米軍が存在していること。ほかに生存者がいること。NYには3000人いるということ。

3000人だと……ちょっとした村ですね。

そして皆自給自足をしています。


ということでエダたちのNYでの生活は始まりました。

本編はこれからです。エダたちがどう受け入れられていくか、楽しみにしていてください。


これからも「AL」をよろしくお願いします。

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