「神のサポート」
「神のサポート」
ついに決闘の場へ。
緊張する祐次とエダ。
するとJOLJUが色んなアイテムを出してきた!
反則? 知らんJO~
***
2月16日 アーカンソー州 ブレイグタウン郊外 午後10時18分
森を進む大型キャンピングトラックと米軍ハンディー。
森の先に、全長200mのキューブ型惑星揚陸用<プル・サゼト>が約100m上空に浮かんでいる。
地上から見ると、巨大な建築物のようだ。
幅20mほどの幅で一直線に森が焼き払われて道のようなものが出来ている。ゲ・エイルが祐次たちを迎えるためやったのだろう。
「まさかここを進んで地雷があったりレーザー光線で砲撃してきたりはしないだろうな」
運転席で祐次が言う。助手席にはエダとJOLJUが座っている。
「決闘が目的だし、オイラもいるからそれはないJO」
「だろうね」
「撃たれてもオイラが阻止するしね~。ちょっと痛いのがウザいけど」
ちなみにまだリーは合流していない。リーはゲ・エイルが用意している昇降装置の前で待っている。
エリスの<パーツパル>は地球上にはない。フロリダ州北部にあったもう一隻の<プル・サゼト>を捕獲し、宇宙に飛び去って行った。エリスはこれを木星と土星の間の宇宙域まで引っ張っていき、高科学技術で厳重に封印してから爆破処理をする。それでも爆破による時空破壊エネルギーは発生する。宇宙空間では遮るものがないので、その衝撃波は亜光速で迫る。<パーツパル>は短距離ワープで地球付近まで戻り<ハビリス>が反応する前にそれを無力化させる。銀河連合の最新鋭戦艦でも、ここまで対応するのに18時間かかるらしい。その頃にはこのアーカンソーにある<プル・サゼト>の暴走は限界点を超え自爆した後だ。やはりこの<プル・サゼト>は祐次たちが対処するしかない。
「ま、エリスは心配ないJO。失敗したって<パーツパル>はいくらでも対応できるし、自己防衛に切り替えれば被害は出ないJO。太陽系がどうなるかはしらんけど」
「最後の一言のほうが重大だ」
「あ、そうそう。ロザミィに見つかる前にコレー」
そういうとJOLJUは四次元ポケットから銀色の腕輪を3つ取り出した。
祐次は知っている。JOLJU特性のフォース・バリア発生装置だ。
「改良してね。前回もあった<無敵モード>は3回で<強化モード>は5回で一回10分。で、<通常>モードの時間は4時間まで伸ばしたJO~。祐次とエダとリーの分だJO。<ヴィスカバル>で改造とエネルギーチャージしたからエリスにもバレてないJO」
「これ、米軍の兵士さんたちの分はないの?」
「12個も作れないし、祐次たち以外にコレ渡すとロザミィが怒る~。一応兵士さんたちにはク・プリの科学道具までは使えるからク・プリのフォース・バリアが渡されると思うJO」
「なんで兵士さんたちには駄目なの?」
「銀河連合のルールなんだJO。<500年ルール>ってあってね、500年を超える科学道具を未発達文明に知られるのは駄目なんだJO。前に地球は15世紀でク・プリは20世紀前半って話したじゃん? ク・プリはギリギリなの」
だからこれまでJOLJUの秘密道具も基本ク・プリの科学力に合わせたレベルのものにしていたし、ク・プリの宇宙船で主に作業していた。しかし実際はそれ以上の科学道具を祐次には渡している。本人の自覚はないが思えば大分前から暴走しはじめていた。その癖時々銀河連合のルールを思い出す。このあたりはエリスやロザミアが嘆く一因だ。
暴走するのなら完全にぶっちぎって全部解決させればいいのに、そこまでは良識があって嫌なのだ。
「俺たちはいいのか?」
「オイラの判断で勝手に渡してるんだからそれはそれでいいんだJO。ルールなんか知ったことかだJO」
ルールを守る主義なのかルールなんか気にしない主義なのか、その基準はなくJOLJUの自己都合というあたりがJOLJUらしいところであり、翻ってそんな事も許される超特別な存在という事も分かる。
祐次の持っている武器なんか全部500年ルールは越えているが、JOLJU本人がそのことに気づいていないのか、ルールなんか守る気がないのか……多分その両方だろう。エリスやロザミアが頭を抱えるわけだ。
「あれ? でもJOLJU、この腕輪はいつ作りに行ったの?」
昨日の10時過ぎから今に至るまで、JOLJUはずっと祐次かエダが一緒だったし、そもそも<ワルディス>から出ていない。神の力を使えば<ワルディス>の<神殺しの放電>が発生するからわかる。
「あー、それ? うん、オイラがやったんだけど、やったのは<未来の時間軸>のオイラ」
「未来?」
「つまりね。どうせどう転んだって明日か明後日にはオイラ、<ワルディス>から出るじゃん? で、未来の暇な時にこの腕輪の改造をしにいって、タイムワープでこの時間のオイラに届けたの。これならオイラ<ワルディス>から出るなっていう約束も破ってないし」
「…………」
これこそ<神>でしかできない芸当だ。JOLJUにとって過去も現在も未来も関係ないからこういう芸当も出来る。しかしいいのだろうか?
「いーんじゃない? 映画のドラえもんで同じことしてたし」
「お前、そのうちエリスとロザミアから<アニメ漫画映画視聴禁止>って言われるぞ」
「それはヤだ! 全力で拒否るJO! 食べるのとアニメを奪われたら何を楽しみにいきたらいいかわかんないJO! LV2権限で全力拒否だJO!」
「お前の倫理基準が分からん」
この馬鹿はどういう理屈か、アニメや映画で描かれていた科学現象は地球人は理解できるからやってもいい……という認識だ。JOLJUにとって<空想科学(SF)>という言葉はなく、それが実現可能な事であればファンタジーではなくリアル……と勝手に判断している。
「あ、ただこれ注意だJO。主に祐次だけど。肉弾戦の時軽い攻撃は弾くけど強い攻撃やゲ・エイルの武器には効果が半減するから気をつけてだJO」
「フォース・フィールドで弾くんじゃないのか?」
「完全には防ぎきれないんだJO。連中も前回の戦いでこっちのフォース・バリアの波数というかエネルギーの種類を分析しただろうから、今度はある程度適応してくると思う」
「もっと強力なバリアにすればいいだろ」
「それ、地上だと下手すると事故るんだJO。強すぎると空気も重力も引力も光も遮断して身動きとれなくなるし中の人間がおかしくなっちゃうの。それにフォース・バリア自体元々ビームとかエネルギーには強いけど、物理攻撃には弱いの。適応光線や波長変動つけたら突破できるし、衝撃までは止めれないからバリア内でエネルギーが跳ね返りまくってグチャグチャになっちゃうJO。だから宇宙世界の戦争でいきつくところ白兵戦になるわけだJO。打撃武器や刃物や物理武器はちょっとした加工で突破できるから。銃が効果あるのは物理攻撃だからだもん。それまで封じると自分の攻撃も相手に当たらなくなるし。第一そこまで強い完璧にフォース・バリアを持ってたら勝負にならないからゲ・エイルたちも戦闘やめてオイラに抗議文送り付けて自爆選ぶだろうし」
前回も「フォース・バリアを外して勝負」と言ってきた。戦争というより決闘で、連中は戦って勝ちたいから自分たちのバリアを外す事には躊躇いはない。
「そんなバリアがあるならそもそもALだって怖くないしな」
「ALにはまた別の原理が働いててあらゆるバリア無効なんだけど、こっちは超科学じゃなくて神の力に近いし。科学的にはALって個体というよりかなり特殊な液体なんだJO。ま……とにかくなんだかんだいって原始的な物理攻撃は実は一番効果のある戦い方なんだJO。地球の銃が宇宙戦闘で使えるのも、弾が小さくて攻撃武器としては遅いからバリア対策のエネルギーがまとえる点と、原始的飛び道具っていうことが理由だし」
レーザーは光速で荷電粒子は亜光速。同じ光の速度をもつエネルギーで包むことはできないが、精々音速を少し超える銃弾は白兵戦用の武器同様エネルギーコーティングできる……らしい。思い返せば、ゲ・エイルたちも地球の銃を飛び道具扱いはしていなかった。
未来の宇宙戦争は色々面倒くさい。JOLJUも全部説明する気はない。
祐次にとってはどっちでもいい。銃は白兵戦が通じるという事が分かれば十分だ。
「神のサポート」
ついにゲ・エイルと決闘に向かう祐次たち。
ということでその前にJOLJUのお助けアイテムです。
JOLJUが作ったバリアです。
本編で言っていませんが、このバリアはALにも多少効果はあります。ただし気休め程度ですが。
転送機はそもそも用意すると言っていましたし、これがないと脱出できないので必需品です。
ク・プリやゲ・エイルも似たものを持っていますが性能は圧倒的に上。ただしこれでもJOLJUからしたら玩具みたいなもので科学力もほぼパラ基準くらいに抑えられています。ということはロザミアの防御力もほぼ同じです。
これプラス回復器。
そしてヴァトスが地球以上の科学武器です。
これだけあっても祐次たちの成功率は50%前後。
成功率なので生存率とは違います。生存率は祐次だけが低くてエダとロザミアは高いです。ただ生きて帰ってもその時は地球は破壊されるか半壊するか、もしくはク・プリの試練が駄目になるかで祐次たちにとってはまずいわけですが。
エダはともかく祐次にとっては大試練です。
後はロザミアがどこまで協力してくれるかです。ロザミアだけは死ぬ危険は低いですが、ロザミアは地球とエダさえ無事だったらいいので作戦達成目標が変えられるので、そこが祐次やJOLJUにとっては不確定要素ですね。
ということで決闘前の話はもうすこしあります。
これからも「AL」を宜しくお願いします。




