「エダのアイテム」
「エダのアイテム」
祐次が戻ってくる。
そこで改めてこの世界でのサバイバル術を聞くエダ。
エダは改めて、今の与世の中が異常だと知り愕然となる。
***
祐次が色々荷物をもって帰って来た。
「すまん。抗生薬がたっぷりあって集めていたら遅くなった。だけどいいものもあった」
そういうと祐次はバックからチリコンカンの缶詰を二つ取り出した。
「ドラッグストアー・オリジナルのカロリーダイエット版だ。女の子だからローカロリーは好きだろ? 味は知らん」
エダは笑った。
「あたし、そんなにカロリーは気にしていないケド。うん、ありがとう。チリコンカン、いいね! おにぎりだけじゃあ寂しいしね。どこかで温められるといいんだけど」
「ここはアウトドア・ショップだ。駐車場でキャンプだな」
携帯燃料や野外用コンロもあるからそれくらいやるのは簡単だ。
祐次は店内にあった登山用の大きなリュックを掴み、銃のコーナーに行く。エダもそれについていった。
「祐次。あたし、銃、決めたよ?」
エダはそう言って祐次にUSPコンパクトを見せた。
祐次はそれを受け取り、笑った。
「いいチョイスじゃないか。俺も好きだ。確かもう一丁棚にあったな? 丁度いい」
祐次はカウンターの内側に入って、一つのガンケースを取り出した。
その中にはフラッシュライトが装着してあるUSPコンパクトと予備マガジンが五つあった。こっちは客が預けていったのだろう。
「フルセット揃っている。探す手間が省けたな」
「同じ銃? そっちはライト付きなんだね?」
「二丁用意するのが基本だからな」
「祐次も二丁持ってたっけ?」
「一丁は普段使用するほう、もう一丁は隠し持つ携帯用だ。どうせフラッシュライトは装着する予定だった」
そういうと祐次は自分の右太股に装着しているレッグホルスターをエダに見せた。
このレッグホルスターは普段身につけているわけではない。外に出るときズボンの上から装着して出て行く。
ここにはグロックG18Cと予備マガジンが入っている。
「このレッグホルスターが一番楽だ。ショルダーホルスターは慣れないと肩が痛くなるし、簡単には外せない。上着を脱がなきゃいけない」
「うん」
「軍やSWATはこれだ。これならワンタッチで外せるし、予備マガジンも収納できる。ライト付きでも問題ないが、ベストじゃない」
「問題がある?」
「外から丸見えで隠せない」
「隠す?」
「<ザ・ウォーキング・デッド>でもあっただろ? 敵が『銃を捨てろ』ってな。当然、みんなこの目立つレッグホルスターの銃を外せって言うさ。だけど銃を手放すのは命に関わる。だから一丁は隠す。出来る限り隠し通す」
「祐次ってそんなに銃持っているの? ええっと……DE44とレッグホルスターの銃、二丁じゃないの?」
祐次は苦笑するとカウンターの上にDE44を置き、レッグホルスターからフラッシュライトを装着して20連マガジンを装填したグロックG18Cを取り出した。
「これだけでOKか?」
「まだ持っているの?」
「実はある」
そういうと祐次は背中のヒップホルスターから別のグロックG18Cを取り出した。こっちはライトもついていないし、マガジンもノーマルだ。ホルスターも外につけるタイプではなくズボンの下に差し込むタイプで、ぱっと見持っているようには見えなかった。
「知らなかった!」
「インサイドホルスターで隠す事が前提のホルスターだ」
「へぇ~」
「銃が同じだろ? マガジンは共有できる。まぁDE44も入れたら、俺は常に50発くらいは持っている。で、これが最後の切り札」
そういうと祐次はブーツの中からS&W M49を取り出した。これにはエダも驚いた。
「4丁も持っていたの!?」
プラス自動小銃やSMGも持っている。つまり実質5丁から7丁持っていることになる。弾は300発以上だ。
これにはエダも言葉が出ない。用心深いなんてものではない。
だがすぐに祐次の意図も分かった。
教えてくれたのはやはり<ザ・ウォーキング・デッド>だ。
作中銃を放棄するよう警告を受け窮地に陥るシーンは何度もあった。だがこれだけ銃を隠し持っていたら反撃できる。祐次はそこまで考えている。
そしてエダに二丁持たせるのも同じ考えだ。
この世界で銃は絶対必要なアイテムだが、露骨に持っているのを見せると他人は警戒するだけでなく、それだけで敵対心を抱かせることにもなる。
だからぱっと見、持っていないように装う。DE44等をショルダーホルスターで隠して持っているのはそのためだ。
「特にお前は重要だ」
「なんで?」
「11歳の女の子が二丁も銃を持つはずがないし、ボディーチェックもしないだろうしな」
「…………」
常識的に考えると……祐次の言うとおりだ。まさか11歳の女の子がそんな重武装しているとは誰も思わない。
これはALの対策ではない。明らかに対人用だ。
さすがにそこまで必要か……そう思うと恐怖を覚える。
だが別に祐次が特別でないことも分かる。ここまでするのは祐次の経験からだ。
エダが不安そうな表情を浮かべたので、祐次は紛らわそうと笑って頬を撫でた。
「最初に脅しておかないと、いざそういう時が起きたときショックだろ?」
「う……うん」
「二丁持つのは慣れるためだ。少なくとも一丁はいつも肌身離さずに持つようにするためのな。いつALが飛び込んでくるか分からない。アジトで休んでいるとき、食事中、いつ飛び込んでくるか分からない。それも事実だからな」
「うん」
それに、エダが持つのは祐次にとってのバックアップでもある。
祐次は大人だし、これだけ持っていれば警戒もされる。祐次の銃が全て奪われたとき、エダが二丁持っていることが二人を救うことになるかもしれない。
銃がいかに大切かは、ドラマではなくロンドベルの経験でエダもよく分かる。
もし銃と弾が豊富にあれば……トビィたちは死なずにすんだのかもしれない。
「レッグホルスター用はフラッシュライトをつける。これは夜、懐中電灯代わりだ。銃を持ってライトを持つと両手が塞がるだろ?」
「そっか。銃とライトがセットなら、片手が空く!」
「そういう事だ。だからライト付きはレッグホルスター。ライトを付けると隠し持てないし、ゴツゴツしていて体に痛いからな。だから普段持つ銃は……そうだな。エダ……お前の場合はヒップホルスターがいいだろう。上着を羽織っているし、USPコンパクトなら目立たない」
そういうと祐次はホルスターのコーナーに行き、ハードナイロンのパドルホルスターを手に取ると、エダからUSPコンパクトを受け取りホルスターに入れた。
「これはパドル・ホルスターだ。ベルトに差し込むだけで簡単に装着できる」
そして祐次はエダの腰のベルト……4時あたりを撫でる。
「腰の横から後ろのポケットの間に差し込む。このあたりに付ければ、上着を着ればぱっと見には持っているようには見えない。ここより後ろだと見つかりにくいが銃は抜きづらいし、ここより前だと持っているのがバレる」
「うん」
「車に乗るとき痛かったら、横にズラしたり左腰につけたりして調整したらいい。クロスドロウだ。どっちにせよ、慣れるために当分寝るとき以外は身につけておく事」
「それも、なんだか<ザ・ウォーキング・デッド>の世界だね」
「そうだな。じゃあ、飯を食ったらまた射撃練習だ。今度はそのUSPコンパクトで、だ。その銃に慣れないとな」
それから二人はリュックに銃や弾を入れていく。
銃はエダ用のUSPコンパクトの他に、グロック17とグロック26、祐次用のコルト・パイソン2.5インチ、エダ用のリボルバーとしてラバーグリップ付きのS&W M10・3インチを選んだ。他、店にあった拳銃を半分ほど別のリュックに無造作に入れ、半分はそのままカウンターに戻した。
長物はモスバーグM590ショットガンとセミオートのM4CQB、セミオートのAR15カスタムを一丁ずつ。他にショットガンを4丁。後はそのままだが、弾はしっかり各種半分は持っていく。二つのリュックに分けたのは、一つはどこかに秘密倉庫を作り隠すためだ。在庫として置いてあったDE44のマガジンとUSPコンパクトのマガジンだけは全部持っていく。在庫として置いてあっただけだけあって、どっちもマガジンは10個あった。他にアウトドア用のアイテムや携帯食料などもあったから、それも貰っていく。もちろん半分。
祐次がそれらを整理して車に積む間に、エダはUSPコンパクトのマガジンに弾を込める作業に集中した。
今度はこのUSPコンパクトで練習するのだ。
さて……。
エダは少し楽しくなってきた。
「エダのアイテム」でした。
これでエダも武装完了です。
まあこの世界では拳銃はもはや普通の日常アイテムですし。ALは白兵戦がほぼ通じない相手ですし。全く通じないわけではないです。ただ一体倒せば酸で武器も駄目になるだけです。
次回はUSPコンパクトの実写編です。
次あたりでようやくエダの勉強編が終わるかも?
これからも宜しくお願いします。




