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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第一章・エダ編
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「始まりの夜」1

「AL」本編第一章「始まりの夜」。


ペンシルバニア州モンゴメリー郡ロンドベル。

その田舎町の子供たちがスプリング・キャンプに向かった。

その一人、少女エダ=ファーロングは、夜空の中に不思議な光を見たとき、悲劇は始まった。

***




 モンゴメリー郡の隣は米国最古の首都であり大都市であるフィラデルフィアである。


 郡の東側はフィラデルフィア都市圏に入り住宅が多いが、北西に進めば豊かな北米の山や森林が広がり、米国の昔ながらの風景が広がっている。都会と田舎の丁度中間といっていい地域で、全米「家族で住みたい地域ベスト10」に選ばれたこともある。犯罪発生率も低く、平和で長閑でいい地方だ。


 ペンシルバニア州モンゴメリー郡ボワナ湖州立キャンプ場は、モンゴメリー郡のやや北西側にある、自然豊かな自然公園だ。夏休みのシーズンになれば近隣の家族連れで賑わう。大きな街道から外れているから、性質の悪いバイカーやキャンパーたちも来ない、とても平和なキャンプ場だ。ちょっと大きめのログハウスが五棟あり、そこに宿泊する事もできる。



 キャンプをするには少し早い春……このキャンプ場は若い少年少女たちで賑わう。



 隣接するロンドベルという小さな町の学校キャンプが、ここで開かれるからだ。二人の引率の教師と共に、今年は21人の10歳から14歳の子供たちがやってきた。


 この郡は小・中学校一貫で、15歳まで同じ学校だ。

 小さい町の一つしかない学校だから、皆顔馴染みで友達だ。



 最初の日……そして最初の夜はほとんどパーティーだ。


 特製のバーベキューが用意されたし、子供たちが各々持ち寄った「我が家のスペシャル」な手作り料理や手作り菓子を披露しあう。そしてそれが終われば、焚火を囲みなんでもない雑談を皆で交し合う。夢のように楽しい時間が過ぎ去っていく。


 11歳の少女、エダ=ファーロングも、思う存分キャンプ初日を満喫した。




***


 


「あ! 駄目なんだよ? キャンプ中はスマホ使っちゃ」


 寝室で、年長の友達ジェシカ=アノーが頭から毛布を被っていたので心配して覗き込んだら……具合が悪いのでもなんでもなく、彼女はスマホで誰かとチャットを楽しんでいた。



「あはは♪ びっくりしたじゃん、エダ。先生かと思っちゃった」

「ジェシカ!」

「怒らない怒らない。怒ると折角の美人が台無しだよ?」

「もう……ジェシカはあたしたち女子組のリーダーなんだよ? ルールは厳守、だよ?」



 そういうとエダは二段ベッドの上で可愛い寝息を立てているペニー=リベルの顔を覗き込んでジェシカを見つめる。


「ペニーやクレメンタインはもう寝ているンだよ?」

「二人とも10歳のお子ちゃま。子供はもう寝る時間だからね。ほらほら、エダも寝ないと、明日からのスカウト体験で居眠りしちゃうよ~」


 ふふっとジェシカは悪戯いっぱいの笑みを浮かべエダを見つめる。


「それともエダも私と一緒にチャットする? 今、男子たちとチャットしていたんだけど? 誰がこのグループで一番チャーミングかって」

「…………」


 それを聞いてエダは途端に真っ赤になった。それを見てジェシカは堪らず噴出す。エダは11歳だが、思った通り全然晩生で、どうやらまだティーンの恋愛が絡む話は苦手なようだ。そんなエダが、ジェシカには堪らないほど可愛い。


 いや、ジェシカだけではない。エダは今回参加した女子のなかで群を抜く人気があることをジェシカは知っている。男女共に。



 思えば一年前、彼女が転校してきたときから、学校ではちょっとした話題になっていた。



 米国人ぽくない育ちのよさと天真爛漫さ。

 そして周りが思わず嘆息を漏らすほど端正で美しい容貌。


 プラチナ色の癖一つないストレート・ロングヘアーは天を流れる星の河を思わせる艶やかさと輝きを持ち、深い碧い瞳は極上のエメラルドのように澄み光っている。極上のクリームのように滑らかで白くそばかすひとつもない健康的な肌がそれらをさらに際立たせている。天使のような……というのは彼女の場合誇張ではなかった。どこからどうみても極上といっていい美少女だ。


 東海岸は白人が多い地域だが、それでも彼女の美貌は群を抜いていた。NYやLAならば、モデル業界や芸能事務所が放っておかなかったに違いない。こんな田舎ではかなり稀有な存在だ。


 そんな美貌と魅力を持つのに、彼女はそれを自慢もせず驕る事も偉ぶる事もなく、誰にでも優しく真面目で人懐っこく年上には素直で年下の面倒見もいい。そして頭もいい。この町に来る前は日本の首都東京に住んでいて、いい教育を受けたらしく、学力は中学2年のジェシカと変わらない。ここまで完璧で可愛い存在はハリウッドにもいないだろう。



 エダは真面目だが堅苦しくない。



 周りを見回し、他の子たちが寝ているのを確認すると「あまり遅くまでは駄目だよ? ジェシカも早く寝てね? 先生が来たら怒られちゃうからね」と注意だけして、さっさと自分のベッドに向かった。


 エダのベッドは窓際にある。そこから見上げれば、満天の星空が見えた。




 ……こんな綺麗な星空が見られただけでも、来て良かった……。



 周りには星の輝きを邪魔する光源は何一つない。まるで宝石箱のような星が輝き月は煌々と白く光る。夜空で、いつまで見ていても飽きそうにない。そのうち疲れて睡魔がやってくるまで、この幸福を楽しもう……と、エダは一人微笑む。



 そんな時間が30分ほど続いただろうか……。



 ふと、エダは夜空にうっすらと極彩色の光の帯のようなものがかかっていることに気付いた。



 ……オーロラ……?



 いや、そんなはずはない。今は春だしここはペンシルバニアだ。オーロラが見えるはずがない。



 その時だった。


 小声だが、ジェシカが何か騒いでいるのが聞こえた。


「ジェシカ?」

「ごめん、エダ。寝てた? 起こしちゃった?」

「どうかしたの?」

「チャットが通じなくなったのよ」


 不思議そうにスマホを弄くるジェシカ。チャットだけでない。インターネットも通じない。それを聞いたエダは思わず天を見た。極彩色の光が明らかにさっきよりも強くなっている。


 これは異常だ。


 思わずエダが二段ベッドから降りて窓際に立ったとき、それは不意に襲ってきた。

 



 凄まじい地震が発生したのだ。


 エダもジェシカも咄嗟にベッドの柱にしがみつき、寝ていた子供たちは目を覚ますと悲鳴を上げた。



「みんな! 毛布を被って!! 立っちゃ駄目!!」



 ベッドの柱にしがみつきながらエダは叫んだ。ペニーもクレメンタインも、そしてジェシカも毛布を頭から被りその場に蹲る。



 地震は100秒ほど続いた。



 止んだ時、壁にかけられた絵や時計は床に落ちて砕け、室内の家具はほとんど倒れていた。だが幸い部屋の中央にあった二段ベッドは重く造りもしっかりしていたので無事で、彼女たちは怪我をすることはなかった。


「震度5……ううん、震度6!?」

「エダ? 何その<シンドロク>って?」

「日本の地震の強さを数値。あたしもこんなに強い地震は初めてだけど、多分そのくらい。マグニチュードだと……マドニチュード7くらいだよ」


 エダは日本育ちだ。関東在住だったから地震は何度か体験している。過去最大震度4は体験したことがある。また日本では地方はバラバラだが二年に一度くらい震度6で揺れることがあり、そのニュースを見ている。その経験から今の揺れを推測した。


「私、地震なんて生まれて初めて!」

 とジェシカは興奮が治まらない。

 他の二人は恐怖で泣き出している。米国東海岸でこんな大地震が起きるなど大事件だ。


 さすがに今の地震でログハウス全員が目を覚まし、騒ぎ始めた。

 エダは毛布を掴むと、スニーカーを足に嵌めた。


「みんな! 野外に一度避難するの! 地震は一回ですまないかもしれないの! 余震があるかもしれないし、もっと大きな地震が来るかもしれないから!」

「本当!?」

「はやく! 毛布を頭から被って外に出るの!」


 エダは叫びながら年少の二人をベッドから降ろし、毛布を頭から被せる。それを見て同じようにジェシカも毛布を被り、クレメンタインの手を引き外に飛び出す。その後、エダもベニーを釣れて外に飛び出した。


 三分後……教師二人と21人の子供は全員野外に出た。全員興奮が抑えきれず教師たちも例外ではない。何せこんな大きな地震は誰も初めてのことだ。元々米国東海岸は地震の少ない地域で、ましてやマグニチュード7レベルの大地震となれば歴史的な大地震だ。


 外に出た直後、電気が消えた。

 さらに、半数の子供たちが手にスマートフォンを持っていたが、どれも通信不良となったのだ。


「無事か!?」

 エダとジェシカのところに一人の少年が駆け寄ってくる。

 彼はトビィ=レタフォード。14歳で男子組のリーダーで、エダやジェシカの近所に住む少年だ。三人は仲がいい。


「俺たちのスマホも駄目だ。テレビも駄目、電気も駄目。どうなってやがるんだ?」

「地震で電気ケーブルが断線したのかも……」

「スマホは繋がるはずだろ? アンテナは立ってるんだぜ?」

「おい、あれを見ろよ!!」

 誰かが叫び天を指差した。全員が空を見た。



 それを見て全員言葉を失い、呆然と空を見上げた。


 空が白く光っている。


 そして無数の赤く光る流星が降り注いでいる。真夜中なのに、天を覆う極彩色の光が照明のように明るく夜ではないようだ。赤い流星の数は徐々に増えていくようだ。


 オーロラでもなければ、太陽フレアでも、電離層の異常でもない。


 これが何か誰も分からない。全員、呆然と空を見上げる。


 そうするうち、地鳴りというか、空気が震える音というか……正体不明を低く重たい音が聞こえ始めた。その音も段々大きくなると、あっという間に轟音となった。


「何が起きているんだ!!」


 引率の若き教師フィリップ=パミロが叫んだ瞬間、空は巨大な白い光の爆発が起きると、一瞬にして光は地上に達し、世界を飲み込んだ。


 と同時に、その場にいた全員は原因不明の衝撃を受け、一瞬にして意識を失った。



 この現象が何かは、誰も分からない。



 だがこの瞬間から、悲劇が始まった。



「AL」、本編がついに始まりました!


第一章はエダ・ルートです。なので拓は出てきません。

うちの作品を知っている人は分かることですが、そのうち祐次は登場します。プロローグでもそう書いていますし。


といっても第一話、まだ世界は崩壊していません。ですが今回、ついにその前兆が現れました。

ここから「AL」の恐ろしさが分かってきます。詳細な描写もこれからです。

今回の話だけは世界崩壊前です。


時系列は一旦忘れてください。実は色々細かい設定があって間違えているわけではありません。それらは後々分かってくると思います。


ということでついに本編始まりました。

更新はゆっくりですが頑張って進めていくので楽しみに待っていてください。


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