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AL地球侵略編  作者: JOLちゃん
第八章エダ編前半
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「滅亡阻止運命共同体」

「滅亡阻止運命共同体」



避けられない地球滅亡。

そのため全種族の戦力が結集!

その先に人類救済の運命が!

だがそれはすぐに来る!

***



 エリスは手を上げた。


「私が提案する作戦は以上だ。意見は?」

「俺とロザミアだけでゲ・エイル全部殺せという作戦がまともな作戦か?」



 祐次は大きなため息をつく。



 ロザミアの最大の戦闘力はいうまでもなく<AL>だ。<AL>を投入すればこんな戦いは一時間もかからず終わる。ただし<AL>には見境がないから他の人間は同行できないし、科学技術を徹底的に破壊する習性があるから船も破壊される。本人も今回は使わない、と言っていた。



 もっとも……本当に危険が迫れば使うだろう。ロザミアにはク・プリを助ける義理はない。いざとなれば躊躇しないはずだ。彼女には使わない理由はない。


 ロザミアにALを使わせない……祐次が同行する理由はそこにある。どうやらロザミアは祐次にも関心を持っている。ALを使えば祐次も危険だ。



「そして今回はエダ君も連れて行ってくれ」

「何?」と祐次。

「あたしもですか? 戦いなんてできないですよ?」


「君はクロベとロザミア様にとって大切な人間だ。連中は不利になれば何だってする。我々では守り切れないし、責任も負えない。それに、ロザミア様がおられるならエダ君の事はロザミア様が守る。そして……君の言葉だけはロザミア様も耳をお貸しになる」


「…………」


「私たち<パーツパル>の乗員にとってロザミア様は主君だ。御言葉には逆らえないし、接触はJOLJUに禁じられている。JOLJUが動けない今、ロザミア様と連携をとれるのは君しかいない」


 今回は味方だが、ロザミアの存在はかなり特殊で厄介だ。一番高い科学力を持ち、ALを持ち、エリスたちを封じる権限を持った侵略者の女王だ。さらにJOLJUにとって唯一の家族だ。



「そうだな。どこにいても危険なら俺の後ろがいい。俺が守れる」



 祐次も同意した。

 今回ばかりは安全地帯はない。どこにいても危険だし地球事自体が崩壊するかもしれない。


 それに祐次だけはエリスの真意に気づいた。



 本当に最悪の事態になった時……祐次とエダだけは宇宙船に収容して助けることができる。

 他の人間が一緒だとエリスもその手は使えないが、二人だけならば緊急処置として救助できる。ロザミアもこの二人だけならば<ヴィスカバル>に乗せるだろう。


「やれやれ。俺ばかりどうしてこういう目に遭う」

「祐次」

「大丈夫だ。俺がお前を守る」

「うん」


「我々米軍はどれだけ必要ですか?」とスコット。

「そう多くはいらない。精鋭少数でいい。用意にも時間がかかる」

「用意?」

「脱出用にこれを作る」


 そういうとエリスは卓上に黒いボールペンのような大きさの装置を置いた。ボタンが一つだけついている。



「転送装置だ。一回だけ使える。転送先は全てこの基地にセッティングしてある」


「転送……テレポート移動ですね。それは封じられているという話を聞いたが?」


「ゲ・エイルの科学以上の高次元光子転送装置だ。私たちがもつ最先端の転送技術を使うが、それでも決まった座標で短距離しか転送できない。これ一つを作るのに1トベルかかる」


「1トベル?」


「約1時間です。クロベとエダ君とリーの分は作った。後は地球人兵士の分です。そして私もできるだけ早く対応に動かなくてはならない。そこで計算したところ最大数は14個です」


「14時間も無駄にしてしまうのか?」


「それだけ時間に余裕があるなら、戦闘が少しでも有利になるようク・プリの武器を取ってくる。ゲ・エイルや<グビドン>には効果がある。用意に6時間ほどかかるだろう。エリスの転送を借りてだから<パーツパル>が作戦を開始するまでの間だ」とリー。「作戦開始が早いほうがいい」


「だから、その人数は貴方が決めてくれ。条件として高い戦闘力がある人間。リーダー格は来ないこと。そして……死ぬことが覚悟出来ていることです」


「それは我が米軍人ならば皆覚悟しています」


「私の言葉が足りていない」



 そういうとエリスの表情がやや険しくなった。



「意外かもしれないが、ロザミア様とJOLJUを別にして、今回の作戦で一番生存確率が高いのはエダ君です。クロベもいるし、彼女はロザミア様が気にかけているし、JOLJUも懐いて特別扱いをしているし、ゲ・エイルの決闘対象にない。ゲ・エイルは前回の誘拐でエダ君の重要性を知ったから、今度は雑には扱わない。<BJ>のエノラで強化されたので助けようと思えば転送で助けられる。約束しよう。生きてさえいれば君たちが全滅したとしても彼女だけは私が助ける。次はリーだ。リーも決闘対象にないしク・プリの技術で緊急脱出だけならばできる」


「俺は決闘対象だから、生きるか死ぬかしか選択肢がないな」と祐次。


「ゲ・エイルの戦士種と王族種を相手に、だからな。いくらお前でも勝算は低いぞ? ただしお前は規格外に強いしロザミア様がバックアップしてくださる。お前は連続転送に耐えられるから、負傷しても一度<ヴィスカバル>に退避して、傷を治して再戦、という手がとれる。一番大変な任務だが、君はエダ君とリーの次に生存確率は高い。強者が好きだからな、ゲ・エイルは。健闘すればそれを称えて命まではとらないかもしれんし、場合によっては降伏も許される」


「そのあたりは本当<プレデター>か」


「どういう意味だ?」


「暇なときJOLJUに聞いてくれ。このあいだ映画を見ていたから知っている」


「面白かったJO~。オイラ的には1より2が好きだJO」



 祐次だけはいわばライフポイントの予備がある。リーは最悪脱出できる。



 どうにもならないのが、ただの地球人だ。



 地球世界で立場はあっても、宇宙世界からみれば人権を認める価値もない未発達文明の原住民で、特別な救済もない。



「一番生存率が低いのが君たち普通の地球人である米軍だ。連中にとって君たちの命は何も価値がない。緊急転送装置を渡すが、完璧ではない。連中が妨害をしたら10%は転送事故が起きる可能性はあるし無事転送で戻れても後遺症が残るかもしれない。地球人の生活環境も知っている。治療できるまともな医者はクロベしかいない。だがそのクロベは前線だ。あの<グビドン>と戦って重傷を負っても治す人間はいないし、<グビドン>は生易しい相手じゃないし数も多い。クロベがおかしいだけで普通の地球人にとってはショッキングな容貌で相手にするには恐怖だろう。それでも戦える人間です。そして助けたくても貴方たちにはエノラの投与がないから連続転送もできないし、私はともかくロザミア様は貴方たちを収容はしないだろう。君たちだけは我々のフォローがないのです」



「厳しいな」



 スコット大佐はため息をつく。


 帰りのチケットはある。だが行き先は化け物が巣くう地獄の戦場だ。



 と……。



「これ……本当はいいたくないし黙っていたかったけど……まぁ今は先のことより目の前の事が優先だけど……」


 突然JOLJUが渋い顔で発言しはじめた。


「今回のは<ゲ・エイルの試練>で、そんでもって<ク・プリの試練>なんだJO」

「JOLJU? どういうこと?」とエダ。


「オイラも<BJ>も言っていたじゃん? <地球人の試練>はこの先にあるんだJO。オイラの立場でコレいうのはルール違反なんだけど、まぁ……オイラの独り言ということにしといて言うけど…………今回の作戦を乗り越えたら、多分<地球人の試練>が発生しちゃう。祐次とエダが生きていることが絶対条件だけど、試練は二人が受けるンじゃなくて人類全てが受けることになるんだJO。その時できるだけ優秀で強い人が残っているほうがいい……とかオイラは思ったりしたので独り言で呟いてみた~」



 本当に口は無責任なくらい軽い奴だ。



 しかもかなり重要な話だ。



「…………」



 そう、この先がある。



 今回ゲ・エイルの事件を突破した時は、今度はク・プリの脱出作戦が動く。しかしその後も<ハビリス>の時空嵐自体は残っている。その先何が起こるかは、ここにいる誰も分かっていないが、この一連の事件で宇宙世界とこの世界の事を多くの地球人が知ることにはなる。



 全て<BJ>が計算したことだ。



 だとすれば……この先、<地球人の試練>がやってくる……という話もありえなくはない。



 いや、今JOLJUが言ってしまった以上、その先で<地球人の試練>が発生するのだ。



「そっか。クリアーしちゃうんだ」


 エダは顔を上げた。


「クリアーしちゃうんだよ。祐次が今回のゲ・エイルの事件に打ち勝って、ク・プリの皆を助けたら……祐次は紛れもなく宇宙世界での英雄<ラマル・ト‣エルム>と呼ばれるに値する存在になる」



 その言葉を聞いて、祐次も悟った。



「<ラマル・ト‣エルム>を見つけろ。人類の価値を示す。そうすれば地球救済の方法が見つかる……。これが<BJ>の言葉だ。つまり、俺がゲ・エイルとク・プリの試練を乗り越えれば、名実ともに俺は<ラマル・ト‣エルム>になる。その時<BJ>は俺たち人類に試練を与え、助ける価値があるかどうか試す」


「…………」


「そこまでが今回の運命だ」



 全て<BJ>は用意していた。こうなる運命を。



 今、それが完全に一つに繋がった。



 ゲ・エイルとク・プリがこの地球から去れば、残るは地球人とパラしかいない。



 パラ……ロザミアが人類を完全消滅させたいのであれば9年も放置していないし、エダと友人になったりもしない。かといってこのまま自然消滅させる気もない。

 10年後の自然消滅を待つことなく、今回このゲ・エイル事件にロザミアは手を貸さず放置するだけで地球は終わる。

 手を貸すのは理由があるからだ。

 ロザミアが本気で地球人の消滅か支配を目論んでいるのであればとっくにやっている。もしロザミアがその決意を固く思っているのであれば、そもそもJOLJUだって地球人側についていない。


 JOLJUが地球人側についているのは、地球人が試練に打ち勝つ可能性を見出しているからだろう。JOLJUは<BJ>の課した試練内容も知っているのだ。



 そこまで考えが及ぶと分かる。



 確かに今JOLJUが口走った事は、ルール違反だろう。



 だが言った。


 それは、もうそこに至る運命の(ルート)に祐次たちが乗ってしまったから。



 もう運命には逆らえない。だから言った。



「地球人の戦力は温存したほうがいい」という程度の些細な情報だが、これまで頑なに<人類の試練>に関わる情報をJOLJUは言ったことがない。



 運命が、ついに動き出した。




「滅亡阻止運命共同体」でした。



VIP会議結論編です。

全員でやるしかない!

しかし一つのミスで全滅&地球消滅です。

さらにクリアーしても、今度は<BJ>の人類に課した試験が自動発動し、地球人は更なる困難な試練が待っている……という、もう本当に試練の連続です。


しかも今回一番危険で生存確率が低く無力な地球人が、今度は鍵となる……なので今回の作戦で全滅することもできません。しかし今回の作戦が失敗したら地球滅亡なのでやるしかない!


地球人の中でもVIPになった祐次とエダは生存確率がありますが、このゲ・エイルを打倒したらメインになるのはこの二人で、試練のメインになる……という、どこまでも続くハードモードです。


今回は言わなかったですが、ここで重要になってくるのが拓たちなワケです。

祐次と共同できる試練対象者は今判明しているのは拓たちだけです。

なので拓の北米上陸も今後必須条件になるわけです。


しかしここまで計画しているゲ・エイルは凄いですが、そのゲ・エイルの計画すら先読みして試練を用意している<BJ>は別次元で凄い!


もう祐次たちは戦って戦って勝ち続けるしかない!


ついに「AL」第一部のクライマックスのゴールがなんとなく見えてきた感じです。

もっとも拓たちはまだ合流していないので、まだ物語は続きます。


これからも「AL」を宜しくお願いします。


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